・2023年6月、ST-55ジャンク機を寄付していただきました
・久しぶりに再会する懐かしい機種です
・この機種は2008年に弄った記録が残っています → 2008年7月26日記事
・夏季休暇を利用して再び整備してみました
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Aurex ST-55 ¥49,800(1980年頃)
・Hifi engine Toshiba ST-55 Digital Synthesizer Stereo Tuner (1983)
・Aurex ST-55 取扱説明書(日本語版PDF)
・1980年度グッドデザイン賞受賞
■動作確認------------------------------------------------------------
・今見てもカッコいいと感じる、デザインセンスが光ります
・鏡面仕上げの黒色フロントパネルに縦長のスリット型インジケーターが絶妙にマッチ
・フロントパネルの美しさが写真ではうまく表現できない、伝わらないのが残念です
・奥行きはわずか230mmと超コンパクト、FMアンテナにF端子が無いのが残念
・さて電源オンと同時に周波数表示が出現、文字欠けや痩せはない
・周波数UP/DOWNボタンで周波数が上下に変化、オート選局で名古屋地区のFM局を受信OK
・シグナルメーター(赤色5素子LED)フル点灯するがSTEREOインジケーター点灯しない
・6局メモリーボタンも登録OK、MUTING動作OK
・FM放送の受信動作はOK、ただ残念ながら出てくる音は雑音に塗れたひどい音
・しかもLchが途切れ途切れ、これは接触不良か?
・一方のAM放送は背面バーアンテナでシグナルインジケーターフル点灯し受信OK
・AMの受信音もやはりLchが途切れ途切れ
■内部確認------------------------------------------------------------
・FM4連バリキャップ構成
・Q001:3SK73
・Q101:TA7617P Car Radio AM Tuner
・Q203:HA12412 FM IF SYSTEM
・Q301:HA12016 FM STEREO MPX Decoder
・Q902:TC9137P CMOS LSI for Static Type Digital Tuning System
・T201:手前側→検波調整、奥側→歪調整
・R217:MUTINGレベル調整
・R219:シグナルインジケーター点灯レベル調整
・R304:VCO調整
・セパレーション調整用VRがない
・底板を外すとフロントパネルが本体から分離する簡素な構造、ボディ剛性全くなし
・フロントパネル内側を更に分解してコントロールICなど確認しました
・シグナルインジケーターは赤色5連LED、それ以外はフィラメント電球でした
・電球の光を細長いスリットを通してインジケーター(赤、緑、橙)として見せている
・◎外観デザイン、△ボディ剛性、◎FMフロントエンド、○検波回路、△MPX回路、
・何だか不思議な組み合わせです
■修理記録:Lchの音が出ない---------------------------------------------
・背面にある出力端子は「可変出力端子」で固定出力端子はありません
・Lchの音が出ない原因は出力レベルを調整するVR内部の接触不良でした
・VR内側にエレクトリッククリーナーを噴射して何度も何度もグリグリ回転
・これによってFM/AMとも音が出ない不具合は復旧しました
■修理記録:ひどい雑音対策 電解コンデンサー交換----------------------------
・WaveSpectraで観察すると電源周波数(60Hz)に対する倍音成分が顕著に見られる
・さらに基準音(1kHz)に対する高調波もひどい状態
・まず電源回路の電解コンデンサー交換から始めました
・電源部の電解コンデンサーはすべて105°C品が使われていました
・1個づつ取り外してパーツテスターでチェック、その後新品に交換、この作業の繰り返し
・最終的にチューナー基板のほぼすべての電解コンデンサーを交換しました
・顕著な不良パーツは以下の5個でした
・C928 470uF/10v → 470uF/25v
・C218 330uF/10v → 330uF/25v
・C213 1uF/50v → 1uF/50v
・C215 10uF/16v → 10uF/25v
・C302 1000uF/16v → 1000uF/25v
・ここまでの作業で一応満足できるレベルまで改善できました
■調整記録-----------------------------------------------------------
【VT電圧】
・フロントエンドシールドケース内R013後足 → 電圧計セット
・90MHz → TC04調整 → 13.6v ※確認のみ
・76MHz → T004調整 → 4.3v ※確認のみ
【FM検波調整】
・Q203:HA12412 7pin~10pin → 電圧系セット ※Tメーター電圧
・83MHz受信 → T201手前コア調整 → 電圧ゼロ
【RF調整】
・HA12412 13pin → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・76MHz受信 → T001,T002,T003調整 → 電圧最大
・96MHz受信 → TC01,TC02,TC03調整 → 電圧最大
・83MHz受信 → T005調整 → 電圧最大
【FM検波調整】
・Q203:HA12412 7pin~10pin → 電圧系セット ※Tメーター電圧
・83MHz受信 → T201手前コア調整 → 電圧ゼロ
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz受信 → T201奥側コア調整 → 高調波歪最小
・83MHz受信 → T005調整 → 高調波歪最小
【MUTING調整】
・83MHz 20dB受信 → R217調整 → MUTING作動位置へ
【Sメーター調整】
・83MHz 70dB受信 → R219調整 → シグナルインジケーター全灯位置へ
【VCO調整】
・83MHz ST信号受信 → R304調整 → STEREOインジケーター点灯位置へ※
※R304を左右に大きく回しSTEREOインジケーターが点灯する範囲の中央位置へセット
【AM簡易調整】
・ 729kHz(NHK名古屋)受信 → T102,バーアンテナ内コア調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC11,TC12調整 → Sメーター最大
・1053kHz(CBCラジオ)受信 → T103,T104調整 → Sメーター最大
■試聴---------------------------------------------------------------
・とりあえずFM/AMとも安定して受信できるようになりました
・ただステレオセパレーションは左右とも約40dB、調整VRも無いのでちょっと物足りない
・フロントパネルが美しくてコンパクトボディなのでインテリアとして良さそう