・SOLID STATE STEREOPHONIC TUNER model TU-777
・「ソリッドステート」どこか懐かしい響きがありますね。
・ノスタルジックな雰囲気漂うオールド機の修理調整を承りました。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SANSUI TU-777 ¥37,800(1968年3月発売)
・オーディオ懐古録 SANSUI TU-777 ¥37,800円 1968年
・Hifi Engine SANSUI TU-777 ※輸出機の回路図、TU-666サービスマニュアル
【備忘録】
1968年:TU-777 39,800円(丸型)、TU-555 29,800円(丸型)
1970年:TU-999 59,900円(横型)、TU-666 33,800円(丸型)
1971年:TU-888 48,900円(横型)
・保有機の中では PIONEER TX-90(1969年、49,800円)が同期生でしょうか。
■動作確認------------------------------------------------------------
・周波数窓が独特の円形表示(リングサーキュラーダイヤル)で指針が回転します。
・本体サイズ345W×155H×334Dmm。横サイズがちょっと小さ目。ずっしり重い7.7kg。
・FMアンテナを接続して電源スイッチオン。スイッチレバーの感触が重厚です。
・POWERインジケーター点灯。周波数窓の照明点灯、メーター照明点灯。
・メーターは「TUNING METER」と書かれていますが Sメーターです。
・名古屋地区のFM放送局の受信OK。-0.5MHzほどの周波数ズレ。
・STEREOランプ点灯。ただし離調しても点灯したまま。
・MUTINGが動作しない。
・NOISE CANCELER の効果がよく分からない?
・SELECTORで FM-MONO に切り替えても STEREOランプは点灯たまま?
・それとRchの音が常時出ない。全くの無音。
・背面パネルのセパレーション調整ツマミを回しても変化なし。
・AM放送は背面バーアンテナで名古屋地区のAM放送局受信OK。
・AM放送もやはりRchの音が出ない。
・各部調整ズレ、Rchオーディオ回路の故障、MUTING回路故障か?
■内部確認------------------------------------------------------------
・さすがサンスイ機、大きな電源トランスと電解コンデンサが目につきます。
・FM4連、AM3連の独立したフロントエンドユニット。
・回路ごとに独立した基板配置。
・大型IFTトランスがまるで高層ビルのように立ち並んでいます。
・輸出機の回路図と照合したところほぼ同じことを確認。
■修理記録:FM/AMともRchの音が出ない----------------------------------
・最終オーディオ回路基板は縦置きに設置されている。
・配線を外して基板を取り出す。
・トランジスタの導通チェックをしたところ、TR601(2SC693)が壊れていました。
・とりあえず TR601(2SC693) → 2SC1815 に交換。
・これで正常に音が出るようになりました。
・左右バランスを取るため反対ch側TR602も交換しました。
・外した2SC693は半球状のかわいい形状ですね。
・立ててみると何だか火星人みたい??
