・20018年12月初め、KT-8005のジャンク機を入手しました。
・サイドウッドの突板が剥がれるなど外装がボロボロの状態です。
・何と言っても当時の最上位機、年末年始休暇で整備しました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-8005 ¥70,000(1973年頃)
・Hifi Engine Kenwood KT-8005 Solid State AM/FM Stereo Tuner (1973-76)
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源コードの印字「1972」
・外装は経年の汚れ、手垢、照明窓の曇り、背面端子のサビ。
・特にサイドウッドは突板が剥がれて残念な状態。
・75ΩのFMアンテナ端子が特殊形状。
・動作確認は300Ω端子にアンテナ接続。
・電源オン。周波数窓の照明点灯するが中央右側がやや暗い。
・周波数を示す指針がオレンジ色に点灯。
・二つのメーター照明点灯。
・よく見るとメーター指針の赤色塗装がボロボロ状態。
・ステレオランプ以外のインジケーター点灯確認。
・名古屋地区のFM局周波数付近でSメーターとTメーターが振れる。
・受信しているようだが、MUTINGオンの状態では音が出ない。
・これはMUTINGが解除されない状態か。
・MUTINGオフにして以下を確認。
・名古屋地区のFM局を-0.3MHz程度の周波数ズレで受信OK。
・固定/可変端子とも音声出力OK。マルチパスH端子の音声出力OK。
・ステレオランプが点灯しない。
・背面バーアンテナで名古屋地区のAM局受信確認。
・Sメーターが大きく振れてAMは受信OK。
■内部確認------------------------------------------------------------
・ボディを開けると高級感を醸し出す黒いシールドケース
・上面に調整ポイントが白く印字
・シールドケースに覆われていたおかげで基板面はとてもきれい
・フロントエンドにFM5連、AM3連バリコン搭載
・MURATA製セラミックフィルター×2 → IFアンプ NJM703W×2 → レシオ検波
・PLL化される以前のオールドMPX回路
・調整用VRを軽く回したところ、以下の2個が物理的に壊れてしまいました。
・経年劣化で脆くなっていたようです。
・IF基板 VR4 MUTING調整用 100kΩ
・MPX基板 VR2 STランプ調整用 20kΩ
■修理記録:FMアンテナ端子交換-----------------------------------------
・75ΩのFMアンテナ端子が特殊形状。
・このままでは作業しづらいのでF型端子に交換。
■修理記録:可変抵抗交換----------------------------------------------
・不注意で壊してしまったVR2とVR4、手持ち部品を細工して交換。
・足のサイズを微妙に調整して設置
・IF基板 VR4 MUTING調整用 100kΩ
・MPX基板 VR2 STランプ調整用 20kΩ
■修理記録:照明窓の電球交換------------------------------------------
・フロントパネルを分解清掃
・電球は見覚えのある特殊タイプ 8V/0.3A × 4個
・4個のうち1個が電球切れ
・手持ちのウエッジ球の接触部分を加工してホルダーにセット
・美しい照明窓が復活しました
■修理記録:メーター指針再塗装----------------------------------------
・メーター指針の赤色塗料が劣化してボロボロの状態。
・これでは高級機に相応しくない。
・指針再塗装はYAMAHA T-2で何度か経験した作業です。
・底面から二つのメーターにアクセス。
・位置的に可変出力VRが邪魔なので外して作業する。
・メーターを取り出し、透明カバーを外す。
・カッター刃の先端で慎重に慎重に古い塗装を剥がす。
・慎重に養生して蛍光オレンジ色の塗料を刷毛でひと塗り。
・メーターが生き返った感じで大成功。
■修理記録:細かいパーツ交換------------------------------------------
・ヤフオクでサイドウッドの状態が良さそうなKT-6005ジャンク機を入手。
・サイドウッド移植。
・サビが出ていた背面や底板を固定するネジを交換。
