・2015年5月、TU-S707Xの修理調整作業を承りました。
・これはサンスイのSLDD回路に興味を持っていろいろ研究した思い出の機種です。
・懐かしさ半分の作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SANSUI TU-S707X ¥54,800(1984年発売)
・オーディオ懐古録
・Hifi Engine TU-S77X※回路図あり
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源OK。FM/AMとも受信します。STEREOランプ点灯。
・MUTING動作OK、IFバンド(Wide/Narrow)切替OK。
・特に問題はなさそうですが、、
<依頼者様からのご指摘事項>
>NHK-FM受信時、モノラルニュース番組に切り替わってもSTREOランプが点灯したまま
・信号発生器からテスト信号を送ってご指摘の症状を確認しました。
・さらに、、なぜか89.5MHzより高い周波数のFM電波を受信できません。
・76.0MHz~89.4MHz区間は正常に受信します。
・不思議??
■内部確認------------------------------------------------------------
・元々FM放送を受信できない状態だったそうです。
・電源部の電解コンデンサー全数交換済み。
・フロントエンド内のトリマコンデンサー交換済み。
・トリマコンデンサー交換によって受信できるようになったそうです。
■修理記録------------------------------------------------------------
・まずは過去の調整事例に倣って軽く再調整してみました。
>89.5MHzより高い周波数のFM電波を受信できない件
・フロントエンドに供給される電圧24.2V
・89.5MHz=24.2Vとなってそれ以上変化せず。
・VT電圧設定値が高すぎるようです。以下のように少し下げてみました。
→調整前:90MHz→24.2V、76MHz→3.3V
→調整後:90MHz→22.1V、76MHz→3.1V
・これで89.5MHz以上も受信できるようになりました。
>モノラル放送でもステレオランプ点灯する件
・VR104 PILOT OFFSET調整がズレていました。
・規定値に調整したところ正常動作になりました。
■受信調整------------------------------------------------------------
・もう一度各部を調整しました。
・TU-S707X本来の性能を取り戻したと思います。
※RF-IF部基板の調整(本体正面から見て右側の基板)
【本体正面・機能切替ボタン設定】
・FM MODE=MONO
・IF BAND=WIDE
・RF MODE=DX
【基準周波数調整】
・IC1[TC9147BP] 36-42pin短絡
・IC1[TC9147BP] 24pin-GNDに周波数カウンタセット
・TC1を調整 → 25kHz
【VT電圧確認】
・フロントエンド内[VT-GND]に直流電圧計接続
・76MHz時の電圧=実測値3.3V → ※調整後 3.1V
・90MHz時の電圧=実測値24.2V→ ※調整後22.1V
※電源部からの供給電圧24.2V
【フロントエンド調整】
・IC3[HA12412] 13pin-GNDに直流電圧計接続
・SSG 76MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数76MHzの位置でコイルL1,L2,L3,L4の間隔調整 → 電圧最大値
※コイル間隔の調整は難しいので見送り
・SSG 90MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数90MHzの位置でトリマコンデンサTC1,TC2,TC3,TC4調整 → 電圧最大値
・上記作業を数回繰り返す
【IFTコイル調整】
・IC3[HA12412] 13pin-GNDにDC電圧計接続
・SSG 83MHz、1kHz、100%変調、30dB
・フロントエンド内IFTコイル調整 → 電圧最大値
・RF基板上の[T1]を調整 → 最大電圧
・IF BAND=NARROWに切り替え → 電圧値測定
・IF BAND=WIDEに戻して電圧測定 → VR2[WIDE GAIN]調整 → NARROW時と同じ電圧
【FM同調点の調整】
・[TP1-TP2] DC電圧計接続
・無信号状態でT2のIC側コアを調整 → 電圧=0V±30mVに。※調整前実測150mV
・SSG 83MHz、1kHz、100%変調、60dB
・T2のIC反対側コアを調整 → 二次高調波最小
・上記作業を数回繰り返す
【FM LOCKED LEVEL調整】
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、30dB
・VR4[FM SIGNAL]を調整 → 本体正面[LOCKED]オレンジ色LEDが全灯する位置
【REC Level】
・VR5調整 422kHz -6dB
※MPX部基板の調整(本体正面から見て左側の基板)
【本体正面・機能切替ボタン設定】
・FM MODE=STEREO
【VCO フリーラン周波数調整】
・SSG 83MHz、無変調、60dB
・TP1-TP4にDC電圧計接続 → VR105[OFFSET VCO]調整 → 電圧=0V±0.05V
・TP3[VCO]-GNDに周波数カウンター接続 → L101調整 → 304.000kHz
【PILOT OFFSET調整】
・SSG 83MHz、無変調、60dB
・TP2-TP5に直流電圧計接続 → VR104[PCAN]調整 → 電圧=0V±0.1V
・SSG 83MHz、60dB、19kHzPILOT信号ON → ステレオランプ点灯を確認
【PILOT CANCEL調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、60dB、19kHzPILOT信号ON
・本体正面のステレオランプ点灯を確認。
・L100、VR103L調整 → WaveSpectraでL-ch波形観察 → 19kHz信号レベル最小
・VR106、VR103R調整 → WaveSpectraでR-ch波形観察 → 19kHz信号レベル最小
【IF BAND=WIDE セパレーション調整】
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Rchのみ信号、PILOT信号ON
・VR102L調整 → ※調整後実測62.2dB
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Lchのみ信号、PILOT信号ON
・VR102R調整 → ※調整後実測64.2dB
・VR100[BEAT NOISE]調整 → ビートノイズを最小
【IF BAND=NARROW セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Rchのみ信号、PILOT信号ON
・VR101L調整 → ※調整後実測62.2dB
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Lchのみ信号、PILOT信号ON
・VR101R調整 → ※調整後実測62.2dB
【MUTING LEVEL調整】右側RF基板
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、25dB、ステレオ信号、PILOT信号ON
・VR3[MUTE]を調整 → ステレオランプ点灯し信号が出る位置へ
【AUTO STOP LEVEL調整】右側RF基板
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、30~35dB、ステレオ信号、PILOT信号ON
・VR1[FM.STOP]を調整 → オートサーチが有効な位置へ
【AM調整】
・LA1245-16ピン → AM Sメーター電圧測定
・T2、TC1,TC2
■試聴----------------------------------------------------------------
・外観は薄型ボディとサイドウッドが精悍な印象です。
・久しぶりに聴くTU-S707Xですがやはりイイ感じですね。
・以上、作業完了しました。