・2020年10月、初体験機種の修理調整を承りました。
・「ハーマンカードン サイテーション23」です。
・この機種のことは今回初めて知りました。
・チューナーの世界、まだまだ知らない機種があって面白いです!
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 harman/kardon Citation23 ¥122,000(1990年頃)
・Hifi Engine Harman Kardon Citation 23 Active Tracking Tuner (1987)
■不具合情報----------------------------------------------------------
・依頼者様から教えていただいた不具合情報です。
・FMは問題なさそう
・AMがノイズ音ばかりで良く聞こえない。
・選局ツマミにクラックが入っている。
・液晶パネルのバックライト切れ → 補修済み
・問題個所はAM部のようです。
■動作確認------------------------------------------------------------
・薄型ボディのシンセチューナーですが、日本メーカーの製品とは一味違う外観。
・特にリモコン受光部をむき出しにするデザインはむしろ新鮮。
・ON/OFF の状況がはっきり判別できるプッシュボタンもどこかアメリカ的。
・Active Tracking Tuner どんな意味が込められているのか??
・さてFMアンテナを接続して電源オン。
・液晶の周波数表示部が点灯、76.0MHzを示す。
・選局ツマミが楕円を描くように回転する。
・回転軸(シャフト)が歪んでいる?。
・「Seek」ボタンを押すとオート選局モードになる。
・チューニングツマミを左右に操作すると名古屋地区のFM局を次々に受信。
・Sメーターインジケーター点灯しSTEREOランプも点灯。
・手持ちの適当なAMループアンテナでAM受信もOK。
・特に問題なさそうです。
・プリセットメモリーは登録しても内容を保持できない。
■内部確認------------------------------------------------------------
・底面に点検口がありません。部品交換は面倒です。
・フロントエンド(FE101)のカバーが外せません。
・隙間から内部を覗いてみると TDK の文字が見えました。
・調整用コイルが5個並んでいますがトリマコンデンサは見当たりません。
・これは調整が難しい。
・LA1235×2個、セラミックフィルター5個
・LA3410 PLL Stereo Demodulator
・BA1332 PLL Stereo Demodulator ※19kHz用
・液晶のバックライト電球は交換済みのようです。
■回路研究------------------------------------------------------------
・海外サイトでサービスマニュアルと回路図を入手しました。
・回路説明を読んでみると FINE TUNING は Super Narrow回路でした。
【FINE TUNING オフ時】
FE101 → CF201 → IFamp → CF202 → IFamp → CF203 → IC201
【FINE TUNING オン時】
FE101 → CF201 → IFamp → CF202 → IFamp → CF204 → IFamp → CF205 → IC202 → VCO → IC201
・説明書には「強力な近接局がある場合にFINE TUNINGモードにする」と指示があります。
・Narrow回路で選択度を高めた上で10.7MHz VCOによる補正をかけています。
・Active Tracking Tuner と称するのはこの機能を指しているようです。
・ただ、通常使用では FINE TUNING オフ( WIDE受信)の方が音質有利です。
■修理記録------------------------------------------------------------
・メモリー登録内容がまったく保持できないのでキャパシタを交換しました。
・C702(0.047uF/5.5v) → 0.10uF/5.5v
・基板を裏返す作業は結構面倒です。
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧確認】
・フロントエンド VT端子 → 電圧計セット
・90MHz → 23.5V ※確認のみ
・76MHz → 5.3V ※確認のみ
※調整箇所ははL5のみ。今回はノータッチ。
【FM同調点調整】
・IC201(LA1235)7pin~10pin → 電圧計セット ※Tメーター電圧
・83MHz受信 → T201(A)正面から見て右側コア調整 → 電圧ゼロ
・83MHz受信 → T201(B)正面から見て左側コア調整 → 高調波歪最小
【フロントエンド調整】
・IC201(LA1235)13pin → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83MHz受信 → フロントエンド内L1~L4調整 → 電圧最大
※コイル調整は難しいのでノータッチ
・83MHz受信 → フロントエンド内T1調整 → 電圧最大
【IF電圧調整】
・83MHz30dB受信 → VR201調整 → 表示パネルのTUNEDインジケーター点灯位置
【FINE TUNING調整】
・FINE TUNING → ON
・周波数調整ツマミ → 中央位置へ
・83MHz受信 → L203調整 → <+ -> の点灯位置を左右対称に
・83MHz受信 → TC201調整 → 受信可能範囲の中間位置へ
【Sメーター調整】
・FINE TUNING OFF → VR202調整 → Sメーター点灯調整
・FINE TUNING ON → VR203調整 → Sメーター点灯調整
【VCO調整】
・TP3(C332 10uF/16v +端子)→ 周波数カウンタ接続
・83MHz 無変調受信 → VR302調整 → 19kHz
【STEREOランプ点灯調整】
・83MHz30dBST信号受信 → VR352調整 → STEREOインジケーター点灯位置へ
【Pilotキャンセル調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHzST信号受信 → VR303,LPF301調整 → 19kHz漏れ信号最小
【セパレーション調整】
・FINE TUNING OFF
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz L/R信号受信 → VR301調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【AM VT電圧】
・TP2(R251) → 電圧計セット
・ 522kHz → 1.5V±0.5V ※確認のみ
・1629kHz → 20V±5v ※確認のみ
【AM受信調整】
・1400kHz受信 → T251,T252調整 → Sメーター最大
・1400kHz受信 → TC251調整 → Sメーター最大
・ 600kHz受信 → L251調整 → Sメーター最大
・VR257 Sメーター点灯調整
■試聴----------------------------------------------------------------
・FM/AMともに受信感度が大幅に向上しました。
・同シリーズのアンプとセットで揃えるとカッコいいでしょうね。