・2024年9月、ST-A35の故障品が届きました
・HOジャンクコーナーで何度か見かけた事があるような気がします
・今回初めて内部を見る機会をいただきました
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SONY ST-A35 ¥35,000(1980年頃)
・Hifi Engine SONY ST-A35 AM/FM Stereo Tuner (1980-81)
■動作確認--------------------------------------------------
・経年の汚れはあるものの外観に目立つキズはない
・フロントパネルはほぼ無傷、既に清掃済みのようです
・FMアンテナ用にF端子が無いのが入門機の残念なところ、、
・さて75Ω~300Ωの変換アダプタを介してFMアンテナを接続
・電源オン、緑色の優しい照明が周波数窓をライトアップ
・指針は鮮やかな赤色照明点灯、照明窓の雰囲気は想像以上に良い
・Sメーターは5連灯の緑色LEDインジケーター式
・TメーターもLED式で中点では緑色、左右に離調すると赤色で点灯
・Tメーターの針の動きをLEDの点灯具合で再現するタイプです
・肝心のFM受信ですが、-2.5MHzの大幅な周波数ズレで受信
・例えばNHK-FM(名古屋)82.5MHzを80.0MHz付近で受信
・でもズレた位置でACCUTE SERVO LOCK点灯(Tメーター中点)
・STEREOインジケーター点灯、MUTING動作OK、REC CALトーンOK
・正常な音声が聞こえてきました
・気になるのはSメーターが下から2灯しか点灯しないこと
・一方AMは背面バーアンテナで名古屋地区のAM局を受信OK
・AM受信に問題は無さそうです
■内部確認--------------------------------------------------
・ICの型番は異なるものの、内部構成は ST-A40 によく似ています
・FM4連、AM2連フロントエンドユニット → CF3段
・IC201:HA11225:クアドラチュア検波
・IC301:HA12016:PLL MPX
・IC401:LA1240 :AM TUNER
・このフロントエンドユニットは、はっきり見覚えがあります
・そう、TRIO KT-900/KT-990に搭載されたユニットと同じタイプです
・このユニットでは±2MHz前後も周波数がズレる故障が多発しています
・試しに局発トリマコンデンサCT-104を回してみると、全く変化なし
・周波数ズレの原因は局発トリマの容量抜けで間違いなさそうです
■修理記録:トリマコンデンサ交換----------------------------
・局発トリマの交換はTRIO KT-900/KT-990で修理経験を重ねました
・まずユニットの金属フレームに新トリマ(10pF)を外付けします
・材料はM3サイズの小ネジ、座金ワッシャー、丸型圧着端子
・ユニット外側の穴に丸形圧着端子とワッシャーとともにネジ止め
・圧着端子にトリマGND足をはめ込んでハンダ付け
・圧着端子を折り曲げるとトリマの活栓側が端子と重なります
・後述のOSC調整で周波数ズレは解消できました
■調整記録--------------------------------------------------
【SERVO LOCK停止】
・IC601 JRC4558C-5ピン → GNDに落とす
・これによってSERVO LOCK(AF)機能停止
【FM同調点調整】
・音声出力をWaveSpectraで観測
・TP1-NULL 電圧計セット
・83.0MHz受信 → 歪率が最小になる位置を探す
・IFT201(奥)調整 → TP電圧ゼロ
・IFT201(前)調整 → 高調波歪最小
【FM OSC調整】
・調整はCT104のみ
・RT201 → Sメーター調整VRに電圧計セット(Sメーター代用)
・83.0MHz → 指針を83MHzにセット → CT104調整 → 電圧最大
【FM RF調整】
・L101、L102、L103はコイル間隔を調整するタイプ
・これは上手く調整できないの今回はノータッチ
・RT201 → Sメーター調整VRに電圧計セット(Sメーター代用)
・83.0MHz受信 → CT101,102,103調整 → 電圧最大
・83.0MHz受信 → T101調整 → 電圧最大
【FM高調波歪調整】
・音声出力をWaveSpectraで観測
・83.0MHz受信 → IFT201(前)調整 → 高調波歪最小
【SERVO LOCK停止解除】
・IC601 JRC4558C-5ピン → 解除
【Sメーター点灯調整】
・RT201
【MUTING動作点調整】
・RT202
【VCO調整】
・TP VCO に周波数カウンター接続
・83.0MHz(無変調)受信 → RT302調整 → 76.0kHz
【セパレーション調整】
・音声出力 → WaveSpectra観測
・83.0MHz(ST)受信 → RT301調整 → 左右の漏れ信号最小
★トラブル発生、RT301を回してもセパレーション値が変化しない?
【REC CAL調整】
・音声出力レベルを記録
・RT601調整 → -6dB設定 ※404Hz
【AM OSC調整】
・AM 600kHz → 指針 600kHz位置にセット → T401調整
・AM1400kHz → 指針1400kHz位置にセット → CT402調整
【AM RF調整】
・AM 600kHz → バーアンテナ内コイル調整
・AM1400kHz → CT401調整
■修理記録:セパレーション調整RT301交換---------------------
・調整作業時に気が付いたのですが、RT301を回しても値が変化しない
・セパレーション値20dB程度で左右とも変化しない
・STEREOインジケーターは点灯して左右分離は出来ています
・試しにRT301(104)を外して抵抗値を確認すると何と無限大、、
・これを同型品100kΩに交換して解決できました
・この後セパレーション調整が完了できました
■試聴------------------------------------------------------
・特に緑色に浮かび上がる周波数窓がイイ雰囲気を醸し出します
・見た目に関してはST-A40よりも美しくて癒されます
・入門機らしくシンプルな構成ですがFM/AMとも不満無く使えます
・BGM用途やインテリアとしてお勧めします