・2024年12月、KENWOOD L-02Tの修理調整作業を承りました
・可変端子から音が出るのに固定端子(RCA)は音が出ないそうです
・以下、作業記録です

LED化後
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 KENWOOD L-02T FM STEREO TUNER \300,000
・オーディオの足跡 KENWOOD L-02T \300,000(1982年頃)
・Hifi Engine Kenwood L-02T FM Stereo Tuner (1982-83)
・KENWOOD L-02T 取扱説明書 (日本語版、PDF形式)
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■動作確認--------------------------------------------------
【依頼者様からの事前情報】
・Σケーブル(可変端子)だと音が出るが固定RCA端子からは音が出ない
・NHKのアナウンサーの発声のサ行が歪んで聴こえる
・同調周波数の針が見えにくい
・REC CALが勝手にONになることがある
【当方での確認事項】
・天板やフロントパネル角に目立つすり傷・打ち傷多数あり
・ボディの継ぎ目には大量のホコリ、外観は残念なジャンク級です
・天板は2枚構成、スライド式で後方へずらして外しますが、
・天板の隙間がひどく傷だらけ、先人は強引にこじ開けたようです
【可変出力(Σ端子)】
・同梱されていたΣケーブル(非純正品)で接続しました
・RF=DIRECT → MUTINGが作動して受信不可
・RF=NORMAL → 名古屋地区のFM局をすべて受信できました。
・STEREOランプ点灯、SERVO LOCKランプ点灯
・三つのメーター動作OK、アンテナ切換OK
・IF BAND切換OK、REC CALトーンOK、 LPF切換OK
・受信感度が低下しているようですが、基本動作はOKでした
・ご指摘のように指針が暗くて見難い、でも全く見えないわけではない
・可変出力端子(Σ端子)のRch側がグラグラ状態です
・今のところREC CALの誤動作は発生していません
【固定出力(RCA端子)】
・メーター動作やインジケーターランプの点灯具合は正常です
・可変出力に接続した状態と同じですが、肝心の受信音が聞こえません
・REC CALトーンも聞こえません
■内部確認--------------------------------------------------
・SメーターとDメーター上部に黄色マスキングテープが貼ってありました
・しかもマスキングテープは無造作にちぎった状態でちょっとビックリ
・たぶんメーター照明用の電球交換の痕跡と思います
・続いてフロントパネルを外して指針電球部を確認すると、、
・指針基板も黄色いマスキングテープでぐるぐる巻きになっていました
・不思議に思ってテープを外すと基板を固定するプラ製ツメが割れていました
・マスキングテープは割れたツメの代わりに基板を固定するためでした
・指針電球は既に直径5mmのLED(黄色)に交換済みでした
・ただオリジナルAC電源に制限抵抗1kΩを介しただけの接続です
・しかも指針基板に穴を開けて直径5mmのLEDを埋め込んでありました
・この状態でLEDは点灯していますが、ただ5mmではオーバーサイス
・指針の裏側に届く丸い穴に入らないので外側で光っている状態
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■修理記録:固定出力端子から音が出ない件---------------------
・調べてみるとRL1入口側では音が出ていますがRL1出口側では無音状態
・ミューティングリレーRL1(L23)が壊れているようです
・ジャンク箱を探したところKT-1000の基板に同型リレーがありました
・これを移植したところ無事に固定端子から音が出るようになりました
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■修理記録:可変出力端子(Σ端子)Rch破損---------------------
・可変端子にΣケーブルを挿し込むときにRch端子がグラグラします
・内側を見ると端子を固定するネジ部分が割れていました
・割れた部分は瞬間接着剤で仮固定
・端子とボディとの接触面は強力ボンドで固定しました
・端子はもう外せないと思いますがご容赦ください
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■修理記録:指針照明----------------------------------------
・このままの状態で直径3mmの白色LEDに交換してみました
・指針の裏側で点灯させれば指針は本来の赤色で点灯しました
・まずはLED電源をDC化する方法を考えました
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■修理記録:メーター照明------------------------------------
・指針照明のLED化に伴ってメーター照明もLEDに変更しました
・本来はメーターを分解してフィラメント電球を取り出すのですが
・メーター外側からテープLEDでライトアップする方法です
・1cm角のプラ製L字アングルをベースにしてLEDテープを貼り付け
・このL字アングルをメーター上部に両面テープで固定する
・メーター形状に合わせてアングルに切れ込みを入れると収まりが良い
・オリジナル電球はメーター内部に残したまま配線だけ切断
・ちょっと邪道な手法ですが、外から見た感じは上々の出来映えです
【オリジナル照明電源】
・[電源基板]24端子 → [MPX基板]20端子(AC12v)
・[電源基板]25端子 → [MPX基板]21端子
【LED照明電源】
・電源基板
・[電源基板]20端子:IF基板に繋がる+14vを借用しました
・[制限抵抗220Ω] を介して [MPX基板]21端子に接続
・指針とメーター照明を合わせて実測23mAでした
・念のため借用対策としてC28,C29を増強
・C28,C29(1000uF/16v) → (2200uF/25v)新品交換
【考察】
・電源基板にはシルク印刷だけで部品が未実装の部分があります
・これは周波数デジタル表示機能がある輸出機向け電源回路です
・ここに部品を実装してLED専用12v電源を作り出す方法もありかも
・いつか機会があったら試してみたい改造です
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■調整記録--------------------------------------------------

