・2023年5月、シルバーモデルのKT-1100故障機が届きました
・外観は新品クラス、でもAMが受信できないそうです
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-1100 ¥73,800(1982年発売)
・オーディオ懐古録 TRIO KT-1100 AM-FM STEREO TUNER ¥73,800
・Hifi Engine Kenwood KT-1100 AM/FM Stereo Tuner (1983)
■動作確認------------------------------------------------------------
・これは新品か? と思うほど外観は驚くほど美しい!!
・背面端子は根元までピカピカ、ボディや底板を留めるネジもピカピカ
・機能切換スイッチ(プラ製)がまったく日焼けしていない
・付属AMループアンテナも使用感が無い、、これはすごい!
・外観の美しさに驚きつつFMアンテナを接続して電源オン
・二つのメーター照明点灯、赤い指針点灯
・選局ツマミを回しながら名古屋地区のFM局を受信してみると
・目盛りより0.2MHzほど低い周波数で受信OK
・選局ツマミから指を話すとLOCKランプ点灯、STEREOランプ点灯
・TメーターとSメーターの振れ方に問題なし
・RF切換、IFバンド切換OK、REC CALトーンOK
・FMは周波数ズレ以外に大きな問題なし
・ところがAMは全く受信不可、Tメーター、Sメーターとも全く振れず
・局間ノイズも聞こえない
■内部確認------------------------------------------------------------
・これはホントに新品か、ボディを開けて基板を見渡してみると、、
・AM回路のRF初段Q4(2SK161)に交換の痕跡発見、しかもその交換方法が、、
・Q4の足だけ残して頭部を切断し、残った足の上に新Q4を継ぎ足している!
・しかも接合部のハンダ付けがあまりに下手くそでハンダが団子状態
・底板を外せばハンダ面に簡単にアクセスできるのに、なぜこんな事を??
・さらに隣にあるRFコイルL14の頭部が無残に割れている
・割れた部分は接着剤で固定されているが、軽く回しただけで外れてしまった
・なんだか急に雲行きが怪しくなってきたような、、嫌な予感が、、
・底板を外してハンダ面を見てもう一度ビックリ!
・フロントエンドユニットを取り外した痕跡がある!
・ユニットを固定する大盛のハンダを溶かした汚い痕跡、
・あちこちに半田ごてが滑ったキズ跡多数
・さらにユニットを再固定するために盛られたハンダ量がとても少ない
・フロントエンドユニットを外す理由と言えば、トリマコンデンサの交換ですが
・試しにトリマコンデンサを回してみると周波数ズレは正常に修正できました
・トリマを左右に大きく回してもガリノイズは発生しない、
・たぶんトリマコンデンサは交換済み、、かな?
■修理記録:AM不調----------------------------------------------------
・まず首切りされたQ4(2SK161)を取り外してハンダ付けをやり直し
・続いてL14を取り外して割れたコア部分を除去
・L14内部のコイル(赤い巻線)に断線は無かったので再生して再利用
・他のコイルからコアだけ移植、周囲に熱収縮チューブを巻いてL14を修復
・この状態で再度動作確認するも、やはり受信不可
・でもRF回路の抵抗やコンデンサを直接指で触れるAM放送が受信できる
・指で触れながら同調するとSメーターが大きく振れTメーターも中点を示す
・指を離すと受信不可になる、、これは部品がどれか壊れている??
・RF回路の部品一つづつ取り外して容量チェック
・面倒な作業を繰り返したところ故障部品発見!
・L14とQ4の間にあるコンデンサC111(33pF)がUnknwon物体と化していました
・たぶんQ4を交換したとき、半田ごてがC111に接触して壊れたのかな?
・これを新33pFに交換したところAM受信が正常になりました
・後述のAM受信調整によって感度良く受信できるようになりました
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM OSC調整】
・83MHz受信 → フロントエンドTC8調整 → Sメーター最大
※OSCコイルL5の調整が難しいため83MHzのみで調整
【FM RF部調整】
・IF BAND NARROW
・83MHz受信 → フロントエンドTC1,TC2,TC4,TC6調整 → Sメーター最大
・83MHz受信 → フロントエンドT1調整 → Sメーター最大
※L1~L4の調整が難しいため83MHzのみで調整
【IF調整】
・IF BAND NARROW
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz → L2,L3調整 → Sメーター最大
【Tメーター調整】
・IF BAND NARROW
・83MHz受信 → Sメーター最大かつ高調波歪最小位置にて受信
・L4調整 → Tメーター中点
【Wide Gain調整】
・83MHz受信 → VR1調整 → Wide/Narrow Sメーター振れ具合を同じ位置に
【2nd OSC調整】
・IC4(TR4011)-1pin → 周波数カウンタ接続
・83MHz受信 → L6調整 → 1.965MHz
【VCO調整】
・IC7(TR7040)付近の二つのTPを直結
・TP(19kHz) → 周波数カウンタ接続
・83MHz → VR4調整 → 19kHz±10Hz
【Pilot Cancel調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR3,L19調整 → 19kHz漏れ信号最小
【セパレーション調整/wide】
・IF BAND WIDE
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR5調整 → Lch漏れ信号最小
・83MHz ST → VR9調整 → Rch漏れ信号最小
【セパレーション調整/narrow】
・IF BAND NARROW
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR6調整 → 漏れ信号最小
【REC CAL調整】
・83MHz受信 → 出力レベル測定
・VR2調整 → 上記レベル-6dBに設定 ※422Hz
【タッチセンサー調整】
・Q13エミッタ(=R197) → 周波数カウンタ接続
・L18調整 → 400kHz
【AM OSC調整】
・ 600kHz受信 → L17調整 → シグナルメーター最大
・1400kHz受信 → TC7調整 → シグナルメーター最大
【AM RF調整】
・ 600kHz受信 → L14,L15調整 → シグナルメーター最大
・1400kHz受信 → TC3,TC5調整 → シグナルメーター最大
【AMメーター調整】
・VR12 Sメーター振れ具合調整
・VR11 Tメーター中点調整
■試聴----------------------------------------------------------------
・トリマを交換した人、AM回路の修理を試みた人、たぶん別人かな?
・フロントエンドを取り外せる人ならTRの首切りはしないでしょう
・この個体は一体どんな歴史を歩んできたのか?
・これからの余生は幸せに生きておくれ、、