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KENWOOD L-01T 修理調整記録8

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 謹賀新年 2021年が良い年になりますように!
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 ・2020年11月、L-01Tの修理調整作業を承りました。
 ・以下、作業報告です。

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■製品情報------------------------------------------------------------

 ・オーディオ懐古録 KENWOOD L-01T ¥160,000(1979年)
 ・オーディオの足跡 KENWOOD L-01T ¥160,000(1979年頃)
 ・Hifi engine KENWOOD L-01T FM Stereo Tuner (1980-82)

L01t02_20210103131701L01t10

■動作確認------------------------------------------------------------

 ・ボディに残ったガムテープ痕が痛々しい、、
 ・さて、FMアンテナを接続して電源オン。
 ・オレンジ色照明点灯、球切れなし。いつ見ても惚れ惚れする美しさ。
 ・各種インジケーターランプも点灯。
 ・名古屋地区のFM放送局を受信チェック。
 ・僅かな周波数ズレがあるもののFM放送受信OK。STEREOランプ点灯。
 ・WIDE/NARROW切換、NORMAL/DIRECT切換OK、MUTING動作OK。
 ・気になる点は、、
 ・MUTINGオフ時、83MHzより低い周波数域で指針移動に伴う激しい「ガリ音」発生。
 ・ガリ音に伴ってSメーターが左右に激しく振れる。
 ・Tメーターが中点より右側に振れない。
 ・Lchの音が時々途切れる。Rchは問題なし。
 ・両chとも時々「チリチリッ」とノイズが発生する。
 ・チリチリノイズはマルチパスH端子からも聞こえる。

■修理履歴------------------------------------------------------------

 ・KENWOODサービスによる修理履歴シールが底板に3枚貼ってありました。
 ・1999年01月18日 電源???(判読不能)
 ・1999年05月21日 ナローSCAフィルター改造
 ・2004年02月17日 756??(判読不能)

 ※ナローSCAフィルター改造って?
 ※これはひょっとすると、KENWOODサービスによるVICS対策が施された個体かも!
 ※俄然ヤル気が湧いてきました!!

■内部確認------------------------------------------------------------

 ・ボディを開けると基板上にはびっしりと埃が堆積している。
 ・まずはエアーで飛ばしながら基板の清掃。
 ・フロントパネルの照明電球がいつくか修理済み。
 ・電源基板で劣化した電解コンデンサーがいくつか気になる。
 ・AF回路 C111,C112(220uF/10v)がOSコンに交換済み。
 ・AF回路 Q27(2SC1384)がグラグラ状態 → ハンダ面にクラック確認
 ・ハンダ面に空中配線(ダイオード+600kΩ抵抗)の追加部品を発見!
 ・この追加部品がSCAフィルタ改造か?

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■修理記録:バリコン軸清掃--------------------------------------------

 ・指針を移動するときに発生するガリガリノイズの対策です。
 ・原因は回転するバリコン軸と軸受け部の接触不良です。
 ・接触部の固化した古いグリスを爪楊枝で丹念に除去し、導通グリスを薄く塗布。
 ・76MHz~90MHz区間を何度も往復させて新しいグリスを馴染ませる。
 ・この作業によって83MHz以下のガリガリノイズが解消しました。

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■修理記録:電源基板電解コンデンサー交換-------------------------------

 ・電源基板で劣化が気になった電解コンデンサー2個交換。
 ・C1,C2(10uF/25v) → 10uF/50v 交換


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■修理記録:AF回路ハンダクラック修正-----------------------------------

 ・AF回路 Q27(2SC1384)がグラグラ状態 → ハンダ面にクラック確認。
 ・接触不良を起こしており、これがLchの音が時々途切れる原因です。
 ・ハンダを盛り直して修正。
 ・ついでにRch側も同様に処置。

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■修理記録:チリチリノイズ---------------------------------------------

 ・LA1231N-6pinクアドラチュア検波の音を直接聞くとノイズなし。
 ・このチリチリノイズは聞き覚えあり。修理調整記録3 と同じです。
https://bluess.cocolog-nifty.com/labo/2016/05/kenwood-l-01t-3.html
 ・このときの原因は FL1(L79-0099-05:LPF 3.5MHz)でした。
 ・L-01TではFL1+FL2の組み合わせによってBPFを形成しています。
 ・FL1(L79-0099-05:LPF 3.5MHz)+FL2(L79-0100-05 :HPF 0.9MHz)
 ・一方 KT1000やKT-1100では FL1(L79-0120-05:BPF)1個でBPFになっています。
 ・[L79-0099-05:LPF3.5MHz]+[L79-0100-05:HPF0.9MHz]=[L79-0120-05:BPF]
 ・つまりL-01TのFL1+FL2は(L79-0120-05:BPF)で代替可能ということ。
 ・ジャンク箱で同型部品を探したところ KT-900の基板に同型フィルターを発見。
  ・KT900 FL1(L79-0120-05)
 ・FL1(L79-0099-05) → (L79-0120-05)交換。サイズ、端子位置もピッタリ同じです。
 ・これによってFL2は不要になるはずです。
 ・ただFL2を残したままでも問題なさそうなのでこのままにしておきます。

