・2024年9月初め、具合が悪いというL-07TIIが届きました
・FM受信中にノイズが気になるそうです
・以下、作業記録です
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO L-07TII ¥130,000(1979年頃)
・オーディオ懐古録 TRIO L-07TII FM STEREO TUNER ¥130,000
・Hifi Engine Kenwood L-07T FM Stereo Tuner (1977-81) USD625
■動作確認--------------------------------------------------
・フロントパネル左下角が潰れて変形しているので落下歴があるかも
・選局ツマミに目立つひっかき傷、外観には経年の歴史を感じます
・さて電源オン、周波数窓と二つのメーター照明点灯
・FM同軸ケーブルを接続して名古屋地区のFM局を受信すると、
・局周波数付近でSメーターが大きく振れ、Tメーターが中点を示す
・周波数ズレなし、Sメーター最大点とTメーター中点が一致する
・STEREOランプが点灯しFM音声が聞こえてきました
・背面の「PASSED」シールが破れているので調整歴があるかも?
・IF BAND切換、MUTING切換、MPX FILTER切換など操作OK
・特に問題なし、、と思っていたら
・ときどき「プツプツ、ブチブッ」と不定期に雑音の混入を確認
・マルチパスH端子からの音声にも同じ雑音が混入している
・雑音発生時もFM音声はちゃんと聞こえている
・雑音が発生するタイミングは不定期で規則性はなさそう
■内部記録--------------------------------------------------
・電源基板の電解コンデンサーがオーディオクラス品に交換済み
・背面の「PASSED」シール位置にフロントエンドの調整口がありますが
・このシールが破れている、つまり再調整歴がありそう
・主要なICやトランジスタの足に最近磨いた痕跡あり
・たぶん過去にメンテナンスを受けた個体のようです
・しかし基準音を受信してWavespectraで波形を見ると様子がおかしい?
・まずノイズフロアが異常に高い、それに音声出力レベルが低い
・つまりS/N比が大幅に悪化している状態です
・これは電源系統に問題あるのか?
・でも電解コンデンサーは交換済みだし、、?
■修理記録;パルスカウント検波基板FL1(LPF)----------------
・メーター動作正常、マルチパスH端子から同じ雑音が聞こえる
・こうなると雑音の発生源はパルスカウント検波基板が怪しいです
・電源トランス横の金属箱に収まったパルスカウント検波基板を確認
・パルスカウント検波基板は底板を外して底面側からアクセスできます
・過去のトラブル事例から考えて不調原因は次のどちらか
・FL1(LPF)内蔵コンデンサーの黒化劣化
・IC3(HA1457)足の腐食
・まず手始めにIC3(HA1457)を取り外して確認したところ
・既に HA1457W に交換済みでした。足にマイグレーションありません
・となると次に怪しいのはFL1(ローパスフィルター)
・これを取り外して内蔵コンデンサを確認
・3本の内2本が黒く変色していました
・対策として3本とも除去し、68pF×2個と39pFを基板に外付けしました
・作業後、今のところ雑音は発生していません
・意外な改善効果としてノイズフロアが大幅に低下し出力レベル上昇
・FL1の不調が不規則ノイズ以外にも影響していたようです
■調整記録--------------------------------------------------
・MUTING オフ
・IF BAND wide
【FM OSC調整】
・76MHz → OSCコイル調整 → Sメーター最大
・90MHz → OSCトリマ調整 → Sメーター最大
※OSC調整孔がユニット背面側にあるのでアクセスが難しい。
※背面パネルの「PASSED」シールを剥がすと丸穴がある。
※柄の長いセラミックドライバーがあれば調整可能。
【RF調整】
・76MHz → L1,L3,L4,L5,L7,L8調整 → Sメーター最大
・90MHz → TC1~TC6調整 → Sメーター最大
・83MHz → L10調整 → Sメーター最大
【Sメーター調整】
・83MHz → T3調整 → Sメーター最大
・VR1 → MAX回しきる
・83MHz,100dB → VR2調整 → Sメーター目盛10
・83MHz, 10dB → VR1調整 → Sメーター目盛 1
【Tメーター調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz → 高調波歪が最小になる位置で受信
・83MHz → T2調整 → Tメーター中点
【ノイズアンプ調整】
・Q14-G 電圧計セット
・離調時 → VR4調整 → 7.0~7.5V
・同調時 → 0V 確認のみ
【2nd IF調整】
・TP16 → 周波数カウンタ接続
・T4調整 → 1.96MHz
【MUTING調整】
・83MHz 20dB → VR3調整 → Muting作動位置
【パイロット信号キャンセル調整】
・83MHz ST変調 → VR6調整 → 19kHz漏れ信号最小
【VCO調整】
・R107左足 → 周波数カウンタ接続
・83MHz受信 無変調 → VR5調整 → 76kHz
【セパレーション調整】
・wide
・83MHz ST信号 → VR7調整 → 漏れ信号最小
・83MHz ST信号 → VR8調整 → 漏れ信号最小
・narrow
・83MHz ST信号 → VR9調整 → 漏れ信号最小
■試聴------------------------------------------------------
・FL1の修理でノイズフロアが落ち着いたのは意外な効果でした
・それにしてもパルスカウント検波回路のLPFは鬼門ですね