・2019年10月、サンスイ製チューナーの修理調整作業を承りました。
・以下、ちょっと難航した作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SANSUI TU-α707EXTRA ¥54,700(1989年頃)
・Hifi engine SANSUI TU-X711 Digital Synthesizer Tuner (1989-90)
・Hifi engine SANSUI TU-X701 Digital Synthesizer Tuner (1987-90)
【輸出機】
※TU-X701:TU-α707/707i
※TU-X711:TU-α707EXTRA/TU-α707R
【国内機】
※TU-S707X ¥54,800(1984年頃)
※TU-S707XDECADE¥54,800(1985年頃)
※TU-α707 ¥59,800(1986年頃)
※TU-α707i ¥59,800(1987年頃)
※TU-α707EXTRA ¥54,700(1989年頃)
※TU-α707R ¥53,800(1991年頃)
■動作確認-------------------------------------------------------------
・電源オン、周波数など表示部点灯。文字痩せは無さそう。
・しかしFM放送はオート/マニュアル選局ともまったく受信しない。
・シグナルメーターは全く点灯せず。局間ノイズも聞こえない。
・AM放送も同じ症状で全く受信できない。
・これは重症か、、動作確認を諦めて電源オフ。
・数日間放置した後に再度電源オンしてみたら、、
・何と、前回の動作確認が嘘のように正常動作します。
・オート/マニュアル選局とも名古屋地区のFM放送を受信。
・シグナルメーターフル点灯、赤いSTEREOランプ点灯。
・IF BAND切換OK、RF切換OK、MUTING動作OK。REC CALトーンOK。
・AM放送は、、、と作業を進めていたら突然受信不能状態に、、、、
・最初の動作確認時と同じ症状でまったく受信しなくなりました。
・オート選局時の周波数変化スピードが極端に遅くなっています。
・原因は何でしょう???
■内部確認-------------------------------------------------------------
・初代α707は発売当時に購入したことがある懐かしい機種です。
・TU-α707(1986)→ TU-α707i(1987)→ TU-α707EXTRA(1989)→ TU-α707R(1991)
・ひろくん様のレポートによればα707シリーズの中身は同じものだそうです。
・基板上の印刷を見るとQ1,R1など同じ番号の部品がいくつもあります。
・これでは区別が付かない、、と思ったら、回路図に詳細説明がありました。
・FM回路(d) ex. dQ1,dR1,dC1,
・AM回路(e) ex. eQ1,eR1,eC1,
・CONTROL回路(f) ex. fQ1,fR1,fC1,
・SELECTOR回路(o) ex. oQ1,oR1,oC1,
・POWER SUPPLY回路(m) ex. mQ1,mR1,mC1,
・う~ん、、しかしこの部品番号はちょっと読みにくい。
【FM回路(d)】
・dVR1:FM STOP
・dVR2:WIDE GAIN
・dVR3:NARROW GAIN
・dVR4:MUTE
・dVR5:FM SIGNAL
・dVR6:MONO DISTOTION
・dVR7L:L SEP
・dVR7R:R SEP
・dVR8:NARROW SEP
・dVR9:REC LEVEL
・dVR10:PILOT CANCEL
【AM回路(e)】
・eVR1:AM SIGNAL
・eVR2:AM STOP
■修理記録:VT電圧異常-------------------------------------------------
【FM VT電圧調整】
・JW3~GND → 電圧計セット
・90MHz(電波無し)→ 22.0V
・76MHz(電波無し)→ 3.3V
※問題点:VT電圧を確認したところ電圧がまったく出ていない
※電源基板に繋がるコネクタ:JP2電圧確認
・+29V → +29.1V
・+12V → +12.6V
・+18V → +21.9V
・+5.6V→ + 5.6V
・-27V → -21.5V
・電源電圧は問題なさそうです。
【基準周波数調整】
・fIC1(LC7217)-1ピン~GND → 周波数カウンタ接続
・fTC1(50pF)調整 → 7.200000MHz±100Hz
※問題点:7.2MHzが確認できない。全くでたらめな数値が表示される。
・fX01(7.2MHz)水晶振動子や fTC1(50pF)周辺を指で触ってみると、、
・何とタッチ具合によって正常動作になることがある!
