・2014年11月初め、KT-8000の修理を承りました。
・依頼主が発売当時に購入されたワンオーナー品だそうです。
・最近急にノイズが発生するようになったとか、、
・オリジナルの取扱説明書と一緒に届きました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・高級機 KT-9700と同時期に登場したパルスカウント検波搭載中級機です。
・検波回路がIC化される前のパルスカウント検波第一世代に該当します。
・お預かりした取扱説明書をPDF化、定格部分を抜粋しました。
■動作確認------------------------------------------------------------
・外観はとてもキレイ。大切に扱われていたことが良く分かります。
・電源オン。窓照明、メーター照明点灯。二つのメーター動作OK。
・受信動作は正常ですが、固定/可変出力ともひどいノイズが混じります。
・Mutingオン/オフ、MPX filterオン/オフ、Stereo/Monoに関わらずノイズ発生。
・Wide/Narrowどちらも同じノイズが乗ります。
・マルチパスH端子の出力を聴くとノイズ皆無で正常な音です。
・またパルスカウント検波部の不調か?
・電源コードの印字「1977」
■内部確認------------------------------------------------------------
・一緒に送っていただいた取扱説明書にブロックダイヤグラム図がありました。
・FM専用7連バリコン→Wide/Narrow切替→パルスカウント検波→HA11223
・HA1137Wのクアドラチュア検波はTメーター駆動とMuting制御用。
・マルチパスH端子から出ている正常な音はHA1137Wの検波信号でした。
■取扱説明書にパルスカウント検波の回路解説がありました。
■KT-8000回路図捜索---------------------------------------------------
・1号機入手時にも調べましたが、今回改めて回路図などの情報を探しました。
・でもやはり見つかりません。KT-8000に相当する輸出機は無かったようです。
・そこで修理のためKENWOODサービスに回路図購入を問い合わせました。
・2年ほど前、KENWOODサービスで古いチューナーの回路図を購入したことがあります。
・KT-2200やGT-810で利用させていただきました。
・今回も同様の対応を期待してKENWOODホームページからの問合せたところ、、
・「回路図やサービスマニュアルは企業秘密なので販売できません」
・あれ??会社の方針が変わったようです。残念、、、
■故障個所を探す------------------------------------------------------
・回路から直接音を拾いながら故障個所を探しました。
・前回のL-01Tの経験からパルスカウント検波部を重点調査。
・でもMPXIC HA11223-2pin に入る検波信号は正常でした。
・HA11223-5pin(Rch)、6pin(Lch)から出てくる再生音にノイズが乗っている状態。
・これはHA11223の故障かな?
■修理記録:HA11223 交換---------------------------------------------
・中古基板に載っている HA11223W ならたくさんあります。
・でも今回は新品を調達しました。
・ヤフオクに出ていたHA11223Wを 2個1,000円で入手。
・KT-8000 の HA11223 を取り外してICソケット装着。
・入手した HA11223W を取り付けてスイッチオン!
・ノイズが消えて綺麗な音が流れてきました。
・他に不具合は無さそう。IC1個交換しただけで作業終了しました。
■調整記録------------------------------------------------------------
・KT-8000 1号機の調整記録を一部訂正しました。
【FM OSC調整】
・SSG 90MHz → TC7調整 → Sメーター最大
・SSG 76MHz → L7間隔調整 → Sメーター最大
【RF調整】
・SSG 90MHz → TC1~6調整 → Sメーター最大
・SSG 76MHz → L1~6調整 → Sメーター最大
【FM同調点(HA1137W)調整】
・SSG 83MHz → L14調整 → 本体Tメーター中央
【IF(HA1137W)調整】
・マルチパスH端子出力をWaveSpectraで観察
・SSG 83MHz → L12,L13調整 → 高調波歪最小
【IFT調整】
・SSG 83MHz → L11調整 → 高調波歪最小
【Sメーター振れ調整】
・VR3:Sメーター最大振れ
・VR2:Sメーターゼロ調整
【MUTING調整】
・VR8:ミューティング調整
【2nd IF調整】
・L16調整 → TPにて1.96MHz確認
【MPX部調整】
・VR7:パイロットキャンセル調整
・VR6:VCO調整 TPにて76kHz確認
・VR4、VR5:セパレーション調整
※VR1の調整方法が不明
・たぶんHA1137Wに流れる電圧の指定値があるのか?
・フロントエンド部の調整ズレは僅かでした。
・MPX部の再調整でセパレーション値が大きく改善しました。
・着手前と着手後の音をWaveファイルでご確認ください。
■試聴---------------------------------------------------------------
・最後の仕上げ、フロントパネルを外して周波数窓の内側を磨きました。
・元々キレイな個体ですが、照明窓の美しさが一層増幅しました。
・イイですね、この雰囲気。見ているだけで癒されます。
・作業完了しました。