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SONY ST-5000

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 ・2015年4月初め、「F」が付かない ST-5000 の修理調整を承りました。
 ・ST-5000F と ST-5000 の違いに興味あります。
 ・以下、作業記録です。

St5000207

■製品情報------------------------------------------------------------

 ・SONY ST-5000  1967年 88,000円
 ・SONY ST-5000F 1969年 98,000円

St5000200St5000202St5000203St5000204St5000205

 ・フロントエンドのトランジスターがFETに代わり型番にFETの「F」が付けられた。
 ・ST-5000F の輸出機型番は「ST-5000FW」でした。
 ・勘を働かせて「ST-5000W」をキーワードに検索すると海外サイトが多数ヒット。
 ・「F」は FET の頭文字だったはず。
 ・「W」は ?、、ひょっとして WORLD の頭文字とか?

St5000210St5000212St5000213St5000214St5000215

■動作確認------------------------------------------------------------

 ・フロントパネルに目立つ傷はなく状態は良好。
 ・ただボディや背面パネルには擦り傷やサビがあります。
 ・300Ω端子にFMアンテナを接続して電源オン。
 ・二つのメーター照明点灯。周波数窓の照明も点灯、ただしちょっと暗い印象。
 ・Sメーターは勢いよく振り切れる。Tメーターも動作OK。
 ・83.0MHzのテスト信号を83.2MHz付近で受信する。+0.2MHz程度の周波数ズレ。
 ・FM放送モノラル受信OK。ただしLchの音量が極端に小さい。
 ・STEREOランプ点灯しない。実際に聞こえてくる音もモノラル。

 ・ここまで確認したときに電源コードが損傷していることに気付きました。
 ・特に本体付け根側が断線寸前。プラグ側付け根も芯線が見える状態でした。
 ・通電中に気が付いたので、すぐさま作業中断。

■修理記録1:電源コード交換-------------------------------------------

 ・このままでは作業が進まないので、損傷した電源コードを交換しました。
 ・部品取り用に保管していたSONY ST-5150Dの電源コードを外して移植。
 ・コードストッパーは内側から丁寧に外して再利用しました。
 ・交換後もオリジナルに近い雰囲気は保っています。
 ・パッと見では電源コードが変わったとは気付かないでしょう。
 ・でも良く見るとコードの印字が「1974」に変わっているところがミソ。

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■動作再確認----------------------------------------------------------

 ・動作確認再開。
 ・そういえばTメーターの針の振れ方が変?左右逆じゃないか?
 ・75Ω端子に同軸ケーブルを接続すると受信感度が大幅低下。
 ・Mutingは正常に動作しているようです。

<問題点>
 ・75Ω端子の配線確認。
 ・+0.2MHz周波数ズレ
 ・Tメーター振れ方が左右逆
 ・ステレオ受信不可
 ・左右の音量レベルの違い

■内部確認------------------------------------------------------------

 ・5連バリコン → 7段のLCフィルタ → レシオ検波 → MPX
 ・回路構成は ST-5000F とは全く違いますね。
 ・照明用電球は修理済み。ただ配線がかなり変更されている。
 ・STEREOランプ点灯しないが球切れではない。電球仕様12V100mA。
 ・トランジスタや電解コンデンサーがいくつか交換済み。
 ・75Ωアンテナ端子からの内部配線が切断されている。
 ・既にかなり手が加えられた個体のようです。

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■修理記録2:Tメーターの針の振れ方が逆---------------------------------

 ・たぶん電球配線を変更した先人が、作業時にメーター配線を一時的に外したと思います。
 ・その後復旧するときに配線を逆にしたようです。
 ・Tメーターに繋がる配線を逆にすると針の振れ方が正常に戻りました。

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■回路図購入----------------------------------------------------------

 ・ST-5000(国内)→ ST-5000W(海外)
 ・ネット上で無料の回路図を探しましたが発見できず。
 ・アメリカのマニュアル販売サイトManual-in-PDF でサービスマニュアルを購入しました。
 ・7.98米ドル。支払いはPayPalです。
 ・ここは今まで10回以上利用していますが、今のところ購入トラブルなし。
 ・回路図と詳細な部品リスト、合計10ページのコンテンツでした。
 ・部品リストに日付がありました。1967年6月。
 ・調整方法の解説ページはなかったです。

St5000adj2

■回路図と実機の照合--------------------------------------------------

 ・照合の結果、実機と回路図はほぼ一致しました。
 <パーツリストより抜粋>
 ・フロントエンドユニット FMC-023W1 回路図
 ・フロントエンドユニット FMC-023J1 実機
 <IFユニット>
 ・IFT215 DET primary
 ・IFT216 DET Secondary
 <MPXユニット>
 ・T506,T508 Coil 19Kc Trap
 ・T507      Coil 67Kc
 ・T503 19kc doubler
 ・T504 38Kc pickup
 ・T505 38kc switching

