・2022年11月、ウッドケースに納まったST-720が届きました
・専用ケースがあったとは知りませんでした
・シンセチューナー黎明期の貴重な機種です
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Aurex ST-720 \105,000(1975年頃)
・オーディオ懐古録 Aurex ST-720 \105,000
■動作確認------------------------------------------------------------
・W450mm×D365mm×H148mm、重量8.3kg
・元々大型サイズですがウッドケースに納まるとさらに巨艦サイズ
・ウッドケースによって高級感、重厚感が増幅されています
・調べてみると本体サイズは同時期のアンプ(SB-820等)と同じ
・ウッドケースはたぶん共通のオプション品だったのでしょうね
【選局方法】
・Aurex ST-720 1号機記録 2016年3月2日記事
※選局方法、プリセット方法など詳細な記録が残っています
【動作確認】
・プリセット選局のピンボードは関西圏の放送局が登録済みでした
・登録された周波数を信号発生器から信号送信すると受信動作OKでした
・FM局が存在しない周波数ではエラーインジケーター[TUNING ERROR]が点灯
・マニュアル選局によって名古屋地区のFM局も受信できました
・しかしSTEREOランプが点灯しない、実際にステレオ感もない
・マルチパスH端子からはFM受信音声が聞こえる
・その他REC CALトーンOK、可変出力VRガリあり
・問題は復調回路のようです
■内部確認------------------------------------------------------------
・5連構成フロントエンド。局発回路はもう一つのシールドケース内
・IF段(4極LCブロックフィルター×3段構成)→ レシオ検波 → LA3350(PLL-MPX IC)
・VR1:VCO調整 → TP19kHz
・VR2:セパレーション調整
・VR3:REC CALトーン調整
・[TUNING ERROR]、[STEREO] 赤色インジケーター → LED
・[PRESET CH] 橙色インジケーター → フィラメント電球
・当時の資料によると周波数を設定するピンボードは10個付属していたようです
・でも収納ケース内部を見たところ予備のピンボードが残っていません
・3Dプリンターがあればピンボードを自作できるかも?
・あるいは小さなプラ板を該当箇所に差し込めば機能代用できるかも?
■修理記録:STEREOランプが点灯しない----------------------------------
・復調回路のVCO調整で正常に19kHz設定できました
・しかしSTEREOランプは点灯しない、聴感上もステレオ感なし
・WaveSpectraで左右の波形を確認すると分離度ゼロ、セパレーション値ゼロ
・これは復調用IC[LA3350]の内部故障が怪しいか?
・ジャンク箱を捜索すると KT-1100D の基板に[LA3350]を発見
・これを取り外して ST-720 に移植しました
・結果は左右の分離はできるようになりました、が、、
・しかし調整VRを回してもセパレーション値が最大 5dB 程度しか取れません??
・依然としてSTEREOランプも点灯しない、
・LA3350 周辺の電解コンデンサーをいつくか交換しましたがそれでも改善しない
・これはおかしい?? 移植したLA3350が不良品だったか?
■修理記録:STEREOインジケーターLED交換-------------------------------
・新品のLA3350をネット注文し、届くまでの気分転換にとLEDの交換作業を行いました
・STEREOインジケーターの赤色LEDです
・フロントパネルを分解してLEDを外してみました
・直径3mmの赤色LEDが透明樹脂製の凸型ホルダーに納まっています
・このホルダーは流用しようと思い内部のLEDだけを取り外そうとしましたが、、
・悪戦苦闘の末、LEDだけ取り外すのは無理、、諦めました
・どうやらこれはホルダーとLEDの一体成型品のようです
・あれこれ考えた末、最終的にホルダー後部に直径3mm、深さ3mmほどの穴をドリルで掘り
・旧LEDを残したまま新LEDの頭部を少しだけ差込む形に納めました
・この状態でもLEDが点灯すると凸型ホルダー全体が赤く輝きます
・フロントパネルにセットした状態だと凸部だけが点灯しているように見えます
・輝度もちょうど良い感じになりました
・あれ? LEDが点灯するということは、、、
・LED交換作業を終えて調整作業を再開したところ、何ということでしょう!
・セパレーション値が左右とも40dB前途に改善していました
・さらに下記調整によって60dB程度まで大幅改善することができました
・つまり左右分離できなかった原因は STEREOランプ(LED)が切れていたから?
・先に STEREOランプ(LED)を交換すればIC交換は不要だったみたいです、、、
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧】
・フロントエンド 黄色リード線にDC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76.1MHz → OSC L01 調整 → 確認のみ※実測 3.2V
・89.9MHz → OSC VD01調整 → 確認のみ※実測13.8V
【RF調整】
・Multipath V端子(R68右足) DC電圧計セット
・76.1MHz(無変調,40dB)→ L01~L05調整 → 電圧最大
・89.9MHz(無変調,40dB)→ VD01~VD05調整 → 電圧最大
・83.0MHz(無変調,40dB)→ IT01調整 → 電圧最大
【レシオ検波調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・Multipath V端子(R68右足) DC電圧計セット
・83.0MHz(1kHz,80dB)受信 → IFT01調整 → 電圧最大
・83.0MHz(1kHz,80dB)受信 → IFT02上段調整 → 1kHz信号最大
・83.0MHz(1kHz,80dB)受信 → IFT02下段調整 → 高調波歪最小
【MPX VCO調整】
・TPに周波数カウンタ接続
・83.0MHz(無変調,80dB) → VR01調整 → 19kHz
【SEPARATION調整】
・83.0MHz(R/L信号,80dB)→ VR02調整 → もれ信号最小
【HI BLEND】
・スイッチONで 6000Hz以上が緩やかに減衰することを確認。
【REC CAL調整】
・基準音539Hz
・本体スイッチ設定 50% → VR03調整 → -6dB設定
・本体スイッチ設定100% → 確認のみ → ±0dB
■試聴----------------------------------------------------------------
・シンセチューナー黎明期の希少品、しかもウッドケース付きの逸品です
・ガチャン、ガチャン とボタンで選局するスタイルがどこか懐かしい感じ
・いずれ博物館に展示される名品かもしれません?