・2023年6月、FM放送を受信できないというST-J75が届きました
・MUTING調整用RT101を回したところ調子が悪くなったそうです
・さて、どんな具合になっているのでしょうか?
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SONY ST-J75 ¥67,000(1980年頃)
・オーディオ懐古録 SONY ST-J75 ¥67,000(1980年頃)
・Hifi Engine SONY ST-J75 FM Stereo Synthesizer Tuner (1980-82)
■動作確認------------------------------------------------------------
・フロントパネルと天板は傷も無くきれいな状態
・さて、FMアンテナを接続して名古屋地区のFM局受信テスト開始
・オート選局で名古屋地区のFM局を受信しようとしたところ
・上り方向、下り方向とも放送局周波数を素通りして受信不可
・手動選局を試みるとシグナルインジケーターが僅かに点灯して受信
・しかしSTEREOランプ点灯しない
・MUTINGレベルを変更(OFF/LOW/HIGH)しても受信不可
・一方のAM放送は背面バーアンテナで感度良く受信OK
・FMだけの問題、これは調整ズレ?それともどこか故障あり?
■内部確認------------------------------------------------------------
・ボディを開けて内部点検と仮調整を行いました
・333シリーズではヒューズ抵抗の劣化事例が多いですが
・ST-Jシリーズも多くのヒューズ抵抗(緑色ベース)が実装されています
・まずは全ヒューズ抵抗の抵抗値を確認 → 異常値なし
・次に黒く変色したICやTRの足を硬めの歯ブラシで清掃
・続いて下記調整手順に従って各部仮調整
・フロントエンド、FM同調点などに大幅な調整ズレがありました
・仮調整の結果、受信感度が大幅アップしシグナルインジケーターが全灯
・不調の原因は経年による各部の調整ズレだったと思います
・ギリギリ受信できる状態のRT101を回したため受信不能レベルになってしまった?
・以下の手順で再々調整を行って正常動作に戻りました
■ヒューズ抵抗一覧----------------------------------------------------
【IF回路】
・R104:39Ω
・R129:10Ω
・R128:120Ω
【MPX回路】
・R208:100Ω
・R209:100Ω
・R219:120Ω
・R229:100Ω
・R233:100Ω
・R234:39Ω
【AM回路】
・R318:100Ω
【電源回路】
・R601:4.7Ω
・R607:10Ω
・R610:10Ω
・R613:10Ω
・R617:10Ω
■調整記録-----------------------------------------------------------
【PLL調整】
・TP GATE → 電圧計セット ※TP(GATE)=Q401(2SK30A-G)
・RT401調整 → +1.8v
【VT電圧確認】
・アンテナ入力なし
・フロントエンド TP → 電圧計セット
・76MHz → L05調整 → 3.0v ※実測 2.9v
・90MHz → CT05調整 → 19.0v ※実測18.6v
【FM同調点調整】LA1231Nクアドラチュア検波
・R122両端(IC101:LA1231N横)→ 電圧計セット
・83MHz受信 → IFT101調整 → 電圧0V±10mV ※実測-920mVv
【レシオ検波調整】
・TP-NULL~GND 電圧計セット
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz受信 → IFT102(黒:左)調整 → 電圧0V±10mV ※実測+0.5v
・83MHz受信 → IFT102(赤:右)調整 → 歪率最小
【フロントエンド調整】
・IC101:LA1231N-13ピン → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83MHz受信 → CT01,CT02,CT03,CT04調整 → 電圧最大
※L01~L05は中空コイルで調整が難しいため83MHzのみで調整
【ミューティング調整】
・83MHz 20dB受信 → RT101調整 → 受信できる位置
【Sメータレベル調整】
・83MHz 80dB受信 → RT102調整 → Sメーター全点灯位置
【VCO調整】
・TP-76KHz → 周波数カウンタセット
・83MHz(無変調)→ RT203調整 → 76kHz
【パイロットキャンセル調整】
・音声出力 WaveSpectra接続
・83MHz(ST)→ RT202調整 → 19kHz漏れ信号最小
【OUTPUTレベル調整】
・音声出力端子 TP62 AC電圧計セット
・83MHz(60dB)Mono受信 → RT205調整 → Lch 0.775V
・音声出力端子 TP64 AC電圧計セット
・83MHz(60dB)Mono受信 → RT206調整 → Rch 0.775V
【セパレーション調整】
・83MHz(ST)→ RT205調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【REC CAL調整】
・音声出力レベル測定
・REC CALオン → RT201調整 → 音声出力レベル-6dB ※350Hz
【AM VT電圧調整】
・TP AM → 電圧計セット
・ 522kHz → T301調整 → 1.6v ※確認のみ
・1602kHz → CT302調整 → 21.2v ※確認のみ
【AM 受信調整】
・ 729kHz NHKラジオ受信 → バーアンテナ内蔵コイル調整 → Sメーター最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → CT301調整 → Sメーター最大
・ 909kHz NHKラジオ受信 → IFT301,305,303調整 → Sメーター最大
【AM その他調整】
・RT701調整 → AMミューティング調整
・RT702調整 → AMシグナルインディケーター調整
■試聴----------------------------------------------------------------
・幸いにも部品故障は無く調整作業だけで復活しました
・ST-J75は1980年頃の製品ですから製造から既に40年超ですね
・プリセットメモリボタンを見ると民放FMが4局しかなかった時代
・1980年製のテレビや冷蔵庫を使っている人はまずいないと思いますが、
・ところで最近は旧車ブームだそうですね
・当時乗っていたクルマが破格の値段で取引されているのを最近知って驚きました
・クルマもオーディオも長く愛用するにはメンテナンスが欠かせません
・私はクルマの本格メンテは出来ませんが、
・チューナー分野でお手伝いできれば、と思っています