・どうやら水晶振動子かトリマコンデンサーの故障のようです。
・本機の底面には点検口がありますが、問題個所は点検口から外れた場所にあります。
・部品を交換するにはメイン基板を外して裏返すしかありません。
・fTC1(50pF)交換 → 当たり!
・7.2MHzが出現し、VT電圧が測定できるようになりました。
・その後のFM受信動作が復旧し、安定して受信するようになりました。
・故障原因はfTC1(50pF)でした。
■調整記録--------------------------------------------------------------
・FM回路(d) ex. dQ1,dR1,dC1,
・AM回路(e) ex. eQ1,eR1,eC1,
・CONTROL回路(f) ex. fQ1,fR1,fC1,
・SELECTOR回路(o) ex. oQ1,oR1,oC1,
・POWER SUPPLY回路(m) ex. mQ1,mR1,mC1,
【基準周波数調整】
・IC1(LC7217)-1ピン~GND → 周波数カウンタ接続
・TC1調整 → 7.200000MHz±100Hz
【FM同調点調整】QD検波
・TP1~TP2 → 電圧計セット
・83MHz受信 → T4調整 → 0V±10mV
【FM VT電圧調整】
・JW3~GND → 電圧計セット
・90MHz(電波無し)→ 22.0V ※確認のみ
・76MHz(電波無し)→ 3.3V ※確認のみ
※OSCコイルは調整が難しいのでノータッチ
【FM RF調整】
・IC3(LA1235)-13ピン、またはVR5端子 → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz受信 フロントエンド内RFコイル調整 → 電圧最大
※RFコイルの調整は難しいのでノータッチ
【WIDE/NARROW GAIN調整】
・IC3(LA1235)-13ピン、またはVR5端子 → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・VR2,VR3 → 時計回り一杯に回す
・IF BAND → NARROW
・83MHz,30dB受信 → T2調整 → 電圧最大(電圧を記録)
・IF BAND → WIDE
・83MHz,30dB受信 → T1調整 → NARROW時と同じ電圧に
【PLL検波調整】
・TP3~TP4 → 電圧計セット
・電波入力なし → T5 調整 → 0V
・電波入力なし → TC1調整 → 0V ※微調整
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz,30dB受信 → T6調整 → 0V
・83MHz,70dB受信 → VR6調整 → 高調波歪最小
【Sメーター調整】
・83MHz,15dB受信 → VR5調整 → インジケーター最下段点灯位置へ
【REC LEVEL調整】
・83MHz,60dB受信 → VR9調整 → 信号レベル-6dBに設定
【PILOT CANCEL調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz,60dB,ST受信 → T8,VR10調整 → 19kHz成分最小
【WIDE セパレーション調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz,60dB,Lch受信 → VR7L調整 → Rch漏れ信号最小
・83MHz,60dB,Rch受信 → VR7R調整 → Lch漏れ信号最小
【NARROW セパレーション調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz,60dB,L/R受信 → VR8調整 → 反対ch漏れ信号最小
【AUTO STOPレベル調整】
・83MHz,30dB,ST受信 → VR1調整 → オートサーチ選局で停止する位置
【MUTING レベル調整】
・83MHz,20dB,ST受信 → VR4調整 → STEREOインジケーター点灯、音声が出る位置
【AM VT電圧調整】
・R1~GND → 電圧計セット
・ 531kHz(電波無し)→ T1調整 → 1.5V±10mV
・1629kHz(電波無し)→ TC1調整 → 20V±10mV
【AM RF調整】
・ 603kHz受信 → T3 調整 → Sメーター最大
・1404kHz受信 → TC2調整 → Sメーター最大
【AM Sメーター調整】
・VR1
【AM AUTO STOP調整】
・VR2
■試聴------------------------------------------------------------------
・ちょっと苦戦しましたが、いい音で受信できています。
・今回もいろいろ勉強になりました。