・2016年6月、珍しいチューナーの故障機が届きました。
・ニッコー FMチューナー ガンマ ワン(ローマ数字の1)
・この機種のことは今回初めて知りました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・Hifi Engine Nikko Gamma I (1978)
・Tuner Information Center Nikko Gamma I (1977,$400)
・株式会社日幸電機製作所
・日幸電機製作所ブログ ※過去のオーディオ製品の紹介あり
・ネット検索してもこの機種に関する国内情報は乏しいです。
・Hifi Engineで海外版のサービスマニュアルとカタログを入手できました。
・T.I.C には詳しいレビュー記事があります。
・パワーアンプ(Alphaシリーズ)、プリアンプ(Betaシリーズ)とのシリーズ品のようです。
・セットでラックに収めるとカッコいいですね。
・幅19インチ(48.3cm)×高2.5インチ(6.4cm)×奥10インチ(25.4cm)、重量5.5kg
・アメリカ版カタログ(1978)によると当時の定価$399.95。
・ブラックパネル以外にシルバーパネルの製品もあったようです。
・当時の為替レートを1ドル200円とすると約80,000円くらいでしょうか。
・同時期の同クラス製品を探すと Technics ST-9030 が該当しそうです。
■動作確認------------------------------------------------------------
・ラックサイズの薄型ボディで奥行きも小さい。でも持ち上げるとずっしり重い。
・外観は年代相応の擦り傷、打ち傷があるものの、フロントパネルは綺麗。
・電源オン。周波数窓と二つのメーター照明点灯。指針も赤く点灯。
・しかし、TメーターもSメーターも全く振れない。
・固定出力、可変出力ともに全くの無音。
・FM DET OUT端子、マルチパスH端子も全くの無音。
・局間ノイズも出ない。Mutingが効いている状態か?
・それともFM放送局を全く受信していない状態か。
■内部確認------------------------------------------------------------
・FM専用5連バリコン搭載フロントエンド
・IF回路はWide/Narrow完全2系統
・Wide系 → LCフィルター+SAWフィルター+IFアンプ(HA1211)×2個
・Narrow系 → セラミックフィルター×4個+IFアンプ(HA1211)×3個
・HA11211 → FM/AM TUNER SYSTEM
・HA11211クアドラチュア検波 → TメーターとSメーターを駆動。AM回路は未使用。
・HA11211後段にレシオ検波回路(Wide/Narrowとも)。
・HA11223 → FM PLL MPX
・薄型ボディに大型フロントエンドと2階建て基板が詰め込まれている。
・回路構成を見ると基本性能は高そう。
・ただ1階基板のセパレーション調整VRの位置が悪くて調整が難しい。
■修理記録------------------------------------------------------------
・電源部電圧確認 +13V→+13.2V、-13V→-13.2V。問題なさそう。
・IF基板 6番端子(IF信号入口)で10.7MHzが確認できない。
・どうやらフロントエンドが機能していない模様。
・調べてみると、フロントエンドのOSCが発振していない。
・OSC部供給電源確認+13.2V OK。
・ところが Q3(2SC1215) コレクタ電圧ゼロ。
・Q3の導通テストOK。トランジスタは壊れてはいない。
・R10(100Ω)の両端電圧+13.2V、+12.2V。これは正常値。
・R10の足で測定すると+12.2V。ところが Q3コレクタ足ではなぜか電圧ゼロ??
・R10とQ3の接合部のハンダ不良を疑ってハンダ鏝を当ててみる。
・何と!これで直りました。原因はR10とQ3の接合部のハンダ不良でした。
■再び動作確認--------------------------------------------------------
・OSC回路が動き始めたのでもう一度動作確認。
・+0.2MHz程度の周波数ズレがあるものの、名古屋地区のFM局受信OK。
・STEREOランプ点灯。実際のステレオ感あり。
・Wide/Narrow切替、Hi-BLEND、Muting動作OK。インジケーター点灯OK
・可変出力VRに多少のガリ。
・FM DET OUT端子とマルチパスH端子から音声が聴こえる。
・更なる故障個所は無さそうです。
■調整記録------------------------------------------------------------
【機器の設定】
・IF BAND=Narrow
・HI BLEND=OFF
【検波調整】
・IF基板 6番端子に SSGより10.7MHz直接注入
・T102調整 → Tメーター中点(クアドラチュア検波)
・TP~GND間にDC電圧計セット(TP=レシオ検波用Tメーター端子)
・T103(緑)調整 → 0.0v±50mv(レシオ検波)
【フロントエンドOSC調整】
・IF BAND=Narrow
・指針76MHz位置セット
・SSG76MHz 無変調 80dB → OSCコイルLo調整 → Sメーター最大
・指針90MHz位置セット
・SSG90MHz 無変調 80dB → OSCトリマTCo調整 → Sメーター最大
※上記調整を数回繰り返す
【フロントエンドRF調整】
・IF BAND=Narrow
・指針76MHz位置セット
・SSG76MHz 無変調 80dB → RFコイル RFA,RF1,RF2,RF3調整 → Sメーター最大
・指針90MHz位置セット
・SSG90MHz 無変調 80dB → OSCトリマ TCA,TCR1,TCR2,TCR3調整 → Sメーター最大
※上記調整を数回繰り返す
【フロントエンド IFT調整】
・IF BAND=Narrow
・指針83MHz位置セット
・SSG83MHz 無変調 80dB → フロントエンドIF(T1)調整 → Sメーター最大
【レシオ検波調整】
・IF BAND=Narrow
・TP~GND間にDC電圧計セット(TP=レシオ検波用Tメーター端子)
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 60dB受信 → TP電圧ゼロ(Tメーター中点確認)
・T103(赤)調整 → 高調波歪最小
【IF Wide調整】
・IF BAND=Wide
・オーディオ出力をWavespectraで観測
・83MHz 1kHz 60dB 受信 → T101,R112調整 → 高調波歪最小
【Sメーター振れ調整】
・IF BAND=Wide
・83MHz 無変調 60dB 受信 → R135調整 → Sメーター目盛り4.5
・IF BAND=Narrow
・83MHz 無変調 60dB 受信 → R137調整 → Sメーター目盛り4.5
【VCOフリーラン周波数調整】
・IF BAND=Wide
・TP55 周波数カウンタ接続
・83MHz無変調 → R302調整 → 76kHz±10Hz
【パイロット信号キャンセル調整】
・IF BAND=Wide
・オーディオ出力をWavespectraで観測
・83MHz パイロット信号 60dB 受信 → R322調整 → 19kHz最小
・左右バランスに注意
【セパレーション調整】
・IF BAND=Wide
・83MHz ST 1KHz 80dB 受信 → R322調整 → 反対ch漏れ最小
・IF BAND=Narrow
・83MHz ST 1KHz 80dB 受信 → R323調整 → 反対ch漏れ最小
※セパレーション調整VRは1階基板にあるので調整しづらい。
【ステレオ歪調整】
・IF BAND=Wide
・83MHz ST 1KHz 80dB 受信 → R112調整 → 高調波歪最小
■試聴----------------------------------------------------------------
・再調整によって良い性能を取り戻したと思います。
・5連バリコン、Wide/Narrow切替、レシオ検波、HA11223。
・薄型ボディによくぞこれだけ詰め込んだものと感心します。
・当時は高性能実力派チューナーだったと思います。
・周波数窓やメーターのデザインにもう少し工夫があったら、、ちょっと残念。