・2020年2月、具合が悪いという555ESXが届きました。
・FM放送の音が歪んでいるそうです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SONY ST-S555ESX ¥74,000(1986年発売)
・オーディオ懐古録 SONY ST-S555ESX FM STEREO/FM AM TUNER ¥74,000(1986)
・Hifi Engine SONY ST-S800ES AM/FM Stereo Tuner (1988)
■動作確認------------------------------------------------------------
・外観は目立つキズも無くとても状態が良い。
・FMアンテナを接続して電源オン。
・表示部は文字痩せ、文字欠けなく輝度も十分です。
・オート選局で名古屋地区のFM放送局をすべて受信しました。
・周波数ズレなし。STEREOランプも点灯する。
・WIDE/NARROW切換、MUTING切換、REC CALトーンなど動作OK。
・FM受信の一連の動作は正常ですが、出てくる音声がかなり歪んでいる感じ。
・AMは手持ちの適当なループアンテナで名古屋地区のAM放送局を確認。
・AMもオート選局で正常に受信できました。
・AMは出てくる音は正常です。歪などの違和感なし。
・問題はFM受信時の音声です。MPX回路が怪しそう。
■修理記録:電源回路--------------------------------------------------
・まず気になったのが電源回路の大型電解コンデンサー C907:2200uF/35v
・今にも破裂しそうなほど頭頂部が膨らんでいます。
【電圧チェック(規定値)】
・IC902(NJM7815) +22.6v(+22.5v)→ +15.3v(+15.5v)
・IC903(NJM79M15) -21.2v(-21.5v)→ -15.2v(-15.5v)
・IC318(NJM78L08) +10.2v(+10.0v)→ + 6.3v(+ 8.2v)
・IC319(NJM79L08) -10.3v(-10.6v)→ + 0.6v(- 8.2v)
・MPX回路に供給する±8vがおかしい。特に-8vが出ていない。
・調べたところ、IC319(NJM79L08)の前にあるL303(33mH)の両端抵抗が無限大。
・つまり内部断線しているようなのでこれを手持ちの代替部品に交換。
・続いて破裂しそうな大型電解コンデンサー C907(2200uF/35v)を交換。
・部品取り用に保管している333ESAから大型電解コンデンサー(2200uF/63v)を移植。
・これで電圧異常が解消しました。
■調整記録------------------------------------------------------------
・まずはサービスマニュアルに従って各部調整作業を行いました。
【FM同調点調整】
・IC206:LA1235 7~10pin間 電圧計セット(Sメーター電圧)
・SSG83.0MHz 変調OFF 80dB → IFT208調整 → 電圧0V±20mV ※実測+380mV
【VT電圧調整】
・IC804 10ピン電圧計セット
・90.0MHz → L105調整 → 21.0V±0.2V ※実測20.8V
・76.0MHz → 8.0V±1.0V 確認のみ ※実測7.9V
【RF調整】
・IF BAND=NARROW
・IC206:LA1235 13pin電圧計セット(Sメーター電圧)
・SSG76.0MHz → L101,L102,L103,L104調整 → 電圧最大
・SSG90.0MHz → CT101,CT102,CT103,CT104調整 → 電圧最大
【PLL検波調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING=OFF
・音声出力端子をWaveSpectraで確認
・TP202 電圧計セット
・TP201を短絡 ※IF回路をパス
・SSG83.0MHz 80dB送信 → IFT207調整 → 電圧ゼロ ※調整前実測+128mV
・SSG83.0MHz 80dB送信 → CT201 調整 → 高調波歪最小
・SSG83.0MHz 80dB送信 → IFT205調整 → 高調波歪最小
・TP201を開放
【IF歪調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING = OFF
・IC206:LA1235 13pin電圧計セット(Sメーター電圧)
・RT201、RT202 時計回り一杯に回す
・SSG83.0MHz出力20dBモノラル信号送信
・IFT101調整 → 電圧最大 ※IFT101フロントエンド内
・IFT202調整 → 電圧最大
・RT201、RT202 回転範囲の中央位置に回す
・SSG83.0MHz出力80dBモノラル信号送信
・IFT204調整 → 歪最小へ
・SSG83.0MHz出力80dBステレオ信号送信
・IFT203調整 → 歪最小へ
【MUTINGレベル調整】
・MUTING = ON
・IF BAND = WIDE
・SSG83.0MHz 出力25dB → RT204調整 → MUTING作動
・IF BAND = NARROW
・SSG83.0MHz 出力25dB → RT203調整 → MUTING作動
【Sメーター調整】
・IF BAND = WIDE
・SSG83.0MHz無変調80dB → RT206調整 → エレメント全点灯位置
【VCO調整1】
・TP302 周波数カウンタ接続
・SSG83.0MHz無変調 → RT301調整 → 76kHz±100Hz
【VCO調整2】
・IC302 9ピン電圧計セット
・SSG83.0MHz パイロット信号のみ → RT305調整 → 0V±0.5V ※調整難しい
【パイロットキャンセル】
・SSG83.0MHzステレオ変調 → RT302、L301 19kHz信号漏れ最小
・左右chのバランス確認
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・SSG83.0MHzステレオ変調 → RT303 R→L ※調整後実測61.8dB
・SSG83.0MHzステレオ変調 → RT304 L→R ※調整後実測60.2dB
【AM VT電圧調整】
・IC804 10ピン(代用 JW41)電圧計セット
・1602kHz → OSCトリマ調整 → 22.0V±2.0V ※実測22.6V
・ 531kHz → OSCコア調整 → 1.8V±0.1V 確認のみ ※実測5.2V
【AM RF調整】
・SSG 603kHz → RFコア調整 → Sメーター最大
・SSG1395kHz → RFトリマ調整 → Sメーター最大
・SSG 999kHz → IFT401調整 → Sメーター最大
【CAL TONE】
Peak Levelに対して -6dB 392Hzの波形が出ていました。
■試聴---------------------------------------------------------------
・不具合原因はMPX回路に正常な電圧が供給されていなかったことでした。
・各部再調整によって良好な性能を取り戻したと思います。