・2016年5月、ヤマハ製レシーバーの修理調整を承りました。
・チューナー部以外の機能は正常だそうです。
・随分と回り道をしてしまった作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 YAMAHA CR-600 ¥95,000(1974年頃)
・Hifi Engine YAMAHA CR-600 ※サービスマニュアル入手可
■動作確認------------------------------------------------------------
・全体に目立つキズもなくなかなかの美品です。
・電源オン、二つのメーターと指針部の照明電球点灯。
・TメーターとSメーターの動作OK。ただSメーターの振れが小さいか?
・チューニングつまみに触れるとAFCインジケーターが薄く点灯。
・指を離すとAFCインジケーターが点灯するはず、、ところがなぜか点滅します?
・FM局を受信するとSTEREOインジケーターが高速点滅。
・AFCインジケーターもSTEREOインジケーターに同期して点滅。
・受信時の音声はひどく歪んでいます。
・Wavespectraで波形を見ると点滅に同期して激しく波打っています。
・MODE切換でMONOに設定して選局つまみに触れるとキレイな音が出る。
・MODE切換でSTEREOに設定すると上記の酷い歪が発生。。
・MUTING オフに設定すると歪音はでなくなる。
・これは難しい、、MUTING回路とSTEREO回路に不具合がありそう、、
■内部確認------------------------------------------------------------
■修理記録:チューナー基板の部品交換----------------------------------
・輸出機用の回路図を見ながら原因を考える。
【MUTING ON時】
・チューニングつまみタッチ時→インジケーター薄く点灯 ※正常
・チューニングつまみ 開放時→インジケーター薄く点滅 ※異常
・MONO時、選局ツマミに触れると正常
・MONO時、選局ツマミを離すと異常
・AFCオフ→正常、AFCオン→異常
・AFC回路のトランジスタ交換、電解コンデンサ交換
・TR113,TR114,TR115(2SC458)→2SC1815 ※効果なし
・TR110,TR111(2SC458)→2SC1815 ※効果なし
・C138,C142,C143,C144(10uF/16V)→新品交換 ※効果なし
・C148(47uF/6.3V)→新品交換 ※効果なし
・C153(3.3/25V)→新品交換 ※効果なし
・つまりAFC動作そのものがおかしい?
・MUTING回路のトランジスタ交換、電解コンデンサ交換
・TR107,TR108,TR109,TR112(2SC458)→2SC1815 ※効果なし
・C128,C130(10uF/16V)→新品交換 ※効果なし
・C132(1uF/25V)→新品交換 ※効果なし
・C139(4.7uF/25V)→新品交換 ※効果なし
・C140(33uF/6.3V)→新品交換 ※効果なし
・D105,D106,D107,D109 → 交換 ※効果なし
・結局FM回路のすべてのトランジスタと電解コンデンサ、ダイオード交換。
・ところがまったく効果なし。
・こうなるとノイズ源はLA3311?
・あるいはフロントエンド内のAFC回路故障?
・LA3311を搭載した機種を捜索。
・同世代の YAMAHAレシーバーCR400、YAMAHAチューナー CT-600 がヒットしました。
・特にCT-600のチューナー基板はCR-600と全く同じようです。
・部品調達のためジャンク機を探してみます。
■修理記録:チューナー基板を丸ごと交換-------------------------------
・ジャンク機確保のためヤフオクでCT-600を落札。
・ランプ切れがありましたがFM/AMとも正常に機能することを確認。
・受信調整して良い音で受信できるようになりました。
・さて本題、このCT-600からLA3311を取り出してCR-600に移植しました。
・これで直るはず、、と思ったら、、あれ??外れでした。
・LA3311に繋がる38kHz調整コイルT-103をCR-600に移植 → 効果なし。
・最後の手段、CT-600のチューナー基板と CR-600のチューナー基板を丸ごと交換。
・ところが何と効果なし。
・つまり、CR-600のチューナー基板に故障箇所は無い、ということです。
・どうやらフロントエンド(バリコンユニット)内のAFC回路が原因か?
・CR-600のフロントエンドを外すにはバラバラに分解する必要あります。
・バラすのは簡単ですが、元通りに戻せるかどうか、、ちょっと不安かも?
■修理記録:フロントエンドユニットを丸ごと交換-----------------------
・CR-600とCT-600のフロントエンドユニットは同型品でした。
・というか、CR-600のチューナー部はCT-600と全く同じでした。
・そこでCT-600のフロントエンドユニットを外し、CR-600へ移植。
・ユニットごと交換すればAFC回路の不具合も解消するはず、、
・ところが不具合が解消しません??状況は同じです。
・検証のためCR-600から外したフロントエンドユニットをCT-600に移植。
・するとCT-600は正常に動作しました。
・ということは、、フロントエンドユニットも異常なしということです。
■修理記録:LED基板が怪しい?-----------------------------------------
・フロントエンドユニット、チューナー基板とも問題無し。
・回路図を見ながら残った可能性を考える。
・チューナー基板に繋がるものといえば、、TメーターとSメーターか?
