・2015年5月、TRiO KT-990の修理調整作業を承りました。
・AM受信OK、でもFM受信不可だそうです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-990 ¥53,800円(1982年発売)
■動作確認------------------------------------------------------------
・フロントパネルがグラグラして選局つまみと接触している。
・ボディ全体は結構きれい。AMループアンテナ付き。
・電源オン、照明点灯、FMは地元放送局を受信しない、局間ノイズのみ。
・Sメーター、Tメーター点灯しない。
・AMは付属アンテナで受信OK。Sメーター点灯。AMは正常です。
・信号発生器(SSG)から83.0MHzのテスト信号を送って受信実験しました。
・すると83.0MHz信号を79.3MHz付近で受信しました。
・この状態で STEREOランプ点灯。サーボロックランプ点灯。Muting動作OK。
・Wide/Narrow切替OK。実際の音声にステレオ感あります。
・-3.7MHzの周波数ズレを確認。でもその他の動作は良さそうです。
・本体底に修理記録シールが貼ってありました。
「S58.6.3 トランス」 トランスって何だろう?
■内部チェック--------------------------------------------------------
・FM4連AM2連バリコン
・パルスカウント検波:TR7020、TR4011
・MPX部:uPC1223C
・AM部 :LA1245
・LED DRIVER:AN6877
・フロントエンド内のトリマを回しても受信周波数が変化しない。
■フロントパネル修理--------------------------------------------------
・フロントパネルとボディを繋ぐプラスチック部品が破損している。
・この破損は過去事例と同じ症状で KT-900との共通弱点です。
・破損部分をボンドで接着した後、銀色テープで補強しました。
・でも上の重い機器を載せるとすぐに壊れそうです。ご注意ください。
■FM修理--------------------------------------------------------------
・フロントエンド内のOSCトリマを回しても受信周波数が全く変化せず。
・FM不調の原因はやはりトリマの容量抜けですね。
・過去事例に倣ってフロントエンドユニット外側に新トリマー(青色10pF)を直付け。
・手前にある電解コンデンサを外すと作業がしやすい。
・下記受信調整によってばっちり受信できるようになりました。
■受信調整------------------------------------------------------------
・AN6877 1ピン→ FM Sメーター電圧測定
・L4 TR7020クアドラチュア検波調整→ TP1~TP2間電圧ゼロ ※実測252mV
・L6 TR4011パルスカウント検波調整→ TR4011-1ピン → 1.96MHz ※実測2.05MHz
・VR7 VCO調整→ TP3 76kHz
・VR6 パイロットキャンセル調整→ 19kHz漏れ信号最小
・VR4,5 Wide受信時セパレーション調整
・VR3 Narrow受信時セパレーション調整
・フロントエンド内IFT→ ステレオ受信時の高調波歪最小
・VR1:WIDE LEVEL → Narrow受信時と同レベル
・VR2:REC CAL →※実測427kHz -6dBに調整
・VR3:NARROW SEPARATION ※実測35dB
・VR4:WIDE SEPARATION Rch ※実測52dB
・VR5:WIDE SEPARATION Lch ※実測51dB
・VR6:PILOT CANCEL
・VR7:VCO
・LA1245-16ピン→ AM Sメーター電圧測定
■試聴---------------------------------------------------------------
・全体に良い性能を取り戻したと思います。
・ただ、Narrow時のセパレーション値があまり良くありません。
・通常はWideモードでの使用をお勧めします。
・それにしても KT-990/KT-900のデザインはイイですね。
・照明を落とした部屋でボーっと眺めているとステキな雰囲気に浸れます。
・Wide側で聴くAMもなかなかです。