・2017年8月、ヤマハ製レシーバーCR-400の修理を承りました。
・ステレオランプが点灯しない状態だそうです。
・ちょっと難航しましたが何とか作業完了しました。
・以下、作業記録を残します。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 YAMAHA CR-400 \59,000(1974年頃)
・Hifi Engine Yamaha CR-400 FM/AM Receiver (1977)
■動作確認------------------------------------------------------------
・白木のウッドボディに凹みやキズは無くとても綺麗な状態。
・フロントパネル、スイッチ、ツマミも光っている。
・外観は既に清掃済みのよう。
・電源オン、メーターと指針の照明点灯。
・300Ω端子に外部アンテナを接続してFM受信チェック。
・僅かな周波数ズレあるものの名古屋地区のFM局を受信。
・ただし、ご指摘の通りステレオランプが点灯しない。
・聴感上もステレオ感ない。
・Tメーターの振れ幅がとても小さい。僅かに左右に振れる程度。
・背面バーアンテナで名古屋地区のAM局受信OK。
・PHONO端子にレコードプレーヤー接続、音出しOK。
・AUX端子にCDプレーヤー接続、音出しOK。
・音量調整VR、音質調整VRに僅かにガリ音あり。何度も回すうちに解消。
・プリアンプ部、パワーアンプ部は問題なさそう。
・問題はFM放送がステレオにならないこと。
■内部確認------------------------------------------------------------
・FM3蓮AM2連バリコン、セラミックフィルター、レシオ検波。
・上位機CR-600と比較すると、回路構成が随分シンプルになっている。
・LA3311:MPX用IC ※CR-600、CT-600と同じ。
■調整記録------------------------------------------------------------
・ステレオランプが点灯しない原因はMPX部の調整ズレか?
・まずは輸出機用サービスマニュアルを参考にして各部調整してみました。
【レシオ検波調整】
・FM電波を受信しない状態
・T101(上段コア)調整 → Tメーター中点
【フロントエンドOSC調整】
・83MHz 受信 → TCo調整 → Sメーター最大
※Lo調整不可のため83MHzのみで調整
【フロントエンドRF調整】
・83MHz 受信 → TCA,TCR調整 → Sメーター最大
・83MHz 受信 → IFT → Sメーター最大
※LA,LR調整不可のため83MHzのみで調整
【レシオ検波歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 受信 → T101(下段コア)→ 歪最小
【MPX調整】
・IC301 LA3311 14pin WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 → T302(GE6056)調整 → 19kHz信号最大
・IC301 LA3311 13pin WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 → T301(GE6069)調整 → 38kHz信号最大
※STEREO受信時、T302調整で19kHz信号を最大にできる
※しかしLA3311 13pinに38kHz信号が出現しない
※調整要領と回路図において T301とT302の記述が混乱している。
※ここでは以下の定義で記載します。
T301=GE6069 (Yellow)
T302=GE6056 (Orange)
【セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → VR301調整 → 漏れ信号最小
※そもそもステレオ分離できていないので調整不可
【AM OSC調整】
・600kHz 受信 → T201調整 → Sメーター最大
・1400kHz受信 → TCo(AM) 調整 → Sメーター最大
【AM RF調整】
・600kHz 受信 → バーアンテナ → Sメーター最大
・1400kHz受信 → TCA(AM)調整 → Sメーター最大
【メインアンプ調整】
・アンプ基板 TP1~GND DC電圧計セット → VR601調整 → 0V±30mV
・アンプ基板 TP3~GND DC電圧計セット → VR602調整 → 0V±30mV
・アンプ基板 TP2~TP1 DC電圧計セット → VR603調整 → 25mV±5mV
・アンプ基板 TP4~TP3 DC電圧計セット → VR604調整 → 25mV±5mV
※VR603 基板上の印字はVR605
※MPX調整以外は調整完了。
■修理記録:STEREOランプが点灯しない-------------------------------------
・調整ズレが原因ではなかった、、ということは部品故障か?