・基板からメーターに繋がる配線を外してみる、、
・やはり改善しない。
・残るは STEREOインジケーターとAFCインジケーターのLEDのみ。
・STEREOインジケーターとAFCインジケーターに繋がる配線を外してみると、、、、、、
・当たり!! ノイズのない綺麗なステレオ音声が聞こえてきました。
・LEDは直径2mmの半円球。
・チューナー CT-600 からLEDを取り外してCR-600に移植。
・でも改善しない。
・LED自体が壊れているわけではなさそう。
・LEDに繋がる抵抗2個(R941/680Ω、R942/1kΩ)交換。
・でも改善しない。
■修理記録:電源基板が怪しい?-----------------------------------------
・最後の可能性はLED基板に繋がる電源基板しかありません。
・電源基板はチューナー基板の下にあります。
・再度チューナー基板を外してバラバラに分解。最下部にある電源基板を確認。
・LED基板に繋がる[12V]端子の電圧測定 → 10.7V ※ちょっと低い?
・LED基板に繋がるTR801(2SC1061)と電解コンデンサを確認。
・テスターで簡易確認する限りは特に不具合は無さそう。
・電解コンデンサ交換も改善なし。
■修理記録:電源基板ヒューズ抵抗交換-----------------------------------
・電源基板には合計4個のヒューズ抵抗が使われています。
・このうち FR802(220Ω 1/2W)の抵抗値を測定すると780Ω。
・そういえばヒューズ抵抗がノイズ源だった経験は過去にもありました。
・これを新品に交換したところ、、
・AFCランプの点灯動作、STEREOランプの点灯動作が正常になりました。
・LED基板に繋がる[12V]端子の電圧測定 → 12.5V
・それとSメーターが大きく振れるようになりました。
・この電源12Vはチューナー基板に供給されています。
・やはりチューナー基板のあちらこちらに影響が出ていたようです。
・オシロがあればもっと早く電源異常に気付けたはず、、、
■調整記録-------------------------------------------------------------
【レシオ検波調整】
・フロントエンドとの接続端子にSSGより10.7MHz信号注入
・T101(上段コア)調整 → Tメーター中点
【フロントエンドOSC調整】
・76MHz 90dB 受信 → Lo調整 → Sメーター最大
・90MHz 90dB 受信 → TCo調整 → Sメーター最大
【フロントエンドRF調整】
・76MHz 90dB 受信 → LA,LR1,LR2調整 → Sメーター最大
・90MHz 90dB 受信 → TCA,TCR1,TCR2調整 → Sメーター最大
・83MHz 90dB 受信 → IFT → Sメーター最大
【レシオ検波歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 90dB 受信 → T101(下段コア)→ 歪最小
【ミューティング調整】
・VR101 MUTING動作レベル設定
【38kHz調整】
・83MHz SUB信号 80dB 受信 → T102調整 → Lchレベル最大
【セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → VR102調整 → 漏れ信号最小
・実測で左右とも約40dB/1kHzでした。
【AM OSC調整】
・729kHz(NHKラジオ)受信 → T105調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → AM3調整 → Sメーター最大
【AM RF調整】
・729kHz(NHKラジオ)受信 → バーアンテナ、T104調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → AM1,AM2調整 → Sメーター最大
【メインアンプ調整】
・アンプ基板 TP3~TP5 DC電圧計セット
・VR701調整 → 0V±0.01V
・アンプ基板 TP4~TP6 DC電圧計セット
・VR702調整 → 0V±0.01V
・アンプ基板 TP1~TP3 DC電圧計セット
・VR703調整 → 0.023V±0.005V
・アンプ基板 TP2~TP4 DC電圧計セット
・VR704調整 → 0.023V±0.005V
■試聴----------------------------------------------------------------
・レコードプレーヤー、CDプレーヤー、スピーカーを接続して動作確認。
・PHONO1、PHONO2、AUXとも問題なさそうです。
・TAPE入出力端子もOK。ヘッドホン端子もOK。
・MIC端子は未確認です。もちろんFM/AMともOK。
・AFCランプ、STEREOランプ正常点灯。MUTING動作OK。
・ボリュームやバランスにガリなし。
・寝室のサブシステムにちょうど良いですね。
・それにしても随分と回り道した修理作業でした。
・実はオシロスコープが故障したまま、、早く新しいオシロを調達しなくちゃ、、