・2015年1月初め、ヤマハCT-700の修理調整を承りました。
・型番は CT-800/CT-600 の間を埋める機種ですが外観は随分違いますね。
・年式的には CT-800/600よりも一世代古い製品のようです。
・以下、作業記録です。
■YAMAHA CT-700----------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 YAMAHA CT-700 43,000円(1972年)
・オーディオの足跡 YAMAHA CT-700 43,000円(1973年頃)
<特長>
・YAMAHAブランド最初の本格的ステレオチューナー。
・プリメインアンプCA-700/500とともに1972年発売。
・ローズウッドキャビネット
・フロントエンド:高周波2段増幅、高精度4連バリコン
・IF回路:6素子セラミックフィルター+モノシリックIC
・MPX回路:トランジスタスイッチングによる平均復調方式
・オートタッチチューニング機構:選局時、同調ツマミに手を触れるとAFC回路が自動オフ、離すと自動オン
■動作確認------------------------------------------------------------
・ウッドケース上面に多少のキズ、でもそんなに酷い状態ではない。
・フロントパネル汚れはあるものの目立つキズはない。
・背面には大型AMバーアンテナ。固定/可変出力。マルチパス端子なし。
・電源ボタンが破損している。指先で押し込んで電源オン。
・周波数窓の照明、二つのメーター照明点灯。指針は赤く光る。
・オーディオ懐古録に掲載されたカタログ写真ではメーター照明と周波数照明は同じ青色。
・二つのメーター照明が緑色っぽく見えるのは劣化のせいか?
・FM STEREO/MONO /AM 切替ボタンは「ガチャン」と押し込むタイプ。
・切替時のボタンが飛び出す勢いで FM STEREOボタンが外れる。
・FM/AMのインジケーターランプ点灯。FM/AMともに受信OK。
・二つのメーター動作OK。STEREOランプも点灯。ミューティング動作OK。
・Sメーター最大とTメーター中央がかなりズレている。
・周波数目盛りと指針のズレ。選局ツマミの軸にちょっとガタツキ。
・指針の移動(滑り)がちょっと引っ掛かる感じ。
■内部確認------------------------------------------------------------
・回路ごとに基板が分かれています。
・大きな電源トランス。電源回路は裏面に配置。
・フロントエンドは PIONEER SX-717、LUXMAN T-300Vと同じ型式のアルプス製。
・FM4連バリコン → セラミックフィルタ → レシオ検波 → ディスクリートMPX。
・予想通り、MPX部がIC化される以前の機種でした。
■回路は YAMAHA CR-700 チューナー部と同じ------------------------------
・「CT-700」をキーワードにネット検索してみると海外サイトで多くの製品情報がヒットします。
・ただサービスマニュアルや回路図は見つかりません。
・検索過程で同時期のYAMAHA製レシーバー CR-700 回路図を入手しました。
・CR-700の外観写真を見ると、デザインは CT-700と同じ。ひょっとして、、、
・CR-700回路図とCT-700実機を比較してみました。
YAMAHA CR-700
・予感的中!
・CR-700のFM/AMチューナー部はCT-700と同じでした。
・CR-700ではTメーターが省略されているだけです。
■不具合:電源スイッチ----------------------------------------------
・プッシュスイッチのプラ製シャフトが折れています。
・ON/OFF時に力が掛かる箇所なので接着剤などでは修復不可でしょう。
・スイッチ自体を交換するにしても同等部品を探すのは難しい?
・残っている白いシャフトに被せるように新ボタンをはめ込む良さそう。
・私のジャンク箱を探しましたが、代替品に使えそうな黒い丸ボタンが見当たりません。
■不具合:切替時、ボタンが飛び出す勢いで FM STEREOボタンが外れる------
・切替時の反動でボタン自体が外れる。
・ボタンを外して確認すると、内部の取付金具が変形していました。
・ペンチで本来の形状に修正してボタンを再取り付け。
・これで外れないようになりました。
■不具合:指針の移動が引っ掛かる------------------------------------
・ダイヤル指針を載せたレール部分を清掃。
・潤滑剤を僅かに含ませた綿棒で軽く拭く。
・これでスムーズに動きます。
■不具合:Tメーター-----------------------------------------------
・左右に振れたままの状態で時々引っ掛かります。
・本体上部を軽く「トントン」と叩いてやると戻ります。
・Tメーターを駆動する電圧は正常に出ているので、メーター内部の劣化か?
・交換するにしても同型メーターを探すのは難しいです。
・かといってメーターを分解したら元に戻せなくなりそう。
■仮調整記録----------------------------------------------------------
・現状で一通り調整してみました。
【OSC調整】
・90MHz Tco、76MHz Lo
【トラッキング調整】
・90MHz TCA、TCR1、TCR2、 76MHz LA、LR1、LR2
【検波調整】
・T201上段 Tメーター中央。下段歪調整
・T202 Sメーター振れ最大へ。
【MPX調整】
・T303、T305 19kHz調整 L+R信号 L信号最大へ
・VR301 左右レベル調整
・VR302 セパレーション調整
■不具合:OSCトリマ不調------------------------------------------------
・バリコン上部に載っているOSCトリマが不調(容量抜け?)。
・高い周波数で指針と目盛りが合わせきれません。
・90MHzのテスト信号を89MHz付近で受信する状態がベスト。
・一方OSCコイルは調整OK。低い周波数のズレは気にならないです。
・これ以上弄るとOSCトリマが完全に壊れそうなのでこのままとします。
■不具合:セパレーション-----------------------------------------------
・STEREOランプ点灯します。
・ただSTEREO時のセパレーションは20dB程度しか得られません。
・MPX回路をオーバーホールすると改善するかも?
■不具合:ミューティング回路-------------------------------------------
・電源オンからしばらくは正常動作しています。
・1時間ほど通電していると、ミューティングが効かなくなります。
・ミューティング回路もどこか部品が劣化しているようです。
■試聴-----------------------------------------------------------------
・青緑色に映える照明窓が美しいです。同時期のPIONEER製品と印象が似ています。
・音質云々は別として、FM/AMとも現状でとりあえず受信動作しています。
・不具合箇所の修理(一部改造)を進めるか、オリジナル状態のまま現状維持するか、、
・依頼者様と相談の結果、手を加えずオリジナル状態で残すことになりました。
・黒くて丸い電源ボタン代用品が見つかったらここだけは何とかしたいですね。