・2024年10月、FX-711の修理調整作業を承りました
・以下、作業記録です
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 VICTOR FX-711 ¥49,800(1987年頃)
・オーディオ懐古録 Victor FX-711 ¥49,800
・Hifi Engine JVC FX-1100 FM/AM Computer Controlled Tuner
・FX-711 取扱説明書 PDF形式
■動作確認--------------------------------------------------
【提供者様からの事前情報】
・発売当時に新品購入したワンオーナー品
・長期間保管してあったものを最近使おうとしたら不具合あり
・-0.1MHzの周波数ズレ、受信感度低下、オート選局不可
【当方での確認事項】
・オート選局ではすべてのFM局を素通りして受信不可
・手動選局で確認すると-0.1MHの周波数で受信OK
・ズレた周波数でSTEREOランプ点灯、IF BAND切換OK、RF切換OK
・REC CALトーンもOK
・AMはオート選局で受信OKでした
・AMの周波数ズレなし
・オリジナルのAMループアンテナが同梱されていました
・初めて見ましたが、スリムな形状のループアンテナです
■内部確認--------------------------------------------------
・ボディを開けた瞬間強いたばこ臭、基板全体が黄色く変色してる
・部品とホコリがヤニでコーティングされている状態
・部品面、配線面とも修理痕は見当たらない
・まずは所定の電圧チェック → 異常なし
・Q801-E(+30V)→ +29.3V
・Q803-E(+12V)→ +11.8V
・Q808-E(-12V)→ -12.1V
・Q805-E( +5V)→ + 5.2V
・J705-3pin(+5.6V)→ +5.7V ※電源基板
・J705-5pin(-35V) →-34.3.V ※電源基板
■調整記録--------------------------------------------------
●FM部
【VT電圧】
・TP101 DC電圧計セット
・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V
・受信周波数 90MHz → TC105調整 → 22.0V±0.1V
・上記作業を数回繰り返す
【RFトラッキング調整】
・VR602 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・76MHz 40dB → L103,L104,L105,L106調整 → 電圧最大
・90MHz 40dB → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → 電圧最大
★TC101~104調整で最大電圧が定まらない
【IFT調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 40dB → T101調整 → 電圧最大
【PLL検波 VCO調整】
・TP104 周波数カウンタ接続
・受信バンド切替 → AM
・何も受信しない状態 → T208粗調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・何も受信しない状態 → T208微調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・受信バンド切替 → FMに戻す
【FM dB表示調整】
・83MHz 70dB → VR602調整 → 表示70dB
・83MHz 30dB → VR601調整 → 表示30dB
・上記作業を数回繰り返す
【モノラル歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T204(黒)調整 → モノラル歪最小
【ステレオ歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T202(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【ステレオ歪調整:NARROW】
・IF BAND=NARROW
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T201(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【FM同調点調整】
・IF BAND=NARROW
・TP103 DC電圧計セット
・83MHz 70dB → T206調整 → 0V±1.5mV
【MUTINGレベル調整】
・MUTING=ON
・83MHz 20dB → VR604調整 → MUTING作動確認
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → VR401調整 → Lchもれ最小
・83MHz 70dB → VR402調整 → Rchもれ最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【パイロット信号キャンセル調整】
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → VR403調整 → 19kHzもれ最小
・左右chのバランスに注意
【REC CAL調整】
・83MHz 70dB → 通常受信で出力レベル記録
・83MHz 70dB → VR404調整 → 上記記録-6dBに設定
・TONE 430Hz
●AM部
【VT電圧】
・TP102 DC電圧計セット
・受信周波数 522kHz → L302調整 → 1.8V±0.1V 実測1.8V
・受信周波数1629kHz → TC302調整 → 22.0V±0.1V 実測19.9V
・上記作業を数回繰り返す
【トラッキング調整】
・VR603 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・ 729kHz(NHK第一)受信 → L301調整 → 電圧最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC301調整 → 電圧最大
・上記作業を数回繰り返す
【AM dB表示調整】
・999kHz 90dB送信 → VR603調整 → ※AMのdB値は適当です
■修理記録:トリマコンデンサ交換----------------------------
・フロントエンドのトリマコンデンサTC101~104が劣化してるようです
・TC101~TC105 → 新品(10pF)5個交換
・VT電圧調整、RF調整をやり直したところ感度が大幅アップしました
・交換後にその他調整項目もすべてやり直しました
・同様にAM回路のトリマコンデンサ2個も予防交換しておきました
・TC301~TC302 → 新品(20pF)2個交換
■試聴------------------------------------------------------
・本機のシグナルメーターはdB数値はなかなか正確な値を示します
・上下2点調整するので30dB~70dBの範囲内は数値をほぼ信用できます
・ちなみに、40dB程度でもSTEREOインジケーターは点灯しますが、
・良い音を望むなら60dB以上、できれば70dB以上の電波が欲しいところ
・そのためにアンテナの向きを変えたり増強したり、
・アンテナ環境の整備に努力が必要です