・2020年9月、KT-3030の修理を承りました。
・不定期に雑音が入ったり受信が途切れたりするそうです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 KENWOOD KT-3030 ¥120,000(1984年頃)
・オーディオ懐古録 KENWOOD KT-3030 ¥120,000
・KENWOODカタログ(1985年1月版) KT-3030 / KT-2020 / KT-1010II / KT-880
・Hifi Engine KENWOOD KT-1100SD FM Stereo Tuner (1984)
■動作確認------------------------------------------------------------
・名古屋地区のFM放送局はすべて受信OK。周波数ズレなし。
・SIGNALメーター点灯。Tメーター動作OK。
・DEVIATIONメーター点灯。STEREOランプ点灯。
・RF SELECTOR DIRECT/DISTANCE切替OK。
・IF BAND 切替スライドVRに伴ってWide/Narrow表示切替OK。
・MUTING動作OK、REC CALトーンOK。
・固定/可変出力とも出音確認。可変VRにガリ無し。
・マルチパスH端子からもFM音声確認。
・当方での動作確認では特に問題なさそうです。
■不具合状況----------------------------------------------------------
・実は依頼者様から不具合発生時の録音データをお送りいただきました。
・エアチェック中に発生した不具合状況が録音されています。
・聞いてみると
・正常受信中に突然「ボツッボツッ」と雑音が混入するようになる
・その後、突然音声が途切れた、、
・しばらくして音声が回復するが、今度は「ザーッ」という酷い雑音が混入
・何とか音声は聞き取れるがSTEREOになっていない模様
・留守録データなので不具合発生時の機器の挙動が分かりません。
・例えばSメーターやTメーターの動き方、STEREOランプの点灯状況などが不明です。
・途中で音声が途切れたとき、もしかしたら電源が落ちたのかもしれません。
・約2週間に渡って不具合発生を待ちましたが、当方では再現しませんでした。
・たぶんフロントエンドのトリマコンデンサが怪しいかも??
■調整記録:トリマコンデンサ交換---------------------------------------
・雑音発生を待っていても仕方ないと思い、過去の事例に倣って各部調整してみました。
・すると、フロントエンドのトリマコンデンサ調整で電圧が安定しないことを発見!
・TC1,3,4,5(白) 11pF
・TC2,6(青) 7pF
・特にTC2とTC3が不安定です。
・対策として全数 青色10pFに交換して再調整しました。
■調整記録------------------------------------------------------------
・輸出機KT-1100SDのサービスマニュアルをベースにして一部アレンジ。
・IF BAND スイッチ記号:(左端)N2 ← N1 ← (中央) → W2 → W1(右端)
【本体設定】
・RF SELECTOR:DISTANCE
・IF BAND:W1(右端位置)
【VT電圧】
・TP1~TP2 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L6調整 → 3.0V ※実測 2.9V
・90MHz → TC6調整 →24.0V ※実測23.6V
【検波調整】
・TP7~TP8 DC電圧計セット
・83MHz(1kHz,100%変調,80dB)受信 → L21調整 → 0.0V ※実測140mV
【RF調整】
・Multipath V端子 DC電圧計セット
・76MHz(1kHz,100%変調,40dB)→ L1~L5調整 → 電圧最大
・90MHz(1kHz,100%変調,40dB)→ TC1~TC5調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・Multipath V端子 DC電圧計セット
・83MHz(1kHz,100%変調,40dB)→ L11,L12調整 → 電圧最大
・83MHz(1kHz,100%変調,40dB)→L14,L18調整 → 電圧最大
【MPX VCO調整】
・TP9に周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調,80dB) → VR12調整 → 76.0kHz
【PILOT CANCEL調整1】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dB)→ VR11調整 → 19kHz信号最小
・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dB)→ L26 調整 → 19kHz信号最小
・左右chのバランス確認
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ L28調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DET】
・83MHz(MONO信号,400Hz,100%変調,80dB)→ VR1調整 → 歪率最小
【歪調整2 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dB)→ VR2調整 → 歪率最小
【歪調整3 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR4調整 → 歪率最小
【歪調整4 STEREO/L】
・83MHz(L信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR3調整 → 歪率最小
【歪調整5 STEREO/SUB】
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR5調整 → 歪率最小
【歪調整6 STEREO/MAIN】
・83MHz(MAIN信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR6調整 → 歪率最小
【歪調整7 STEREO/L】
・83MHz(L信号,10kHz,90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR7調整 → 歪率最小
【歪調整8 W2】
・IF BAND=W2
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR8調整 → 歪率最小
【歪調整9 N1】
・IF BAND=N1
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR9調整 → 歪率最小
【歪調整10 N2】
・IF BAND=N2
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR10調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整1 W1】Super Wide
・IF BAND=W1
・83MHz(R信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR13調整 → Lchもれ最小
・83MHz(L信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR14調整 → Rchもれ最小
【SEPARATION調整2 W2】Wide
・IF BAND=W2
・83MHz(R/L信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR15調整 → もれ最小
【SEPARATION調整3 N1】Narrow
・IF BAND=N1
・83MHz(R/L信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR16調整 → もれ最小
【SEPARATION調整4 N2】Super Narrow
・IF BAND=N2
・83MHz(R/L信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR17調整 → もれ最小
【SIGNAL METER調整】
・83MHz(無変調,70dB)→ VR18調整 → 7番目のドット(最上段)点灯
【TUNING METER調整】
・83MHz(MAIN信号,1kHz100%変調)→ 2階基板VR2調整 → ※
※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【MODULATION METER調整】
・83MHz(MAIN信号,1kHz100%変調)→ 2階基板VR1調整 → ※
※MODURATIONメーター100%位置で点灯
■試聴----------------------------------------------------------------
・トリマコンデンサ交換によって受信感度が安定しました。
・交換後の動作確認でも不具合は発生しません。
・トリマコンデンサ劣化による接触不良が原因だったと思いますが確証はありません。
・この状態でお返ししますので引き続き確認をお願いします。
・症状が再発した場合はまたご連絡ください。