・2019年3月初め、CT-800の修理調整作業を承りました。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 YAMAHA CT-800 ¥68,000(1973年頃)
・取扱説明書 日本語版 PDF形式
・Hifi Engine Yamaha CT-800 FM/AM Stereo Tuner
・Hifi Engine Yamaha CR-800 FM/AM Stereo Receiver (1974)
※CT-800に関する資料は見つかりませんが、チューナー基板はCR-800とほぼ同じです。
※CR-800の回路図や調整方法がそのまま使えます。
■動作確認------------------------------------------------------------
・フロントパネル下部にちょっと目立つ擦り傷。
・白木のウッドボディは年季が入って深い味わいを感じる。
・背面端子類も綺麗な状態、これは清掃済みでしょうか。
・FMアンテナを接続して動作確認開始。
・電源オン、周波数指針部と二つのメーター照明点灯。球切れなし。
・多少の周波数ズレがあるもの、名古屋地区のFM局を受信。
・メーター指針の塗装が剥げている。
・指針を左右に移動するとき、動き方がちょっとぎこちない。
・84MHzを超える辺りで「ガタン!」と何かを乗り越えるような異常な感触?
・指針の移動を繰り返していたら、突然、指針がまったく動かなくなった、、
・これはバリコン糸が切れたか、外れたか??
・十分な動作確認もできないまま内部確認へ。
■修理記録:糸の張り替え---------------------------------------------
・やはり糸が切れていました。
・切れた糸は黄色くて固い素材、これは工事現場でよく見かける「水糸」です。
・それと過去に撮影したCT-800の写真と比較するとプーリーへの巻き方が違う。
・これは明らかに糸の交換歴がありますね。
・とにかく糸を交換しないことには何も始まらない、、、
・保管している部品取り用ジャンクチューナーから糸を外してCT-800に移植。
・指針移動のぎこちなさが解消され、全区間スムーズに動くようになりました。
■動作確認(再)------------------------------------------------------
・FM受信確認の続き。
・Sメーター、Tメーターの動作OK。
・メーター指針の塗装がボロボロ状態が気になる。
・STEREOランプ点灯、その他インジケーターも点灯。
・固定、可変端子ともOK。
・マルチパスH端子からも音声が聞こえる。
・背面のAMバーアンテナで名古屋地区のAM局を受信。
・指針と目盛り大幅なズレ。729kHzのNHK放送を目盛り900kHz付近で受信。
・AM受信時のSメーターがほとんど振れない。
・AM音声がちょっと小さい。
■内部確認------------------------------------------------------------
・FM4連、AM3連バリコン搭載フロントエンド
・FM基板はオリジナル状態のようです。
・ただしAM基板の電解コンデンサとトランジスタはすべて交換済み。
■修理記録:AM回路----------------------------------------------------
・AM基板のトランジスタはすべて2SC1815。
・CR-800のAM回路図で本来のトランジスタ型番を確認。
・TR301,TR303,TR306,TR307 → 2SC460
・TR302,TR304,TR305 → 2SC454
・本来の 2SC460,2SC454 がすべて2SC1815に交換済み。
・対策として上記トランジスターをすべて 2SC1675 に再交換しました。
・以下の再調整によってSメーターが振れて音量も多少改善しました。
■修理記録:指針再塗装------------------------------------------------
・Tメーター、Sメーターともに指針の塗装がボロボロ状態です。
・メーターカバーを慎重に分解。
・養生には「付箋」をジャストサイズに切って張り付けると便利です。
・ボロボロになった塗装片をデザインカッターの先端で慎重に剥離する。
・蛍光オレンジ色の水性塗料で再塗装。
・とても良い感じに仕上がりました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【電源回路】
・TP 12v → 電圧計セット
・VR 12v → 調整 → 12V
【レシオ検波調整】
・フロントエンドとの接続端子にSSGより10.7MHz信号注入
・T101(上段)調整 → Tメーター中点
【フロントエンドOSC調整】
・76MHz 90dB 受信 → Lo調整 → Sメーター最大
・90MHz 90dB 受信 → TCo調整 → Sメーター最大
【フロントエンドRF調整】
・76MHz 90dB 受信 → LA,LR1,LR2調整 → Sメーター最大
・90MHz 90dB 受信 → TCA,TCR1,TCR2調整 → Sメーター最大
・83MHz 90dB 受信 → IF調整 → Sメーター最大
【モノラル歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 90dB 受信 → T101(下段)調整 → 歪最小
【Sメーター調整】
・VR102 Sメーター振れ調整
【ミューティング調整】
・VR101 MUTING動作レベル設定
【ステレオ歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 90dB 受信 → T104 → 歪最小
・83MHz 1kHz 90dB 受信 → フロントエンドIF調整 → 歪最小
【38kHz調整】
・83MHz SUB信号 80dB 受信 → T102調整 → Lchレベル最大
※位相に注意。間違えるとセパレーションが逆になる。
【パイロットキャンセル調整】
・83MHz ST変調 → T105調整 → Lch漏れ信号最小
・83MHz ST変調 → T106調整 → Lch漏れ信号最小
【セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → VR103調整 → Lch漏れ信号最小
・83MHz ST変調 80dB 受信 → VR104調整 → Rch漏れ信号最小
【AM OSC調整】
・ 600kHz 受信 → T302調整 → Sメーター最大
・1400kHz 受信 → VC7 調整 → Sメーター最大
【AM RF調整】
・ 600kHz 受信 → バーアンテナ、T301調整 → Sメーター最大
・1400kHz 受信 → VC5,VC6調整 → Sメーター最大
■試聴----------------------------------------------------------------
・AM受信時の音量がちょっと小さ目なのが難点ですが、、
・FM受信は問題なさそうです。
・メーター指針の再塗装によって老朽機の感じが無くなりました。
・白木のウッドケースがイイ雰囲気ですね。