・2023年2月、ST-JX8の故障品が届きました
・FM/AMともに音が出ないそうです
・以下、作業記録です
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 SONY ST-JX8
・オーディオの足跡 SONY ST-JX8 ¥70,000(1981年発売)
・取扱説明書 日本語版、PDF形式
■動作確認------------------------------------------------------------
・フロントパネル、ボディとも外観に目立つキズは無くとても綺麗
・さて、FMアンテナを接続して電源オン
・周波数表示が明るく点灯、輝度劣化や文字痩せなし
・早速オート選局で名古屋地区のFM局を受信しようとしたところ、
・全局とも放送周波数を素通りして受信不可、
・手動選局を試しても状態は同じで全く受信不可
・シグナルインジケーターは全く点灯しない
・REC CALトーンは正常に聞こえる
・AM放送も全く受信できない
・これは重症か??
■内部確認------------------------------------------------------------
・ボディを開けてビックリ、部品が見えないほど大量のホコリが堆積
・放熱のための通風孔が天板に大量に開いているので仕方ないですね
・まずはエアーとブラシで内部の徹底清掃、ヤニ汚れが無いのが救いでした
・独立したフロントエンドユニット、レシオ検波
・LA1235:FM IF System
・uPC1223C:MPX System
・LA1245:AM Tuner System
■修理記録------------------------------------------------------------
・電源系統のチェック、特にヒューズ抵抗確認 → 異常なし
・続いてTP(CV) でVT電圧確認
・本来なら76MHz → 8.0v、90MHz → 21.0v前後のはず
・ところがFM/AMともVT電圧が1.4vを示したまま変化しない
・原因究明のためまずはPLL回路の点検からスタート
・ST-JX8の回路図やサービスマニュアルは未入手ですがST-J75の資料が役立ちます
・PLL回路の部品番号(400番台 → 500番台)を読み替えればOK
・各ICやTRの規定電圧確認、信号の流れを確認、、でも故障個所が見当たらない
・IC501(CX778) → Q501(2SK30A) → Q502(2SC1362)
・調査の結果、RT501(102:G BIAS)の抵抗値が無限大、つまり断線状態でした
・これを同型同値の中古部品に交換したところTP(CV) にVT電圧が出現しました
・後述の調整作業でFM/AMとも受信できるようになりました
・RT501は見た目も回転フィーリングも問題ないのに、、壊れていました
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧確認】
・アンテナ入力なし
・TP-CV → 電圧計セット
・76MHz → L5調整 → 8.1V ※確認のみ
・90MHz → TC5調整 → 21.5V※確認のみ
【FM同調点調整】
・R228両端(IC201:LA1235横)電圧計セット
・83MHz受信 → IFT201調整 → 電圧0V±10mV ※実測-1.9V
【レシオ検波調整】
・TP-NULL~GND 電圧計セット
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz受信 → IFT202(黒:左)調整 → 電圧0V±10mV ※実測+0.8V
・83MHz受信 → IFT202(赤:右)調整 → 歪率最小
【フロントエンド調整】
・IC201:LA1235-13ピン(またはJW51)電圧計セット ※Sメーター電圧
・83MHz受信 → CT1,CT2,T101,T102調整 → 電圧最大
※L101~L105がボンドで固められているので調整不可
※83MHzでCT1,CT2を合わせる方法で調整しました
【ミューティング調整】
・83MHz 20dB受信 → RT201調整 → 受信できる位置
【Sメータレベル調整】
・83MHz 80dB受信 → RT203調整 → Sメーター全点灯位置
【VCO調整】
・TP-76K(R307左足)~GND 周波数カウンタセット
・83MHz(無変調)→ RT302調整 → 76kHz
【パイロットキャンセル調整】
・音声出力 WaveSpectra接続
・83MHz(ST)→ RT301調整 → 19kHz漏れ信号最小
・83MHz(ST)→ L301調整 → 19kHz漏れ信号最小 ※左右バランス注意
【セパレーション調整】
・83MHz(ST-Lch)→ RT305調整 → Rch最小
・83MHz(ST-Rch)→ RT355調整 → Lch最小
【OUTPUTレベル調整】
・音声出力端子 TP62 AC電圧計セット
・83MHz(60dB)受信 → RT305調整 → Lch 0.775V
・音声出力端子 TP64 AC電圧計セット
・83MHz(60dB)受信 → RT306調整 → Rch 0.775V
【REC CAL調整】
・音声出力レベル測定
【AM VT電圧調整】
・CT401 CT402
・L401 バーアンテナ
・RT401(AM SIG)電圧計セット(Sメーター電圧)
・IFT401、IFT402
・RT402(AM MUTE)
■試聴----------------------------------------------------------------
・受信不可の原因は意外にも半固定抵抗の故障でした
・そういえば前回のST-JX8でも半固定抵抗の故障事例がありました
・先入観は禁物ですね、柔軟な思考回路で対応しましょう