【セッティング】
・QUIETING:AUTO
・IF BAND:WIDE
・REC CAL:OFF
・LPF:OFF
・MUTING:OFF
【Sメーター調整 (1)】
・83MHz,60dB → IF基板 L15調整 → Sメーター最大
【Tメーター調整 (1)】
・83MHz,60dB → IF基板 L12調整 → Tメーター中点
【トラッキング調整】
・76kHz,40dB → FE基板 L1,L2,L3,L4,L5,L6,L13調整 → Sメーター最大
・90kHz,40dB → FE基板 TC1,TC2,TC3,TC4,TC5,TC6調整 → Sメーター最大
・数回繰り返す
【Tメーター調整 (2)】
・IF BAND:NARROW
・電波無し、指針83MHz位置 → IF基板 L7調整 → Tメーター中点
【Sメーター調整 (2),(3)】
・IF BAND:NARROW
・RF SELECTOR:DIRECT
・83MHz,45dB → IF基板 VR2調整 → Sメーター 50dBf
・83MHz,65dB → IF基板 VR4調整 → Sメーター 70dBf
・数回繰り返す
【Sメーター調整 (4)】
・83MHz,65dB → IF基板 VR3調整 → Sメーター 70dBf
・数回繰り返す
【REC CAL調整】
・REC CAL:ON
・固定出力端子にAC電圧計セット → MPX基板 VR5調整 → -6dB
・430Hz
【VCO調整】
・83MHz,80dBu,Pilot → MPX基板 VR1調整 → STEREOランプが点灯する範囲の中間
【Pilotキャンセル調整】
・固定出力端子にSpaceSpectra接続
・83MHz,80dBu,Pilot → MPX基板 VR2,L1調整 → 19kHz成分最小
【オフセット(OFS)調整】
・IC10-7pin ~ GND DC電圧計セット
・83MHz,60dBu,Pilot → MPX基板 VR3調整(Lch) → 0v ※実測+30mV
・IC19-7pin ~ GND DC電圧計セット
・83MHz,60dBu,Pilot → MPX基板 VR4調整(Rch) → 0v ※実測ー22mV
【マルチパスメーター調整】
・38kHz AM変調10%
・83MHz,60dBu,38kHz AM Dev10% → MPX基板 L16,L17,L18 調整 → マルチパスメーター最大
【歪調整(MONO)】
・83MHz,80dBu,1kHz → IF基板 L1,L2,L3,L4,L5 → 高調波歪最小
【歪調整(STEREO WIDE)】
・83MHz,80dBu,1kHz,SUB信号 → IF基板 L32(色なし) → 高調波歪最小
【歪調整(STEREO NARROW)】
・IF BAND:NARROW
・83MHz,80dBu,1kHz,SUB信号 → IF基板 L34(色なし) → 高調波歪最小
【セパレーション調整(WIDE)】
・IF BAND:WIDE
・83MHz,80dBu,1kHz,R信号 → IF基板 VR8 → Lch 最小
・83MHz,80dBu,1kHz,L信号 → IF基板 VR10 → Rch 最小
【セパレーション調整(NARROW)】
・IF BAND:NARROW
・83MHz,80dBu,1kHz,R信号 → IF基板 VR9 → Lch 最小
・83MHz,80dBu,1kHz,L信号 → IF基板 VR11 → Rch 最小
【SCA調整】
・DARC信号を入れて音声出力波形を確認 → 影響なし
・VR6(Lch),VR7(Rch)ノータッチ
■試聴------------------------------------------------------
・上記調整によって受信感度が大幅に向上しました
・外観はかなり残念な状態ですが、動作は正常化しました
・勝手にREC CALに切り換る現象は再現しませんでしたが、
・回路図を見て切換回路のICやトランジスタの足を磨いておきました
・かなり真っ黒に変色していたので改善効果はあったかもしれません

LED化前

LED化後