・2022年10月、初めて見る機種が届きました。
・昭和の香り漂うオールドチューナー(ワンオーナー品)です。
・久しぶりに通電したところ酷い雑音しか出ないそうです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 VICTOR JT-V7 ¥44,000(1973年頃)
・上記サイトの記述に「MPX部にはPLL回路を採用している」とあります
・もしかして1973年製でPLL回路を内蔵したMPX-IC搭載機か??
・本機に関してネット上で見つかる情報は少ないです
・オーディオの足跡 VICTOR MCT-V7 ¥44,000(1973年頃)
・JT-V7とよく似た型番、発売時期がほぼ同じ、定価も同じ
・調べてみるとこちらの復調回路は古典的なスイッチング方式のようです
■動作確認------------------------------------------------------------
・背面端子を見ると固定/可変端子以外にDET出力端子あり
・FMアンテナにF端子が無いのが残念
・まずは75Ω~300Ω変換器を挟んでFMアンテナを接続
・電源オン、周波数窓と二つのメーターが緑色照明に浮かび上がる
・オレンジ色の指針がステキなアクセントです
・MUTINGオフ、選局ツマミを回すと激しい雑音しか聞こえない
・局間ノイズにさらに別の激しい雑音が加わっている感じです
・雑音に連動してTメーターとSメーターが激しく振れる
・FM放送は局周波数付近で受信できているのか?雑音に紛れて判別不能
・Tメーター中点とSメーター最大点が判定できない
・STEREOランプは至る所で点灯したり消灯したり明滅する
・一方のAM放送は背面バーアンテナで良好に受信OK
・問題はFM、しかもこれは重症ですね
■内部確認------------------------------------------------------------
・Alps社製フロントエンド(FM4連AM2連バリコン搭載)
・IFバンド切換なし
・レシオ検波
・HA1156(PLL-MPX-IC)
・AMはディスクリート構成
・ボディ内部はブロック図が貼り付けてありました
・PIONEER TX-910 が日本初(1972年10月)MPXにPLL-IC(MC1310)を採用したチューナーです
・JT-V7の発売は翌年の1973年、つまり翌年には早くも互換品のHA1156が登場していた
・今回も興味深い気付きがありました
■修理記録:接点洗浄--------------------------------------------------
・まずは激しい雑音を何とかしなければ始まらない
・過去に故障事例の多いバリコン軸の接点洗浄
・次にMUTINGとHi-BLENDの切換スイッチの接点も洗浄
・しかし雑音の状況はほとんど変わらない。
・次の確認として IF回路入口に10.7MHz信号を直接注入してみると、、
・何と雑音なくきれいな受信音が聞こえてきました。
・Sメーターが大きく振れ、STEREOランプが赤く点灯します。
・つまり酷い雑音の発生源はフロントエンド内部という事
・これは面倒な作業になりそう、、、
■修理記録:フロントエンド-------------------------------------------
・実はちょうど同じタイミングで LUXMAN T-88V という機種が手元にありました
・ニコイチ合体後に残った部品取り用の材料です
・T-88Vにも同じタイプのAlps製フロントエンドユニットが搭載されています
・ユニットの型番は微妙に異なりますが、サイズ、端子数、バリコン枚数は同じ
・加えて T-88Vにはフロントエンド内部の回路図もある、これは使える!!
・壊れても構わない、そんな割り切りがあると度胸と技術は磨かれます(笑)
【事前準備】
・ユニットの裏蓋を外した状態で通電しながら動作確認することは難しいのですが、
・幸いな事に JT-V7はフロントエンドユニット後方に十分な空間があります
・この空間を作業スペースとするべく邪魔になる部品をいくつかハンダ面に移設
・C101,C132(223)、C110(1uF/50v) → メイン基板のハンダ面に移設
・2SC535と2SC1342を取り外してhfeチェック→問題なし→ハンダ面に移設
・これでフロントエンド裏蓋を外したまま部品交換の実験ができます
【修理記録】
・まずT-88V回路図とJT-V7フロントエンドを比較して部品配置を確認
・基板上に多数見える直径10mmほどの円盤形部品がセラミックコンデンサーです
・T-88V 修理調整記録に寄せられたexjf3eqs 様のアドバイスを実践してみました
・フロントエンドユニット3番端子に繋がる円盤型セラミックコンデンサを交換
・C121( 5000pF) 手持ちがないので4700pF(472)で代替 → 効果なし
・その他の円盤型コンデンサ(5000pF)も同様に4700pFに交換 → 効果なし
・T-88Vフロントエンド回路図とJT-V7を比較しながら部品交換を進める
・OSC発振回路の円盤型コンデンサ C120(15pF)→ 温度補償型コンデンサに交換
・何とこれが当たりでした!
・それまでの激しい雑音が嘘のように消え本来のFM放送が受信できました
・不具合の原因は C120(15pF)の劣化だったようです
・コンデンサの容量誤差や温度特性に問題があるかも、と心配しましたが、
・それでも作業後1週間の連続テストで雑音は再発しなかったです。
・指針と目盛りのズレ、同調点ズレも発生しないのでとりあえずOKとしました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【OSC調整】
・90MHz受信 → TCo調整 → Sメーター最大
・76MHz受信 → Lo 調整 → Sメーター最大
【RF調整】
・90MHz受信 → TCA,TCR1,TCR2 調整 → Sメーター最大
・76MHz受信 → LA,LR1,LR2 調整 → Sメーター最大
・83MHz受信 → IF調整 → Sメーター最大
【レシオ検波調整】
・音声出力 → WaveSpectra
・83MHz受信 → T101 上部コア調整 → Tメータ中点確認
・83MHz受信 → T101 下部コア調整 → 高調波歪最小
【FM Sメーター調整】
・83MHz70dB受信 → VR101 調整 → Sメーター振れ最大
【MPX調整】
・音声出力 → WaveSpectra
・TP(R189)→ 周波数カウンタ接続
・83MHz,無変調信号受信 → VR103 調整 → 76kHz
・83MHz,L/R信号受信 → VR102 調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【AM調整】
・ 600kHz受信 → T102,T103 調整 → Sメーター最大
・1400kHz受信 → AM1,AM2 調整 → Sメーター最大
■試聴----------------------------------------------------------------
・落ち着いた緑色照明に浮かぶ二つのメーターと周波数を刻んだ目盛り
・その前で鮮やかに浮き上がるオレンジ色の指針
・そしてSTEREO インジケーターが赤く点灯すると絶妙のバランス感が生まれます
・この独特の雰囲気がアナログチューナーの魅力です
・ウッドケースがあればさらに高級感がアップしそう
・約50年前の製品と思うと感慨深いものがあります