・2023年7月、HOジャンクコーナーで縦置きされたESGに遭遇しました
・「FM受信するがしばらく経つと音声が消える、、」
・値札に書かれた不具合情報に興味が湧きました
・税込み3,300円はちと高い、でも最悪は部品取り機として活用できるし、
・そんな入手経緯でした
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SONY ST-S333ESG ¥49,800(1989年発売)
・1987年10月発行 SONY ES テクノロジーカタログ
■動作確認------------------------------------------------------------
・外装は経年の汚れがあるもののとてもキレイな状態でした
・縦置きによるサイドウッドの擦り傷はほとんど分かりません
・外観上の難点は電源ボタン下「 ON / OFF 」の印字が消えかけていること
・さて、FMアンテナを接続して電源オン
・表示部点灯OK、文字欠けや輝度劣化は感じられない
・IF BANDやRF切換などボタン操作に応じてインジケーター点灯OK
・オート選局でFM局を受信しようとすると、
・上り方向はすべての局を素通りして受信不能
・下り方向では-0.2MHzの周波数で受信OK
・シグナルインジケーターは半分ほど点灯、STEREOインジケータ点灯しない
・この状態でしばらく様子を見ていると、突然音声が出なくなる
・値札に書かれた不具合情報はこの事か?
・そもそも0.2MHzズレた受信なので同調点が大幅にズレている
・一方AMは手持ちの333用ループアンテナで正常に受信OK
・問題はFM部、特にFM同調点の大幅なズレが気になります
■内部確認------------------------------------------------------------
・ボディを開けると内部は部品が見えないほどの大量のホコリが堆積していました
・まずはエアダスターと刷毛で丁寧に内部清掃、ヤニ汚れが無いのは幸いです
・基板を見渡してみると部品はすべてオリジナル状態のようです
・まず最初にすべてのヒューズ抵抗を確認 → 顕著な劣化部品なし
・続いてFM同調点を仮調整してみると
→IC251(LA1235)7pin~10pin間電圧計セット
→83MHz受信 → IFT251調整 → 電圧ゼロ
・0.2MHzの周波数ズレは解消し、同時にステレオインジケーター点灯
・上り下り方向ともオート選局でFM局を受信できるようになりました
・ハンダ面を確認してみるとアースバーの複数個所にハンダクラックあり
・FMアンテナ端子にもハンダクラックあり
・登録したメモリ内容を保持できない
■修理記録:333シリーズ定番の故障箇所を修理----------------------------
・ハンダクラック対策:アースバー、FMアンテナ端子、音声出力端子
・フロントエンド:トリマコンデンサCT101,CT102,CT103(10pF)交換
・PLL検波回路:トリマコンデンサCT271(20pF)交換
・メモリーバックアップ:C605(0.1F/5.5V) → 1F/5.5V 交換
・タンタルコンデンサC604(10uF/6.3v)→ 電解コンデンサ(10uF/50v)交換
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM同調点調整】
・IF BAND = WIDE
・IC251(LA1235)7pin~10pin間電圧計セット
・83MHz受信 → IFT251調整 → 電圧ゼロ
【VT電圧調整】
・フロントエンド内JW8 電圧計セット
・アンテナ入力なし
・90MHz → L104調整 → 21.0V±0.2V ※調整前実測20.4V
・76MHz → 確認のみ → 8.0V±1.0V ※調整前実測 7.7V
【トラッキング調整】
・IF BAND = NARROW
・IC251(LA1235) 13pin(又はR261右足)電圧計セット
・90MHz受信 → CT101,CT102,CT103 → 電圧最大
・76MHz受信 → L101,L102,L103 → 電圧最大
【PLL検波調整】
・IF BAND = WIDE
・TP201を短絡 ※これによってIF回路をパス
・TP271 電圧計セット
・IFT272調整 → 電圧ゼロ
・CT271調整 → 歪最小 ※Wavespectraにて波形確認
・TP201を開放
【IF歪調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING = OFF
・IC251(LA1235) 13pin(又はR261右足)電圧計セット
・RV201、RV202 時計回り一杯に回す
・SSG出力40dBモノラル信号送信
・IFT201調整 → 電圧最大
・SSG出力40dBステレオ信号送信
・IFT202調整 → 電圧最大
・IFT101調整 → 電圧最大 ※IFT101フロントエンド内
・RV201、RV202 回転範囲の中央位置に回す
・SSG出力80dBモノラル信号送信
・IFT203調整 → 歪最小へ
・SSG出力80dBステレオ信号送信
・IFT204調整 → 歪最小へ
【STEREOインジケータ調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING = OFF
・SSG83MHz 出力20dB
・RV251調整 → ステレオインジケータ点灯
【MUTINGレベル調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING = ON
・SSG83MHz 出力25dB
・RV252調整 → MUTING調整
【IF NARROWゲイン調整】
・IF BAND = NARROW
・RV203調整 → NARROWゲイン調整
【Sメーター調整】
・RV241調整
【パイロットキャンセル】
・RV303、L301 19kHz信号漏れ最小 左右バランス確認
【セパレーション調整】
・RV301 R→L ※調整後実測61dB
・RV302 L→R ※調整後実測63dB
【CAL TONE】
・Peak Level-4.2dB 390Hzの波形が出ていました
【AM調整】
・RV401 Sメーター調整
・RV402 AUTOSTOP調整
■試聴---------------------------------------------------------------
・値札に書かれた不具合情報から「何か新種の故障事例か?」と期待しましたが、
・調整個所の大幅なズレが原因でした
・部品取りにするには勿体ない状態に仕上がってしまいました