・2023年10月、D-3300Tのメンテナンスをお引き受けしました
・固定出力は正常、ところが可変出力のR側だけ音が出ないそうです
・原因は意外な所に、、という作業記録です
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 KENWOOD D-3300T ¥140,000円(1986年)
・オーディオの足跡 KENWOOD D-3300T ¥140,000円(1986年発売)
・KENWOOD D-3300T 取扱説明書 日本語版PDF
■動作確認------------------------------------------------------------
・本機の特徴である黒いサイドウッドはありませんが、
・外観に目立つキズは無くフロントパネルは美品と言える状態
・さてFMアンテナを接続して電源オン、同時に周波数などの表示部が点灯
・文字痩せ、文字欠け、輝度劣化などは見受けられない
・オート選局(上り下り方向とも)で名古屋地区のFM局をすべて受信OK
・周波数ズレなし、STEREOインジケーター点灯
・RF切換(DIRECT/DISTAMCE)、IF BAND切換(WIDE/NARROW)OK
・アンテナ切換(A/B)OK、ただ繋いでいないアンテナ側でも受信可能
・ここまでは固定出力端子からの音声で確認、動作に異常なし
・続いて問題の可変出力端子の音声を確認すると、
・事前情報の通りR側の音が出ていない、全くの無音状態で雑音すらない
・一方Lch側からは正常に音が出ていて正面パネルにある調整VRで音量が変化する
・端子に少し力を加えて「グリグリ」してみても変化なし、接触不良ではなさそう
・原因は、、実はちょっと思い当たる節があります、、
■内部確認------------------------------------------------------------
・サイドウッドが無くボディは短いタップネジ×4本で固定されていました
・底板を確認 → 修理履歴を記録したKENWOODシールなし
・基板の部品面とハンダ面を詳しく確認しましたが部品交換歴は無さそう
→固定出力L端子 → 〇正常
→固定出力R端子 → 〇正常
→可変出力L端子 → 〇正常
→可変出力R端子 → ×無音
・可変出力端子のハンダ面を確認 → ハンダ不良ハンダ割れなし
・プリント配線を辿って各部導通チェックしてみました
・固定出力端子 → 音量調整VR →× 可変出力端子
・フロント側にある音量調整VRに流れて行った音声信号が可変出力R端子に戻っていない
・問題は音量調整VRが載った基板にありそうです
■修理記録:側板を固定するネジがプリント配線を破壊していた------------
・フロントパネルを分解し、電源スイッチや音量調整VRが載った基板を取り外す
・音量調整VR(5kΩ:B)に繋がるコネクタやプリント配線の導通チェック
・すると可変出力R側のプリント配線に導通がありません
・原因は、、
・ボディ側面を固定するネジの先端がプリント配線を破壊していた事でした
・ネジの先端がピンポイントでVRのR側配線に当り、その痕跡が丸く残っていました
・例えば、サイドウッド固定用の長いネジをサイドウッド無しの状態で締め込んだとか
・過去にそんな不慮の事故があったようです
・現在使われているネジでは基板まで届かないので大丈夫ですが
・でもタップネジの尖った先端が基板の数ミリ手前で止まっているのはちょっと、、
・対策として切断個所の前後の端子をジュンフロン線で直結しました
・これで可変出力R端子の出力が復活しました
・不用意に長いネジを使うと内部の基板や部品に干渉するので気を付けましょう!
■修理記録:フロントエンド トリマコンデンサ総交換---------------------
・受信調整を始めたところ、特にTC3が過敏に反応して一定値に定まらないことが判明
・その他TC1~TC5も微妙に不安定だったのでこの機に全数新品に交換しました
・TC1~TC5:サービスマニュアルのパーツリストで仕様を確認 → 11pF
・新品(10pF)に交換しながら再調整を繰り返す
・交換後は気持ちよく最大電圧に調整できました。
・他機でも同様ですが、この時期のトリマコンデンサは全数交換が正解です
・TC1は点検口からでは手が届かないので右側シャーシを分解する必要があります
・この時に基板のハンダ面全面を確認しましたが、過去の修理痕は無かったです
■調整記録------------------------------------------------------------
【本体設定】
・IF BAND:WIDE
・RF SELECTOR:DISTANCE
・QUIETING CONTROL:NORMAL
※(X86),(X05),(X13):基板番号
【VT電圧】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L5(X05-)調整 → 3.0V±0.1V ※実測 3.1V
・90MHz → TC5(X05-)調整 →25.0V±0.1V ※実測25.2V
【検波調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dBu)受信 → L12(X86-)調整 → 0.0V±10mV ※実測-40mV
・TP16~TP17 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dBu)受信 → L9 (X86-)調整 → 0.0V±10mV ※実測+167mV
【RF調整】
・Multipath V端子 DC電圧計セット
・76MHz(1kHz,100%変調,40dBu)→ L1~4 (X05-)調整 → 電圧最大
・90MHz(1kHz,100%変調,40dBu)→ TC1~4(X05-)調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・Multipath V端子 DC電圧計セット
・83MHz(1kHz,100%変調,30dBu)→ L10,L11,L22(X05-)調整 → 電圧最大
・83MHz(1kHz,100%変調,30dBu)→ L11(X86-)調整 → 電圧最大
【AUTO STOP調整】
・83MHz(19kHz信号,10%変調,14dBu)→ VR1(X86-)調整 → STEREOインジケータ点灯
【SIGNAL METER調整】
・(X13-)電源スイッチ後方の小さな基板
・83MHz(無変調,43dBu)→ VR3(X13)調整 → 7番目のドット(最上段)点灯
【TUNING METER調整】
・SELECTOR:MONO
・83MHz(10Hz,100%変調,80dBf) → VR2(X13)調整 → ※
※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【MPX VCO調整】
・TP15に周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調,80dBf) → VR5(X05-)調整 → 76.00kHz±50Hz
【PILOT CANCEL調整1】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dBu)→ VR1(X05-)調整 → 19kHz信号最小
・左右chのバランス確認
【PILOT CANCEL調整2】
・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dBu)→ L20(X05-)調整 → 19kHz信号最小
・左右chのバランス確認
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(SUB信号,1kHz,90%変調+19kHz信号,10%変調,80dBu)→
→ L19(X05-)調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR3(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整2 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR4(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整3 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR6(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整4 STEREO】
・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR5(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整5 STEREO】
・83MHz(SUB信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR7(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整6】
・83MHz(MAIN信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR8(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整7】
・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR9(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整8 NARROW】
・83MHz(MAIN信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR2(X86-)調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整1 L】
・83MHz(R信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR4(X05-)調整 → Lchもれ最小
【SEPARATION調整2 R】
・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR3(X05-)調整 → Rchもれ最小
【SEPARATION調整3 NARROW】
・IF BAND:NARROW
・83MHz(R信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR2(X05-)調整 → もれ最小
【DEVIATION調整】
・REC CAL オン → VR4(X13)調整 → 左から4番目のドットが点灯する位置
■試聴----------------------------------------------------------------
・再調整によってよい性能を取り戻したと思います
・不用意に長いネジを使うと内部の基板や部品に干渉するので気を付けましょう!