■修理記録:MUTINGが効かない------------------------------------------
・回路図を追ってMUTING回路を確認。
・IF基板上の TR207(2SC828)が導通状態でした。
・これを2SC1815に交換。隣のTR208(2SC828)も一緒に交換。
・MUTING動作は正常になりました。
■修理記録:STEREOランプが常時点灯-----------------------------------
・上記修理でMUTING作動時はSTEREOランプが消灯するようになりました。
・でもMUTINGオフ時は離調してもSTEREOランプが点灯したまま。
・本体右奥にある小さな基板がSTEREOランプを駆動する回路のようです。
・とりあえず電解コンデンサ2個(C503 30uF/18v,10uF/18v)交換。
・まったく効果無しでした。
・トランジスタは壊れてなさそうなので調整方法の問題かもしれません。
・試行錯誤した調整方法は下記記録に示します。
■調整記録------------------------------------------------------------
・Hifi Engine で入手したTU-666サービスマニュアルを参考にしました。
【レシオ検波調整】
・IF基板 2K端子 電圧計セット 0V(Tメーター代用)
・フロントエンド内 TP5 SSGより10.7MHz信号注入
・IF基板T204(上段コア)調整 → 電圧計ゼロ(Tメーター中点)
【フロントエンドOSC調整】
・VR202(S-meter) 足にDC電圧計セット
・76MHz 90dB 受信 → L105調整 → 電圧計最大(Sメーター最大振れ)
・90MHz 90dB 受信 → TC104調整 → 電圧計最大(Sメーター最大振れ)
【フロントエンドRF調整】
・VR202(S-meter) 足にDC電圧計セット
・76MHz 90dB 受信 → L101,L102,L103調整 → 電圧計最大
・90MHz 90dB 受信 → TC101,TC105,TC102,TC103調整 → 電圧計最大
・83MHz 90dB 受信 → L104 → 電圧計最大
【IF歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 70dB 受信
・IF基板T201,T202,T203(各上下段コア)調整 → 高調波歪最小
【レシオ検波歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・IF基板T204(下段コア)調整 → 歪最小
【Sメーター調整】
・83MHz 90dB 受信 → T205調整 → Sメーター振れ最大位置
・83MHz 90dB 受信 → VR202調整 → Sメーター目盛5
【ミューティング調整】
・VR201 MUTING動作レベル設定
・信号レベルの調整というより動作範囲の調整みたいです。
・76MHz~90MHz区間でMUTINGが動作するように調整
※【SCA調整】※TU-666サービスマニュアル準拠、省略可
・MPX基板4A端子に67kHz信号注入
・TP404端子にWaveSpectra接続
・L402調整 → 67kHz成分最小
【19kHz調整】
・TP401 WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → T401,L401調整 → 19kHzレベル最大
・TP402 WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → T402調整 → 19kHzレベル最大
【38kHz調整】
・TP403 WaveSpectra接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → T403調整 → 38kHzレベル最大
【セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → 背面パネルVR調整 → 漏れ信号最小
・実測で左右とも約40dB/1kHzでした。
【AUTO STEREO調整】※以下の記述は試行錯誤の結果です。
・SELECTOR FM AUTO
・D501カソード側に周波数カウンタ接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → 19.00kHz確認 → T501調整 → 19kHzレベル最大
・VR501調整 → STEREOランプが点灯する位置へ
・MUTINGオフ、チューニングつまみを適当に回して離調する。
・VR502調整 → STEREOランプが消灯する位置へ
【AM OSC調整】
・729kHz(NHKラジオ)受信 → T302調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC303調整 → Sメーター最大
【AM RF調整】
・729kHz(NHKラジオ)受信 → バーアンテナ、T301調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC301,TC302調整 → Sメーター最大
【IF調整】
・1053kHz(CBCラジオ)受信 → T303,T304,T305調整 Sメーター最大
【AMメーター調整】
・1053kHz(CBCラジオ)受信 → VR301調整 → Sメーター最大振れ位置
■修理記録:STEREOランプが常時点灯-----------------------------------
・調整方法は上記記載の通りで良さそうですが、、
・ただ実際に使ってみるとSTEREOランプ点灯範囲の設定がとてもシビアです。
・そこでオレンジ色のトランジスタ2SC458を3個とも交換してみました。
・TR501,TR502,TR504(2SC458) → 2SC1815
・基板裏側に実装された電解コンデンサ交換 1uF/25V → 1uF/50V
・交換後、上記調整方法で再調整。
・スムーズに調整できるようになりました。
■試聴----------------------------------------------------------------
・最小限の部品交換ですが、とりあえず使える状態になったと思います。
・音質云々は別として約50年前のレトロな雰囲気がよいですね。
・本体背面にアンテナ入力のアッテネータースイッチがあります。
・通常は[DIST.]位置で良いですが、強電界地域では[LOC.]に設定してください。
・[DIST.]=[DISTANCE]、 [LOC.]=[LOCAL]
・それからセパレーション調整VRも背面にあります。
・可変出力調整VRと並んでいるので操作時はご注意ください。