・2019年7月、555ESXの修理調整作業を承りました。
・ちょっと苦戦した作業の記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SONY ST-S555ESX ¥74,000(1986年発売)
・オーディオ懐古録 SONY ST-S555ESX FM STEREO/FM AM TUNER ¥74,000(1986)
・Hifi Engine SONY ST-S800ES AM/FM Stereo Tuner (1988)
■動作確認------------------------------------------------------------
・左右にサイドウッド無し。ボディやフロントパネルに目立つキズは無い。
・FMアンテナを接続して電源オン。
・表示部は文字痩せ、文字欠けなく輝度も十分。
・さて、オート選局で名古屋地区のFM局を受信しようとしたら、
・上り方向、下り方向ともに周波数が自動で変化しない。
・UP/DOWNボタンを押すたびに0.1MHzずつ周波数が変わる。
・マニュアル選局で名古屋地区のFM放送局を受信。
・STEREOランプ点灯するが、しかし聴感上のステレオ感なし。
・FM受信時に左右の音量が異なる、Lchの音がかなり小さい。
・Sメーターのシグナルバーは常時フル点灯。離調時もフル点灯。
・常時「MULTIPATH」インジケーターが点灯。
・Sメーターとマルチマスメーターを切り換えるタクトスイッチが反応しない。
・AMでもオート選局できない。
・AMでもシグナルインジケーターがフル点灯状態
・AM受信時は左右の音量レベルは同じです。
・これはかなり重症な予感、、、
■内部確認------------------------------------------------------------
・基板を見ると、ほとんどのジャンパー線やリード線に錆び(緑青)が出ている。
・保管状態がかなり悪かったようです。
・過去の調整記録に倣って各部調整した結果、動作確認以外に次々に問題点が判明。
→IF BAND切換スイッチは作動するが、実際は常時NARROW受信状態
→IC206:LA1235 13pin電圧計セット→※Sメーター電圧が確認できない
→IC206:LA1235 7~10pin間 電圧計セット →※FM同調点が確認できない
→IC206 LA1235 11pin=14.8V OK、しかしLA1235が全く機能していない
→19kHzパイロット信号に反応してSTEREランプ点灯するが、左右分離できていない
■修理記録:WIDE/NARROW切換回路----------------------------------------
・WIDE/NARROW切換スイッチは作動してインジケーターも点灯する。
・しかし常時NARROW受信状態です。
・音を聞いてWIDE/NARROWを判別することはほぼ不可能ですが、
・両者の違いは、WaveSpectraで高調波ノイズの形を見て違いで判別しました。
・WIDE/NARROW切替回路を調査したところ、腐食した R227:1kΩを発見。
・テスターで測定すると無限大、これを新品の抵抗1kΩに交換。
・WIDE/NARROW切替で波形の違いが確認できるようになりました。
■修理記録:破損した部品交換------------------------------------------
・上記R227の部品不良があったので、ダイオードやトランジスタを1個ずつチェック。
・その作業中、D210、D627 の足にテスター棒の先端を当てたところ、、
・なんと、ダイオードの本体ガラス部分が割れてしまいました。
・速攻で交換しましたが、劣化によって部品はかなり脆くなっているようです。
■修理記録:LA1235交換-------------------------------------------------
・本機には2個のLA1235が使われています。用途は
・IC206:IFアンプ、Sメーター駆動、ミューティング
・IC207:IFアンプ、マルチパス検出
・調査の結果、IC206 LA1235が全く機能していません。
・新品の LA1235 を入手して交換したところ、、
→オート選局できるようになった
→FM同調点の調整ができるようになった
→Sメーター電圧が確認できるようになった
・ついでにIC207も交換しましたがこちらは効果なし、つまりIC207は正常でした。
■修理記録:メーター切換スイッチ--------------------------------------
・Sメーターとマルチパスメーターの切換ボタンが動作しない。
・これはフロントパネルのタクトスイッチ不良と思い、サクッと新品スイッチに交換。
・ところが、、やはり切換できません。
・これはタクトスイッチ故障ではなく、切換回路自体の問題のようです。
・回路図を頼りにスイッチ回路を追うと、IC602:MMB84013Bの電圧変化がおかしい。
・IC602:MB84013B、回路図ではHD14013BP。
・ネット通販で 4013を探したところTC4013BPを入手できたので交換。
・IC602:MB84013B → TC4013BP
・これによってSメーターとマルチパスメーターの切換と動作が正常になりました。
・両者のインジケーターも正常に切り替わって点灯します。
■修理記録:ステレオ分離----------------------------------------------
・IC301:uPC1223Cは38kHzスイッチング信号抽出だけを担っています。
・本機のステレオ分離回路は、ロジックICが多数組み合わされた複雑な構成です。
・たぶんこの回路が後継機333ESシリーズの CXA1064(LA3450)に集積されたと想像します。
