・2025年4月、FX-711の修理調整作業を承りました
・受信感度の低下と不定期な雑音混入があるそうです
・以下、作業記録です

■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 VICTOR FX-711 ¥49,800(1987年頃)
・オーディオ懐古録 Victor FX-711 ¥49,800
・Hifi Engine JVC FX-1100 FM/AM Computer Controlled Tuner
・FX-711 取扱説明書 PDF形式
![]() | ![]() |
■動作確認--------------------------------------------------
・ボディ上面に目立つ擦り傷多数、
・電源オン、周波数表示点灯、輝度劣化や文字痩せなし
・上り下り方向ともオート選局で名古屋地区のFM局を受信できました
・オート選局時の周波数ズレなし
・ただ、信号レベルが20dB程度でOSCインジケーターが点灯します
・受信感度がかなり低下しているようです
・短時間のチェックでは不定期な雑音は確認できません
・AM受信を試したところ名古屋のAM局はまったく受信不能
■内部確認--------------------------------------------------
・部品面、配線面とも修理痕は見当たらない
・目視で分かる部品の劣化やハンダクラックは見当たらない
・まずは所定の電圧チェック → 異常なし
・Q801-E(+30V)→ +29.1V
・Q803-E(+12V)→ +11.9V
・Q808-E(-12V)→ -12.3V
・Q805-E( +5V)→ + 5.1V
・J705-3pin(+5.6V)→ +5.7V ※電源基板
・J705-5pin(-35V) →-34.2V ※電源基板

■調整記録--------------------------------------------------
●FM部
【VT電圧】
・TP101 DC電圧計セット
・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V
・受信周波数 90MHz → TC105調整 → ★
・上記作業を数回繰り返す
★TC105調整が過敏に反応、僅かに触れるだけで値が変化する
【RFトラッキング調整】
・VR602 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・76MHz 40dB → L103,L104,L105,L106調整 → 電圧最大
・90MHz 40dB → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → ★
★TC101~104調整 → 反応が過敏で最大電圧が定まらない
![]() | ![]() |
■修理記録:トリマコンデンサ交換----------------------------
・フロントエンドのトリマコンデンサTC101~105が劣化しています
・TC101~TC105 → 新品(10pF)5個交換
・VT電圧調整、RF調整をやり直したところ感度が大幅アップしました
・交換後にその他調整項目もすべてやり直しました
・同様にAM回路のトリマコンデンサ2個も劣化していました
・TC301~TC302 → 新品(20pF)2個交換
・再度調整作業をやり直して正常動作になりました
![]() | ![]() |
■調整記録--------------------------------------------------
●FM部
【VT電圧】
・TP101 DC電圧計セット
・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V
・受信周波数 90MHz → TC105調整 → 22.0V±0.1V
・上記作業を数回繰り返す
【RFトラッキング調整】
・VR602 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・76MHz 40dB → L103,L104,L105,L106調整 → 電圧最大
・90MHz 40dB → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 40dB → T101調整 → 電圧最大
【PLL検波 VCO調整】
・TP104 周波数カウンタ接続
・受信バンド切替 → AM
・何も受信しない状態 → T208粗調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・何も受信しない状態 → T207微調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・受信バンド切替 → FMに戻す
【FM dB表示調整】
・83MHz 70dB → VR602調整 → 表示70dB
・83MHz 30dB → VR601調整 → 表示30dB
・上記作業を数回繰り返す
【モノラル歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T204(黒)調整 → モノラル歪最小
【ステレオ歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T202(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【ステレオ歪調整:NARROW】
・IF BAND=NARROW
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T201(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【FM同調点調整】
・IF BAND=NARROW
・TP103 DC電圧計セット
・83MHz 70dB → T206調整 → 0V±1.5mV
【MUTINGレベル調整】
・MUTING=ON
・83MHz 20dB → VR604調整 → MUTING作動確認
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → VR401調整 → Lchもれ最小
・83MHz 70dB → VR402調整 → Rchもれ最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【パイロット信号キャンセル調整】
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → VR403調整 → 19kHzもれ最小
・左右chのバランスに注意
【REC CAL調整】
・83MHz 70dB → 通常受信で出力レベル記録
・83MHz 70dB → VR404調整 → 上記記録-6dBに設定
・TONE 422Hz
●AM部
【VT電圧】
・TP102 DC電圧計セット
・受信周波数 522kHz → L302調整 → 1.8V±0.1V 実測1.8V
・受信周波数1629kHz → TC302調整 → 22.0V±0.1V 実測19.9V
・上記作業を数回繰り返す
【トラッキング調整】
・VR603 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・ 729kHz(NHK第一)受信 → L301調整 → 電圧最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC301調整 → 電圧最大
・上記作業を数回繰り返す
【AM dB表示調整】
・999kHz 90dB送信 → VR603調整 → ※AMのdB値は適当です

■試聴------------------------------------------------------
・当初は受信不能だったAM放送も受信できるようになりました
・FM/AMとも受信動作正常です
・雑音の原因はトリマコンデンサの接触不良だったと思います
・本機は電源に接続してあればメモリ内容は保持されます
・電源プラグを抜いてから2日間はバックアップされました
