・2014年11月、研究材料として Lo-D FT-8000 をご提供いただきました。
・お陰さまで年末年始休暇を楽しく過ごせました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Lo-D FT-8000 ¥75,000(1979年頃)
・オーディオ懐古録 Lo-d FT-8000 ¥75,000(1978年)
・Tuner Information Center Hitachi FT-8000 ※海外版回路図あり
<概要>
・1978年、Lo-D(日立)初の本格的シンセサイザー方式FM専用チューナー。
・同社製プリアンプHCA9000と共通したデザイン。
・パネルカラーはブラウン色とシルバー色の2色。
■動作確認------------------------------------------------------------
・天板に数か所擦り傷、小さな塗装ハゲありますが全体として保存状態は良好。
・既にクリーニングされているのか、フロントパネルはとてもキレイ。
・シルバーの操作ボタンが光り輝いています。
・背面を見ると見慣れない TV TRAPスイッチがFMアンテナ端子に繋がっている。
・音声出力端子は固定のみ、金メッキ仕様。マルチパス端子なし。
・電源を接続したら表示部が時刻設定モードになりました。
・このまま MANUALTUNING ボタンを操作して「時」と「分」を設定。
・「時」「分」の設定は順方向のみ。逆戻りはできない。
・「分」を設定した瞬間から秒がスタートするようです。
・本体電源オン → 表示部が時刻表示からFM周波数表示に切り替わる。
・周波数窓には電球照明があり、STEREO や SIGNAL の文字が浮かび上がる。
・ERASEランプが赤く点滅。メモリー登録すると消灯する。6局メモリ。
・TUNINGボタン SWEEP UP、SWEEP DOWNボタンでFM局を探して自動選局開始。
・MANUAL TUNINGボタンでマニュアル選局。
・STEREOランプが点灯してFM音声を正常に受信できました。
・IFモード切替(Wide/Narrow)機能なし。
・FM放送を受信中にCLOCKボタンを押すと時刻表示に切り替わる。
・MULTIPATHボタンでマルチパス状況が音声で流れる。
・REC TONE OK。
・本体電源オフ → FM周波数表示から時計表示に切り替わる。
・時計機能を内蔵しているのにタイマー録音機能はない。
・停電時のメモリ保持機能なし。
・電源コードを抜くと登録内容が失われる。
・常時通電することが前提のようです。
・表示部の輝度劣化がないのは使用頻度が低かったから?
■内部確認------------------------------------------------------------
・アンプ並みの大型電源トランス2基搭載。
・チューナー基板と同サイズの大きなコントロール基板。
・これはシンセサイザー式チューナー黎明期の製品ですね。
・同時期のシンセチューナー Aurex ST-630によく似た構成です。
・フロントエンドはHITACHI製パッケージ、これは HCC-8と同じ型番でした。
・「HITACHI 5-GANG TUNER」と刻印されたFM5連相当チューナーパック+ANT側にもう一段。
・チューナーパックの中を見ると一段(LR2、TCR2)抜けているので実質4連相当。
・外側の一段と合わせて5連相当でした。
・フロントエンド基板 → CF3個 → クアドラチュア検波 → PLL MPX
・IFモード切替(Wide/Narrow)機能なし。
・HA11211 FM IF SYSTEM
・HA11223W FM PLL MPX
・背面「TV TRAP」スイッチはアッテネーターに繋がっている。 ※訂正
・背面「TV TRAP」スイッチを分解して基板を確認。
・回路図ではアッテネーターだが、実機では「LPJBI SOSHIN 」と印字されたフィルターのよう。
・TV TRAPオンにすると受信感度(LED表示)が僅かに低下する。
・これに関する解説を「オーディオの足跡」より引用
「ビル共聴アンテナなどから電波を取り入れる場合に、テレビとの相互変調妨害を受けるのを防ぐため、セット裏面にTVトラップ回路を搭載しています。」
■コントロール基板の様子が随分異なる。-----------------------------------
・入手した輸出機用回路図、ブロック図とFT-8000実機を照合しました。
・チューナー部の構成はほぼ同じですがコントロール基板が回路図とかなり違います。
・ブロック図を見るとメモリ保持用と思われるバッテリーがある。実機にはない。
・使われているIC型番、水晶発振子の周波数が違う。部品配置も随分違う。
・ネット検索で見つけた輸出機の内部写真では、電源トランス横に小さな基板。
・この基板にバッテリーが載っているようです。
・たぶん輸出機には時計機能が無く、代わりにメモリ保持用バッテリーがあるようです。
■修理記録------------------------------------------------------------
・外観が劣化していたチューナー電源回路の電解コンデンサを交換。
・C811 470uF/35V
・ただの気休めだったか? 効果は特に確認できず。
■調整記録------------------------------------------------------------
【フロントエンド部】
・VT電圧 76MHz 3.2V、90MHz 22.1V ※フロントエンド基板8Pin 確認のみ
・RF受信調整 76MHz L102,LA,LR1,LR3、90MHz CT101,TCA,TCR1,TCR3
・チューナー基板30pin Sメーター電圧測定
【検波部調整】
・T201下段:FM同調点調整 TP(HA11211-15pin)12pin電圧ゼロ
・T201上段:高調波歪最小
・フロントエンド内 IFTコア:高調波歪最小
・R214:音声出力レベル調整 ※REC LEVEL固定なので音声出力を+6dBに設定
・R216:Sメーター点灯調整
・R229:Mutingレベル調整
【MPX部調整】
・R303:VCO調整 ※TP R304左側 76kHz
・R308:19kHzキャンセル調整
・R356:セパレーション調整
【PLL部】
・CT501:調整方法未確認
<メモ>
・受信性能、歪率、セパレーションなどはごく普通の数値でした。
■試聴----------------------------------------------------------------
・シンセサイザー式チューナー黎明期の機種として希少です。
・保存状態も良いのでコレクション品として価値がありそう。
・ただ、受信性能や各種測定数値はごく普通の並チューナーでした。
・それと常時時計表示するのにタイマー連動機能が無いのは残念。
・電源コンセントを抜くとメモリが消失するのも残念。
・時計として常時通電することが前提の機種でした。