・IC301:uPC1223C
・IC302:HD14046BP
・IC305:MB84027B
・IC306:uPD4030BC(型番読み取り不能のため、過去の修理器の型番を記載)
・IC307:uPD4030BC( 同上 )
・IC315:LC4066B ( 同上 )
・IC316:LC4066B ( 同上 )
・IC317:LC4066B ( 同上 )
・各ICに供給される電源電圧に異常なし。
・IC各足の電圧測定の結果、怪しそうなIC306とIC307を交換。
・IC306:uPD4030BC → TC4030BP
・IC307:uPD4030BC → TC4030BP
・この結果、モノラル受信時の左右音声が同レベルになりました。
・しかしまだステレオ分離できず。
・続いて電圧変化がおかしいIC304交換。
・IC304:MB84027B → TC4027BP
・当たり! これでステレオ分離が正常に出来るようになりました。
・結局、MPX回路で壊れていたロジックICは3個(IC304,306,307)でした。
■備忘録:NEC uPD4030BC同等品------------------------------------------
・NEC uPD4030BC
・沖 MSM4030BRS
・JRC NJU4030B
・東芝 TC4030BP
・松下 MN4030B
・三菱 M4030BP
・ローム BU4030B
・RCA CD4030B
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM同調点調整】
・IC206:LA1235 7~10pin間 電圧計セット
・SSG83.0MHz 変調OFF 80dB → IFT208調整 → 電圧0V±20mV
【VT電圧調整】
・IC804 10ピン電圧計セット
・90.0MHz → L105調整 → 21.0V±0.2V
・76.0MHz → 8.0V±1.0V 確認のみ
【RF調整】
・IF BAND=NARROW
・IC206:LA1235 13pin電圧計セット(Sメーター電圧)
・SSG76.0MHz → L101,L102,L103,L104調整 → 電圧最大
・SSG90.0MHz → CT101,CT102,CT103,CT104調整 → 電圧最大
【PLL検波調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING=OFF
・音声出力端子をWaveSpectraで確認
・TP202 電圧計セット
・TP201を短絡 ※IF回路をパス
・SSG83.0MHz 80dB送信 → IFT207調整 → 電圧ゼロ
・SSG83.0MHz 80dB送信 → CT201 調整 → 高調波歪最小
・SSG83.0MHz 80dB送信 → IFT205調整 → 高調波歪最小
・TP201を開放
【IF歪調整】
・IF BAND = WIDE
・MUTING = OFF
・IC206:LA1235 13pin電圧計セット(Sメーター電圧)
・RT201、RT202 時計回り一杯に回す
・SSG83.0MHz出力20dBモノラル信号送信
・IFT101調整 → 電圧最大 ※IFT101フロントエンド内
・IFT202調整 → 電圧最大
・RT201、RT202 回転範囲の中央位置に回す
・SSG83.0MHz出力80dBモノラル信号送信
・IFT204調整 → 歪最小へ
・SSG83.0MHz出力80dBステレオ信号送信
・IFT203調整 → 歪最小へ
【MUTINGレベル調整】
・MUTING = ON
・IF BAND = WIDE
・SSG83.0MHz 出力25dB → RT204調整 → MUTING作動
・IF BAND = NARROW
・SSG83.0MHz 出力25dB → RT203調整 → MUTING作動
【Sメーター調整】
・IF BAND = WIDE
・SSG83.0MHz無変調80dB → RT206調整 → エレメント全点灯位置
【VCO調整1】
・TP302 周波数カウンタ接続
・SSG83.0MHz無変調 → RT301調整 → 76kHz±100Hz
【VCO調整2】
・IC302 9ピン電圧計セット
・SSG83.0MHz パイロット信号のみ → RT305調整 → 0V±0.5V ※調整難しい
【パイロットキャンセル】
・SSG83.0MHzステレオ変調 → RT302、L301 19kHz信号漏れ最小
・左右chのバランス確認
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・SSG83.0MHzステレオ変調 → RT303 R→L
・SSG83.0MHzステレオ変調 → RT304 L→R
【AM VT電圧調整】
・IC804 10ピン(代用 JW41)電圧計セット
・1602kHz → OSCトリマ調整 → 22.0V±2.0V
・ 531kHz → OSCコア調整 → 1.8V±0.1V 確認のみ
【AM RF調整】
・SSG 603kHz → RFコア調整 → Sメーター最大
・SSG1395kHz → RFトリマ調整 → Sメーター最大
・SSG 999kHz → IFT401調整 → Sメーター最大
【CAL TONE】
Peak Levelに対して -4dB 392Hzの波形が出ていました。
■試聴---------------------------------------------------------------
・ICがいくつも壊れていたり、ジャンパ線や部品のリード線が錆びていたり、、
・この個体はかなり劣悪(高温多湿など)な環境で保管されていたようです。
・とりあえず復旧しましたが、未交換の部品もかなりダメージを受けているかも?
・ちょっと心配です。