・2023年4月、KT-900の故障機が届きました
・以下、作業記録です
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-900 ¥49,800(1980年頃)
・オーディオ懐古録 TRIO AM-FM STEREO TUNER ¥49,800円(1980)
・Hifi Engine Kenwood KT-900 AM/FM Stereo Tuner (1980-82)
■動作確認------------------------------------------------------------
・全体に経年の汚れ、ボディには目立つキズ跡
・ただ幸いなことにフロントパネルをボディに固定するプラスチック部分は無事
・電源OK、照明ランプ点灯、周波数指針点灯。電球切れは無さそう。
・名古屋地区のFM放送局を受信しようとすると、、
・+0.5MHz程度ズレた周波数で名古屋地区のFM局を受信OK
・STEREOランプ点灯するが、出てくる音がかなり歪んでいる感じ
・高調波歪が被っているような音が聞こえる
・REC CAL トーンは発信音が正常に聞こえる
・適当なループアンテナでAM放送は受信OK
・問題はFM受信ですね
■内部確認------------------------------------------------------------
・フロントパネルをボディに固定するプラスチック部分は割れていました
・欠損したパーツが内部に見当たらない → 既に開腹された履歴あり
・フロントエンド内OSCトリマコンデンサー(TC4)を回しても全く変化なし
・同調IFT L4調整 → ズレた周波数でFM同調点調整OK
・VR5:VCO調整 → 調整OK、76kHzOK
・MPX-IC:HA12016 2pin コンポジット信号正常
・MPX-IC:HA12016 4pin 音声Lch ★酷い高調波歪あり
・MPX-IC:HA12016 7pin 音声Rch ★酷い高調波歪あり
■修理記録:OSCトリマ交換---------------------------------------------
・フロントエンド内OSCトリマコンデンサー(TC4)を回しても変化なし
・これを撤去し、ユニット外側に新トリマー(10pF)を直付け
・直径3mm穴の開いた小さな圧着端子に新トリマを固定しました
・下記受信調整によって周波数ズレは解消しました
・ただ酷い高調波歪は解消せず
■修理記録:HA12016交換-----------------------------------------------
・パルスカウント検波の音は正常、VCO調整も正常、しかし高調波が酷い
・MPX-IC:HA12016周辺の電解コンデンサをいくつか交換 → 効果なし
・これは HA12016自体の故障か?
・基板だけ保管していた別の KT-900から試しに HA12016 を移植
・すると酷い高調波歪が解消して正常な音声が聞こえてきました
・不調原因はHA12016の故障でした
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM OSC調整】
・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz 受信 → 新TC4調整 → 電圧最大
【FM RF調整】
・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz 受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
・83MHz 受信 → T1調整 → 電圧最大
【クアドラチュア検波調整】
・83MHz 受信 → 電圧最大状態
・TR7020-3Pin-11Pin → 電圧計セット(Tメーター)
・83MHz 受信 → L4調整 → 電圧ゼロ(Tメーター中点)
【WIDE GAIN調整】
・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz Narrow受信 → Sメーター電圧記録
・83MHz Wide受信 → VR1調整 → 上記電圧と同じ
【高調波歪調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz → T1(フロントエンド内)調整 → 高調波歪最小
【パルスカウント検波調整】
・TR4011-1Pin → 周波数カウンタセット
・83MHz受信 → L5調整 → 1.965MHz
【VCO調整】
・R56左足 → 周波数カウンタ接続
・SSG 83MHz 無変調 → VR5調整 → 76kHz
【セパレーション Narrow調整】※Narrow調整を先に行なうこと
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz Narrow → VR4調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【セパレーション Wide調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz Wide → VR3調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【REC CAL調整】
・83MHz受信 → 出力レベル記録
・83MHz受信 → VR2調整 → -6dB設定 ※439Hz
【AM受信調整】
・AMループアンテナ → 接続端子注意 [AM]~[GND]
・600kHz → L11,L12調整 → Sメーター最大点灯
・1400kHz → TC1,TC2調整 → Sメーター最大点灯
■試聴----------------------------------------------------------------
・分解して徹底清掃、照明に浮かび上がる独特の雰囲気を取り戻しました
・KT-990/900のガラス製フロントパネルはとっても素敵です
・ただ個人的にはKT-990の方が好みですね
・理由はKT-990はF型アンテナ端子があること、ボディ奥行きが小さいこと
・なのでKT-900は部品取り機として在庫が増えています