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■調整記録------------------------------------------------------------

【FMフロントエンド】
 ・OSC調整83MHz → OSC coil
 ・トラッキング調整76MHz → L1,L2,L3,L4,L5,L6
 ・トラッキング調整90MHz → TC1,TC2,TC3,TC4,TC5,TC6
 ・IFT調整 → L17,L19,L21 → Sメーター最大
【Tメーター調整】
 ・LA1231Nクアドラチュア検波調整 → L6調整 → Tメーター中央
【ミューティング調整】
 ・83MHz 20dB受信 → VR2調整 → MUTING作動
【WIDE GAIN調整】
 ・Narrow受信 → Sメーターレベル記録
 ・Wide受信 → VR1調整 → Narrow受信時と同レベルに
【Sメーター調整】
 ・83MHz受信 → VR3調整
【第2IF調整】
 ・83MHz受信 → L8調整 → TP=1.96MHz ※実測1.65MHz
【VCO調整】
 ・83MHz無変調 → VR6調整 → TP(R117) → 76kHz
【Pilotキャンセル】
 ・83MHz ST受信 → VR7,L16調整 → 19kHz漏れ最小へ
【ステレオ歪調整】
 ・83MHzST受信 → フロントエンドL21調整 → 高調波歪最小へ
【SCA調整】
 ※今回はノータッチ
 ※詳細は後述
【ノイズアンプ調整】
 ・離調状態 → VR4調整 → Q6(2SC2785)エミッタ電圧 → 8V
【SUB調整】
 ・83MHz L-R信号受信 → VR8調整 → Lch最大
 ・同上  → VR9調整 → RchレベルをLchと同じに揃える
【セパレーション調整】
 ・83MHzST受信 → Wide VR10→Rch、VR11→Lch ※実測値:概ね60dB前後
 ・83MHzST受信 → Narrow VR1(X13-2690基板) ※実測値:概ね50dB前後

L01t00

■研究:ナローSCAフィルター改造---------------------------------------

 ・今回のL-01TはKENWOODサービスによるVICSノイズ対策が施されていました。
 ・本体底板の修理記録シール「1999年05月21日 ナローSCAフィルター改造」
 ・基板ハンダ面に空中配線で追加された部品
 ・[D12:アノード] → 600kΩ抵抗 → ダイオード → [D36:カソード]
 ・この改造による変更点は、、
  ・NARROWスイッチに連動してD36カソード側に+1.6vがかかる
  ・その結果、IC9-1pin電圧が + → - に変化する
  ・SCAフィルター回路のスイッチオン → VICSノイズ解消
 ・実際の動作は、
  ・IF BAND=WIDE時 → 盛大なVICSノイズ発生
  ・IF BAND=NARROW時→ VICSノイズ解消する!
 ・D36カソード電圧を最大にする発想は間違ってなかったようです。
 ・それにしてもこんな強引な方法があったのか、ちょっと驚き、、
 ・後継機 KT-1000では基板上でSCAキャンセル調整が出来るようになっています。

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【参考:SCA調整】未改造L-01Tでの調整法
 ・MEGURO DARC ENCODER MSG-2170でFM多重信号を生成
  ※L&R=80%、Pilot=10%、DARC=10%
 ・L10,L11調整 → D36カソード側DC電圧最大へ
 ・VR5調整 → IC9-1pin電圧測定 → +電圧が-電圧に変わる位置※
  ※+7.5V→安定して-6.6Vを示す位置
 ・IC9-1pin電圧が+→-に変わることでSCAフィルター回路のスイッチオン

■試聴----------------------------------------------------------------

 ・今回は初めてVICS対策が施されたL-01Tを見ることができました。
 ・追加部品の配置やその効果まで確認出来て収穫大です。
 ・NHK-FMでVICSノイズが気になる場合は NARROWに切り換えてお聞きください。
 ・セパレーション値は多少悪化しますがVICSノイズは解消します。

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