・2017年9月、アキュフェーズT-101の故障品をお預かりしました。
・1974年発売、FM専用チューナーの高級機です。
・今回初めて実機に触れる機会をいただきました。
・以下、作業記録です。
■製品情報-------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Accuphase T-101 ¥110,000 (1974年5月発売)
・オーディオ懐古録 Accuphase T-101 ¥110,000 (1974年)
・Hifi Engine Accuphase T-101 FM Stereo Tuner ※サービスマニュアルあり
・取扱説明書(日本語版)※同梱していただいた取説をPDF化しました。
■動作確認-------------------------------------------------------------
・外観はとても綺麗。きっと大切に使われているんでしょう。
・重量11kg、持ち上げるとアンプ並みに重い。
・電源オン、周波数窓と二つのメーターが青色照明に浮かび上がる。
・75Ω同軸ケーブルをアンテナ端子に接続して動作確認。
・名古屋地区のFM放送を受信するとSメーター、Tメーターが大きく振れる。
・マルチパスメーターもそれなりに動いている。
・三つのメーターの動き方を見ると正常に受信しているようです。
・しかし固定/可変出力とも全く音が出ない。
・マルチパスH端子、FM DET OUT端子からも音声が出てこない。
・MUTINGオフの状態で離調しても局間ノイズが聞こえない。
・STEREOランプ点灯しない。
・IFバンド切替、MUTING切替などのインジケーターが点灯しない。
・依頼者様によると、使用中に突然インジケーター消灯し音が出なくなったそうです。
・これは電源回路が怪しいか?
■内部確認-------------------------------------------------------------
・ブロックごとに配置された基板、その基板上に整然と並んだパーツ類。
・さすが高級機、という感じです。
・FM専用5連バリコン、WIDE系、NARROW系、レシオ検波
・MPX-IC:TA7156P → パーツリストでは MC1310P、回路図では LM1310N、LM1310P
・TA7156P のデータシートは見つかりません。
・しかし状況証拠から TA7156P=MC1310P(LM1310N、LM1310P)です。
・MC1310 と MC1310P の違いは不明ですが、
・ようやく東芝製互換品に巡り合えました。
【MC1310互換品】
・PA1310、BA1310、SN76115、HA1156、LM1310、CA1310、AN115、、、
■修理記録:音が出ない原因を探る---------------------------------------
【症状】
・Sメーター、Tメーターは正常に動作している。
・マルチパスメーターも動いている
・ということは、検波回路までは正常
・でもマルチパスH端子(FM DET OUT端子)から音が出ない
・ミューティング回路が動作していない
・フロントパネルのスイッチに連動したインジケーター(電球)が点灯しない
・まずは電源回路から調査開始
・電源基板 6番端子:+16v / 実測 16.2v ※異常なし
・電源基板 7番端子:-16.2v / 実測-16.7v ※異常なし
・電源基板 8番端子:+7.0v / 実測 6.96v ※異常なし
・続いてMPX基板の7vラインを点検。
・フロントパネルのスイッチに連動したインジケーター(電球)が点灯しない、ということは
・MPX基板 11番端子:+7.0v を確認。
・電圧測定のためテスター棒の先端を11番端子に当てた瞬間!!
・「カチッ」リレー動作音が聞こえたと思ったら、、
・何とFM放送が聞こえてきました!!
・固定端子、可変端子ともFM放送が聞こえる。
・マルチパスH端子、FM DET OUT端子からもFM放送が聞こえる。
・STEREOインジケーターが赤く点灯。
・気が付けば、切換スイッチに連動したインジケーターが青く点灯している。
・離調時のMUTING動作OK、、
・さっきまでの不調が嘘のよう、、何故か?直ってしまいました。。
・その後、11番端子に再度触れても、ちょっと押しても正常動作を続けています。
・11番端子の接触不良では無さそう。
・何らかの理由でMPX基板の7V回路が動作していなかった?
・原因不明です?
■調整記録-------------------------------------------------------------
・T-101サービスマニュアルの調整方法に準拠(一部アレンジあり)
【検波調整1】
・MONO、MUTINGオフ、NORMAL
・信号なし → IF基板 T3上段コア調整 → Tメーター中点
【OSC調整】
・90MHz → フロントエンド CT1調整
・76MHz → フロントエンド L11調整
・上記調整を数回繰り返す
【トラッキング調整】
・90MHz → フロントエンド CT2,CT3,CT4調整 → Sメーター最大
・76MHz → フロントエンド L11,L12,L13調整 → Sメーター最大
・上記調整を数回繰り返す
【Sメーター調整】
・83MHz 86dB,30%dev → IF基板 VR4調整 → Sメーター目盛り5
【検波調整2】
・MONO、MUTINGオフ、NORMAL
・固定出力 WaveSpectra接続
・83MHz 66dB,100%dev → IF基板 T3下段コア調整 → 高調波歪最小
【MUTING WIDTH調整】
・MUTING オン
・83MHz 86dB,30%dev → IF基板 VR2調整 →
・Tメーターを見ながら左右離調時にMUTING作動ポイントが左右対称にする
【MUTING LEVEL調整】
・MUTING オン
・83MHz 22dB,30%dev → IF基板 VR3調整 → 出力が出現する位置へ
【VCO調整】
・MPX基板 IC1 1pin → 周波数カウンタ接続
・83MHz 無変調 → MPX基板 VR1調整 → 19kHz
【セパレーション調整】
・固定出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 100%dev → MPX基板 VR2調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【音声出力レベル】
・固定出力 AC電圧計接続
・83MHz 66dB,100%dev → IF基板 VR1調整 → 2.0v
■試聴-----------------------------------------------------------------
・私としては MC1310の東芝製互換品に巡り会えたことが大きな成果です。
・しかし不具合の原因は分からないままです。
・各部再調整して良い性能を取り戻したと思います。
・この状態でお返ししますので、引き続き動作確認をお願いします。
・不具合が再発した場合はご連絡ください。