・2019年7月、KT-1100Dの修理調整作業を承りました。
・修理不能としてKENWOODサービスから返却されたそうです。
・学生時代に購入した思い出の品とのこと、これは何とか直したい。
・以下、作業報告です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 KENWOOD KT-1100D ¥74,800(1987年頃)
・KENWOOD チューナーカタログ 1986年11月版
■動作確認------------------------------------------------------------
・フロントパネル、ボディとも目立つキズは無く外装の状態は良い。
・FMアンテナを接続して電源オン。
・表示管点灯。文字欠けや輝度劣化は見られない。
・オート選局で名古屋地区のFM放送局を受信しようとすると、、
・上り方向、下り方向ともに放送周波数を通過して受信できない。
・通過するときにTメーター、Sメーターのセグメントは点灯する。
・しかし中点から右に一本ズレた位置の赤いバーがフル点灯。中点を示さない。
・マニュアル選局では放送周波数±0.2MHz範囲でモノラル受信できる。
・ステレオ受信不可。STEREOインジケータ点灯せず。
・セグメントがフル点灯するのでSメーターとしては機能している模様。
・RF切替(DISTANVCE/DIRECT)OK。
・WIDE/NARROW切替OK。REC CAL OK。メモリボタン動作OK。
・手持ちの適当なAMループアンテナでAM放送の受信確認。
・AM放送はオート選局、マニュアル選局とも正常に受信。
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L14調整 → 3.0V±0.1V ※実測 2.8V
・90MHz → TC1調整 →25.0V±0.1V ※実測23.8V
【検波調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz受信 → L9調整 → 0.0V±10mV
・TP12~TP13 DC電圧計セット
・83MHz受信 → L12調整 → 0.0V±10mV
※VT電圧OK。
※L9調整で電圧ゼロに設定できない → L9故障
■修理記録:検波回路基板交換-------------------------------------------
・L9が載っている検波回路基板を取り外す。
・検波回路基板のハンダ面にアクセスするにはシャーシを分解する必要あります。
・この検波回路基板はKT-7020やKT-V990とほぼ同じものです。
・部品取りして保管していたKT-7020の検波回路基板をそのまま移植。
・組み立てて通電すると、L9調整が出来るようになりました。
・取り外した基板はL9を補修して次回別の修理に利用します。
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L14調整 → 3.0V±0.1V ※実測 2.8V
・90MHz → TC1調整 →25.0V±0.1V ※実測23.8V
【検波調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz受信 → L9調整 → 0.0V±10mV
・TP12~TP13 DC電圧計セット
・83MHz受信 → L12調整 → 0.0V±10mV
【RF調整】
・R67左側 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・83MHz → L1,L4,L7,L18調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・R64右側端子 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・83MHz → L10調整 → 電圧最大
【AUTO STOP=MUTING調整】
・83MHz 30dB → VR1調整
【TUNING METER調整】
・83MHz → 本体左側小基板VR2調整 → ※
※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【SIGNAL METER調整】
・83MHz → 本体左側小基板VR3調整 → ※
※バーグラフの点灯レベル調整
【MPX VCO調整】
・TP14 → 周波数カウンタ接続
・83MHz → VR4調整 → 19.00kHz±50Hz
※ここまで順調に調整できたが、VCO調整で異常発見。
※TP14で19kHzが確認できない。なぜか 1.8kHz を示す??
※VR4を回しても変化なし。
※ステレオ分離できずSTEREOインジケータも点灯しない。
■修理記録:MPX回路調査と修理-----------------------------------------
・LA3350 の各足の電圧測定。
・LA3350 1pin(Vcc) を確認すると何と0v。なんと電圧が全くかかっていない。
・すぐ横にあるIC11(NEC 78L12)3端子レギュレーターから12vが出ていません。
・IC11を指で触ってみると、火傷するほど物凄く熱い!!
・ホント、飛び上がるほど熱かったです、、
・電源を切って回路調査したところ、IC11横の C92(220uF/16v)が短絡していました。
・C92 220uF/16v → 220uF/25v 交換
・これでLA3350が動き出し、TP14で19kHzが観測できるようになりました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【MPX VCO調整】
・TP14 → 周波数カウンタ接続
・83MHz → VR4調整 → 19.00kHz±50Hz
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz SUB信号 → L25調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
・83MHz(MONO,1kHz,80dB)→ VR3:DET調整 → 歪最小
【歪調整2 MONO】
・83MHz(MONO,1kHz,80dB)→ VR4:MONO2調整 → 二次歪最小
【歪調整3 MONO】
・83MHz(MONO,1kHz,80dB)→ VR6:MONO3調整 → 三次歪最小
【歪調整4 STEREO】
・83MHz(L/R,1kHz,80dB)→ VR5調整 → 歪最小
【歪調整5 STEREO】
・83MHz(SUB,1kHz,80dB)→ VR7調整 → 歪率最小
【歪調整6 NARROW】
・83MHz(MAIN信号,1kHz.80dB)→ VR2調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整 WIDE】
・IF BAND:WIDE
・83MHz → VR2調整 → L信号もれ最小
・83MHz → VR3調整 → R信号もれ最小
【SEPARATION調整 NARROW】
・IF BAND:NARROW
・83MHz → VR1調整 → 信号もれ最小
【DEVIATION調整】
・83MHz(mono信号,1kHz,100%変調)→ 本体左側小基板VR4調整 → 100%位置
※次なるトラブル、ステレオ分離後のRchの音量レベルがやや小さい。
■修理記録:オペアンプ交換--------------------------------------------
・次なるトラブルは左右の音量レベルが異なること。
・ステレオ分離後のRchの音量レベルがやや小さい。
・IC9,10 (4560D) → 4558DD → これによって音量レベルが同一になりました。
・ついでに同じ型番のIC5,IC6も交換
・IC5,6 (4560D) → 4558DD 交換
■調整記録------------------------------------------------------------
【AM簡易調整】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・522kHz → L20調整 → 実測 1.5V 確認のみ
・1629kHz→ TC2調整 → 実測 8.0V 確認のみ
・ 729kHz NHK第一放送受信 → L21調整 → Sメーター最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → TC3調整 → Sメーター最大
・1053kHz CBCラジオ受信 → L22調整 → Sメーター最大
■試聴----------------------------------------------------------------
・同調できない原因は検波基板 L9内部コンデンサーの容量抜け。
・STEREOランプが点灯しない原因はMPX回路 C92短絡でした。
・左右の音量レベル差は IC9,10の不調でした。
・再調整によって良い性能を取り戻したと思います。