・外観の見栄えが格段に良くなりました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【レシオ検波調整】
・アンテナ入力なし → IF基板 L7上段コア調整 → Tメーター中点
【FM OSC調整】
・90MHz受信 → CT6調整
・76MHz受信 → L8 調整
・上記作業を2~3回繰り返す
【FM RF調整】
・90MHz受信 → CT1,CT3,CT4,CT5 調整 → Sメーター最大
・76MHz受信 → L1,L3,L4,L6 調整 → Sメーター最大
・上記作業を2~3回繰り返す
・83MHz受信 → フロントエンド L7調整 → Sメーター最大
【FM検波調整】
・83MHz受信 → Tメーター中点 かつ Sメーター最大を確認
・83MHz受信 → IF基板L7下段調整 → 歪率最小
・83MHz受信 → L5調整 → 歪率最小
【MUTING調整】
・IF基板12番端子 → 電圧計セット
・83MHz受信 → L5調整 → 電圧最大
・83MHz受信 → L11調整 → 電圧最大
・VR4を中央位置にセット → TP4のDC電圧値を確認
・VR1調整 → 上記電圧値の約70%にセット
・MUTINGスイッチ → 1
・83MHz 20dB受信 → VR4調整 → MUTING作動位置へ
【REC OUT出力調整】
・RECOUT端子 → AC電圧計セット
・83MHz(100%変調、70dB)受信 → VR2調整 → AC1.5V
【Sメーター調整】
・IF基板16番端子 → 電圧計セット
・83MHz受信 → L18調整 → 電圧最大(Sメーター振れ最大)
・83MHz受信 → VR3調整 → Sメーター振れ具合調整
【38kHz調整】
・D1(D2)カソード → 電圧計セット
・83MHz(ST信号)受信 → L1,L2,L5調整 → 電圧最大
・83MHz(SUB信号)受信 → L3,L4調整 → Lchレベル最大
【セパレーション調整】
・83MHz(ST)受信 → VR1調整 → 左右分離度最適位置へ
【マルチパスメーター調整】
・MULTIPATHスイッチON
・MPX基板 17番端子 → オシロスコープ接続
・MPX基板 C50(-)端子 WaveGene接続 38kHz(1mV)注入
・アンテナ入力なし → L12,L13調整 → 波形最大
・VR5中央へ
【AM OSC調整】
・ 600kHz → L17
・1600kHz → CT9
【AM RF調整】
・ 600kHz → バーアンテナ、L15調整 → Sメーター最大
・1600kHz → CT7,CT8調整 → Sメーター最大
・1000kHz → L16 Sメーター最大
【AM Sメーター】
・VR6 AM Sメーター調整
■修理記録:MPX回路部品交換-------------------------------------------
・WaveSpectraで見る波形の揺らぎが調整過程で気になりました。
・マルチパスH端子からの波形は正常。
・ところが固定/可変端子からの波形が揺れる。
・対策としてMPX回路の以下の部品を交換。
・Q3 2SC871 → 2SC1815
・Q4 2SC870 → 2SC1815
・Q5,6,7,8,9 2SC711 → 2SC1815
・Q10 2SC1213 → 2SC1815
※トランジスタ足の配置に注意
・C14 3.3uF/50V → 3.3uF/50V
・C16 47uF/6.3V → 47uF/35V
・C17 2.2uF/25V → 2.2uF/50V
・C18 2.2uF/25V → 2.2uF/50V
・C19 0.1uF/25V → 0.1uF/50V
・C20 0.1uF/25V → 0.1uF/50V
・これで波形の揺らぎが治まりました。
■試聴----------------------------------------------------------------
・部品交換後に再度調整して作業完了。
・1972年の製品とは思えない!
■修理記録:バリコンシャフトの回転が異常に重くなって、、--------------
・作業から1週間ほどたった頃、選局つまみの回転が急激に固くなってきました。
・過去の経験から、このまま使い続けると完全に固着しそうです。
・対策はバリコンシャフトを分解して注油が必要。
・この機種はフライホイールごと後ろに引き抜くタイプでした。
・前面のストッパーを外して後ろに引き抜く。
・シャフトに機械油を薄く塗布して再セット。
・シャフトが固着する異常も最近多いです。