・STI(+)端子電圧 → 10.9V
・STI(-)端子電圧 → 11.3V ※STEREO/MONO時で電圧変化なし
・IC301:LA3311- 9ピン電圧=12.9V → OK
・IC301:LA3311- 4ピン電圧=10.9V → ST/MO 同値で変化なし
・IC301:LA3311-14ピン電圧=12.2V、周波数カウンタ19kHz確認
・IC301:LA3311-13ピン電圧= 3.2V、周波数カウンタ38kHz確認できず
・ステレオにならない原因はIC301:LA3311-13ピンに38kHz信号が出現しないこと
・回路図を確認しながらIC301周辺のトランジスタと電解コンデンサを交換
・TR105:2SC458 → 2SC1815Y ※BCE→ECB配列注意
・TR106:2SC458 → 2SC1815Y ※同上
・C122:1uF/25v → 1uF/50v
・C123:33uF/6.3 → 33uF/25v
・C124:33uF/6.3 → 33uF/25v
・C302:4.7uF/25 → 4.7uF/50v
・C304:4.7uF/25 → 4.7uF/50v
・C303:470uF/16 → 470uF/25v
・C318:47uF/6.3 → 47uF/25v
・以上のトランジスタ、電解コンデンサ交換でも改善なし
・38kHzが出現しない原因は IC30:LA3311自体の故障か?
・LA3311をネット検索しましたがどうやら新品入手は困難。
・LA3311は上位機CR-600と単体チューナーCT-600で見たことがあります。
・ジャンク機を探して部品取りするか?
■修理記録:CT-400入手-----------------------------------------------
・CR-600、CT-600のジャンク品をヤフオクで探していると手頃な価格のCT-400発見。
・MPX部はたぶんCR-400と同じだろう、、と予想してジャンク品ゲット。
・手元に届いて内部を確認したところ、予想通りMPX部の回路構成はほぼ同じ。
・ただ使われているICは LA3311ではなく LA3310でした。
・LA3311とLA3310の違いは何?
■研究記録:LA3310とLA3311の違い-----------------------------------------
・LA3310搭載機種:YAMAHA CT-400
・LA3311搭載機種:YAMAHA CT-600、CR-600、CR-400
・データシートはどちらも見つかりません。
・サービスマニュアルや回路図中で見つけた情報を CT-400記事にまとめました。
・互換品情報によると LA3311=ECG1225、LA3310=ECG1230
・両者の内部構成は同じで Vcc電圧に違いがあるようです。
・CR-600 LA3311-9pin電圧=実測12.2V ※以前の調整記録より
・CR-400 LA3311-9pin電圧=実測12.1V ※実機確認
・CT-400 LA3310-9pin電圧=実測10.8V ※実機確認
■修理記録:LA3311→LA3310交換----------------------------------------
・若松通商で LA3310(@294円)を発見。
・LA3311が見つからない状況なので、代替品としてLA3310を使ってみる。
・Vcc電圧に違いがあるようですが、とりあえずLA3310に交換。
・ICソケットを介してLA3310装着 → MPX部の再調整実施。
【MPX調整】
・IC301 LA3311 14pin WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 → T302(GE6056)調整 → 19kHz信号最大
・IC301 LA3311 13pin WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 → T301(GE6069)調整 → 38kHz信号最大
・13pinに38kHz信号が出現してSTEREOランプ点灯。
【セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → VR301調整 → 漏れ信号最小
・めでたくステレオ分離できるようになりました。
■修理記録:レシオ検波コア交換----------------------------------------
・当初から気になっていたのですが、
・Tメーターの振れ幅がとても小さく中点からわずかに左右に振れる程度。
・FM受信音の音声出力レベルがちょっと低い。
・レシオ検波コア(T101:GE6025)はダイオード+コンデンサ内蔵タイプ。
・このT101が劣化しているかも?
・ドナーCT-400に同じT101:GE6025があったのでCR-400に移植。
・Tメーターが左右に大きく振れるようになりました。
■修理記録:電球交換--------------------------------------------------
・二つのメーターを3個の電球でライトアップしています。
・正面から見て一番左側の電球が切れていました。
・ヤマハ製チューナーから部品取りした同じ電球に交換。
・微妙に明るさが違うかも? でも見た目が随分良くなりました。
■試聴----------------------------------------------------------------
・LA-3310 と LA3311 のVcc電圧の違いがちょっと気になります。
・LA-3310 を 12V電圧で使い続けて大丈夫か?という心配です。
・私のBGM環境に置いて1週間ほど酷使してみましたが今のところ問題なさそう。
・この状態でお返ししますので、引き続き動作確認をお願いします。
・再度不調になった場合は再修理を承ります。
・予想外に難航した修理作業でしたが LA3310とLA3311の違いが勉強になりました。