・2024年12月、故障したT-7の二台セットが届きました
・バリコン機ながらモータードライブによる自動選局ができる名機です
・一台は以前修理調整した個体、もう一台は部品取り用の献体です
・さて二台とも直せるか、あるいはニコイチ合体か?
・以下作業記録です

■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 YAMAHA T-7 NATURAL SOUND STEREO TUNER ¥69,800円
・Hifi Engine Yamaha T-7 Natural Sound AM/FM Stereo Tuner (1980-82)
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■動作確認--------------------------------------------------
【SN/204709(以前修理した個体)】
・指針に内蔵されたTメーターが常時点灯したまま変化しない
・Sメーターは少し点灯したまま変化しない
・FM/AMとも局間ノイズも無く全くの無音状態
・REC CALトーンは聞こえますが、ひどく歪んだ音です
・電源部の基準電圧を測定したところすべて異常値でした
・これは電源回路が壊れているようです
・選局ツマミの回転軸に偏心があり、ツマミが楕円を描いて回転する
・指針の移動がぎこちない?糸がスリップしている感じ
【SN/202393(部品取り機)】
・TメーターとSメーターが点灯して受信しているようです
・STEREOランプも点灯しますが、ただ音が出ません
・REC CALトーンは正常音が聞こえました
・たぶんMUTINGが作動したまま解除されない状態と思います
・電源コンデンサがすべて交換済み、さらに改造痕も多々ありました
■内部確認--------------------------------------------------
【SN/204709(以前修理した個体)】
・前回修理では電源回路TR81(2SD400F)の故障でした
・メモリ保持用のバッテリーが交換されていました
・それ以外は変更点は無さそうです
【SN/202393(部品取り機)】
・外観はキズが多く、底板も凹んでいる
・すべての電解コンデンサーが交換済みでした
・あとフィルムコンデンサもいくつか交換済み
・バッテリーも交換済み
・多くの部品が交換済みなのでこの個体を活かす方針で進めます

■修理記録【SN/204709(以前修理した個体)】-----------------
・まずは電源電圧チェック
・基板表示+12 → 規定値+12.5±1v → 実測値+12.1v
・基板表示-12 → 規定値-13.5±1v → 実測値-14.8v ★
・基板表示+ 9 → 規定値+ 9.5±1v → 実測値+15.8v ★
・基板表示 9B → 規定値+10.5±1v → 実測値+15.2v ★
・電源回路を調べたところ、D131ツェナーダイオードの故障でした
・D131(RD10EB2):基板には「10v」とあるので10v新品に交換しました
・交換後は電圧値が正常化し、受信できるようになりました
・メモリー登録、自動選局も動きますが、、
・指針の移動がぎこちないのは選局つまみの偏心が原因でした
・フライホイール回転時、自動選局モーターの軸に接触するからです
・これを改善するため軸の偏心を力技で修正しました
・完全ではありませんが、モーター軸との干渉は解消できました
・これで自動選局時も指針移動がスムーズになりました
・TR81(2SD400F)は放熱板が付いたトランジスタです
・この機にTR81周辺の電解コンデンサ9個を交換しておきました
・熱の影響を避けるため意図的に斜めに固定しました
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■修理記録【SN/202393(部品取り機)】---------------------
・過去の事例を思い出しながら IC120(LC7200)-23pinをGNDに落とす
・すると予想通り受信音が聞こえてきました
・やはり何らかの理由でMUTINGが解除できない状態です
・この原因を探してオート選局回路の電圧測定を始めたところ
・FM/AM切換ボタンを押した瞬間にFM受信音が聞こえてきました
・これは、、ひょっとして、プッシュスイッチの接触不良か??
・前面に並んだプッシュスイッチを各100回操作
・これ以降は音が出なくなる現象は発生しなくなった、と思いましたが
・ランニングテスト中にまた再発、原因は別にあるようです
・そして更なる不具合を確認、強制DX(Narrow)にすると音が酷く歪みます
・Local(Wide)では正常な音声なので気づきませんでした
■調整記録--------------------------------------------------
【本体スイッチ設定】
・FUNCTION = FM
・RX MODE = AUTO DX
・MUTE/OTS = OFF
・BLEND = OFF
・REC CAL = OFF
・AM調整を先に行います
【AM OSC調整】
・ 600kHz受信 → T110調整 → シグナルメーター最大
・1400kHz受信 → AMOSC調整 → シグナルメーター最大
【AM RF調整】
・ 600kHz受信 → T109調整 → シグナルメーター最大
・1400kHz受信 → AMANT調整 → シグナルメーター最大
【FM同調点調整】
・IC111 20pin(またはR282)-GND → 電圧計セット
・SSG10.7MHzをCF101に注入 → T103調整 → 電圧ゼロ
【FM OSC調整】
・IC102 (LA1231) 13pin → 電圧計セット
・83MHz受信 → フロントエンドTC4調整 → 電圧最大
※OSCコイルL4の調整が難しいため83MHzのみで調整
【FM RF部調整】
・IC102 (LA1231) 13pin → 電圧計セット
・83MHz受信 → フロントエンドTC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
※RFコイルL1~L3の調整が難しいため83MHzのみで調整
【Mono歪調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz → TC101調整 → 高調波歪最小
【VCO調整】
・R263右足 → 周波数カウンタ接続
・83MHz → VR108調整 → 19kHz±10Hz
【ST SUB調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz SUB → T112調整 → Lchレベル最大
【Stereo歪調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR101 VR102 VR103,T102調整 → 高調波最小
【Pilot Cancel調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → T113,VR109調整 → 19kHz漏れ信号最小
【セパレーション調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR105調整 → Lch漏れ信号最小
・83MHz ST → VR106調整 → Rch漏れ信号最小
【シグナルインジケーター点灯調整】
・83MHz 100dB → VR112調整 LED全点灯
・83MHz 0dB → VR111調整 LED全消灯
【プリセットチューニング上限位置調整】
・自動選局時に指針がスケールを振り切らないように制限する設定
・90.5MHz受信 → プリセット5に登録
・83MHz付近でプリセット5を押し指針移動開始
・このとき90.2MHz付近で自動停止するようにVR113を調整する
【プリセットチューニング下限位置調整】
・75.5MHz受信 → プリセット1に登録
・83MHz付近でプリセット1を押し指針移動開始
・このとき75.8MHz付近で自動停止するようにVR114を調整する

■試聴------------------------------------------------------
・当初は電解コンデンサ総交換の部品取り機の復旧を試みましたが、
・改造跡が多くプリント配線が剥がれるなど随分傷んでいました
・依頼者様と相談の上、前回修理機をお返しすることになりました
・ボディや底板、選局ツマミなど程度の良い部品はすべて移植しました
・音が出ない部品取り機は研究材料として故障原因の調査を続けます