■仮調整--------------------------------------------------------------

 ・問題箇所を特定するために現状のベスト状態に調整してみました。

5000upper5000lower

【OSC 調整】
 ・D202上側(Sメーター電圧確認ポイント)
 ・90MHz C106:調整OK
 ・76MHz L105:周波数が変化しない
<課題>
 ・高い周波数では指針と目盛りはぴったり合います。
 ・L105で調整不可。低い周波数では+0.3MHzほどのズレが解消できません。
【RF調整】
 ・D202上側(Sメーター電圧確認ポイント)
 ・90MHz:C102,103,104,105
 ・76MHz:L101,102,103,104
 ・IFT101,102
【IF部調整1】
 ・SSGから10.7MHzを直接入力
 ・VR201 RF-ATT 最大位置に設定
 ・D202上側(Sメーター電圧確認ポイント)
 ・IFT201,202,203,204,205,206 → Sメーター電圧最大
 ・音声出力をWaveSpectraで観察、最大出力ポイントを確認
【IF部調整2】
 ・R276(電圧確認ポイント)
 ・IFT207,208,209,210,211,212,213,214 → Sメーター電圧最大
 ・音声出力をWaveSpectraで観察、最大出力ポイントを確認
【レシオ検波調整】
 ・IFT215:高調波歪調整
 ・IFT216:Tメーター中央
【Muting調整】
 ・D209電圧確認
 ・IFT217,218調整 D209電圧最大へ
 ・実際のMuthing動作レベルは背面パネルVR202で調整
【既に交換済み部品】
 ・X213:2SC403 → 2SC1815
 ・X217:2SC401 → 2SC1815
<課題>
 ・トランジスタ2個が既に交換済み。
 ・IF回路のIFTコアがひどくズレていました。
 ・ミューティング動作OK。
 ・IF回路は問題無さそうです。
【MPX調整】
<実機と回路図との相違箇所>
 ・X503 2SC401(回路図)→2SC631(実機)
 ・ステレオ復調調整不可
<交換済み部品>
 ・C523 10uF/25V
 ・C526,527 30uF/12V
<動作不良1>
 ・Lchの音が小さい
 ・X511(B)=X512(B)
 ・X511(C)≠X512(C)
<動作不良2>
 ・STEREOランプが点灯しない
 ・X501(B)正常
 ・T503入力側までOK、出力側に信号なし
 ・スイッチング信号が出ていない。

■修理記録3:Lchの音が小さい---------------------------------------

 ・この現象はステレオ復調後のトランジスタ不良が怪しいか?
 ・MPX回路のトランジスタにICクリップを引っ掛て出音を直接確認。
 ・すぐに不良箇所発見。Lch X511 2SC401コレクタ出力がRchより大幅に小さい。
 ・X511 2SC401 → 2SC1815 交換
 ・ところが症状が改善しない??
 ・それなら電解コンデンサーが原因か? C525 10u/25V 交換。
 ・でもやはり改善せず。
 ・C525、X511周辺を重点捜索したところ、プリント基板側の配線断裂を発見。
 ・この近くの電解コンデンサ C527(30uF/12V)→ 47uF/50V に交換済み。
 ・半田ごての先端が滑った勢いでプリント配線を切断したような痕跡です。

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 ・切断箇所にハンダを被せて修理完了。出音確認。
 ・Lchのレベルが上がってRchとほぼ同レベルに回復しました。
 ・トランジスタや電解コンデンサの交換は無用でした

■修理記録4:MUTING不調---------------------------------------------

 ・左右の音量差問題が解消したところでモノ受信で再度動作確認。
 ・電源投入から3時間ほど経つとMUTING動作が不調になる。
 ・十分な信号強度があるにも関わらずMUTINGが作動して聞こえなくなる。
 ・動作確認でIF回路は正常と思いましたが、MUTING制御用トランジスタの不調か?。
 ・トランジスタX213/2SC403→2SC1815 既に交換済み
 ・今回は X214,215,216/2SC401→2SC1815に交換しました。
 ・特にX216のベース足が切れかかっていました。
 ・ついでにX211,X212/2SC403→2SC1815交換。
 ・MUTING動作は正常になったと思います。

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■修理記録5:STEREOランプが点灯しない。

 ・STEREOランプの電球自体は生きています。単純なタマ切れではない。
 ・ステレオ復調、パイロット信号によるスイッチングができていない。

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 ・詳細調査の結果、T503の一次側で信号が確認できません。
 ・回路図を追って怪しいトランジスタX502(2SC401)→2SC1815に交換。効果なし。
 ・その他多くのトランジスタとコンデンサを交換しましたが改善なし。
 ・T503は既に外した痕跡がありました。
 ・試しにT503を外して確認すると、T503内部で断線していました。
 ・目視でも分かります。細い線が端子との接合部で3か所切れています。
 ・T501、T502、T503は用途は違いますが同じ型番の部品でした。
 ・T501、T502ともコア割れ。T503は内部断線で使用不可。
 ・T503はスイッチング信号38kHzを生成するコイルです。

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 ・試しにLUXMAN T-300Vから同等部品を取り外して別基板を制作しました。
 ・これを新T503として接続してみるとSTEREOランプが点灯しました。
 ・本来はT502で19kHzを最大に調整するようですが、コア割れのため正確に調整できません。
 ・T502の割れたコアをグリグリいじって試行錯誤で最適位置を見つけてボンド固定。
 ・STEREOランプ点灯しますがちょっと暗いです。

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■動作確認---------------------------------------------------------

 ・STEREOランプが点灯するようになったのでMPX回路を再調整しました。
 ・STEREO受信時に左右の出力レベル差あります。Lchがやや小さい(-6dB程度)
 ・MONO受信時は左右同レベル。
 ・ステレオ分離後のトランジスタや電解コンデンサを交換しましたが改善せず。
 ・セパレーション値は25dB程度とよくないです。
 ・やはり別機種から移植した代替品ではスイッチング動作が正常ではないかも?
 ・一応ステレオ受信しますが、モノラルで聞いた方が良い音で聴けます。
 ・作業は一旦ここまでとします。

St5000209

■記念写真--------------------------------------------------------

・私のST-5000Fと並べてみました。
・意外なことに、周波数を刻んだガラス板サイズが違いました。
・周波数目盛りの間隔も違います。
・ガラス板が流用できそう、、と思ったらアテが外れました。

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