・2023年1月初め、KT-8300の故障機が届きました
・着手してみると、直しても直しても故障個所が次々に発覚するる、、
・久々の本格的ジャンク機でした
■製品情報------------------------------------------------------------
オーディオの足跡 TRIO KT-8300 ¥63,000(1978年発売)
・Hifi engine Kenwood KT-815 AM/FM Stereo Tuner (1979-80)
■動作確認------------------------------------------------------------
・外観は経年の汚れ、ボディに擦り傷多数、背面端子はすべて錆びついている
・長く使われていなかった個体のようです
・FMアンテナを接続して電源オン、照明窓の電球切れは無さそう
・名古屋地区のFM局で受信テスト開始すると、
・Tメーターは放送局周波数付近で中点を示すが、
・一方のSメーターは76~90MHz全区間で放送局に関係なく激しく振れる
・出てくる音は激しいノイズだけ、局間ノイズとは違ったバリバリという音です
・その雑音も聞こえたり全く聞こえなかったり
・固定/可変出力端子、マルチパスH端子も同じ状態
・STEREOインジケーターは全区間で意味なく明滅する
・LOCKEDインジケーターは淡く点灯したまま
・これはかなり重傷、というか瀕死の状態ですね
■内部確認------------------------------------------------------------
・バリコン軸の接点部分に緑青色のサビが浮き出ている
・LA1222、HA1137W、HA11223Wの足が真っ黒に変色
・切換スイッチの足も真っ黒です
・修理歴シールは見当たりません
・ハンダ面を見ても修理痕は無さそう
・HA1137W-6pin:クアドラチュア検波の受信音がキレイに聞こえました
・クアドラチュア検波コイルT2も正常に調整可能
・HA1137W-13pin:Sメーター電圧は正常に反応している
・つまりフロントエンド~IF回路~HA1137Wまでは生きています
・これは少し希望が見えてきました
■修理記録:背面端子のハンダ割れ--------------------------------------
・固定端子、可変端子とも音(ノイズ)が出たり出なかったり
・マルチパスH端子も同じ状態です
・端子に触れると変化するのでハンダ割れの可能性が高いか?
・底面の点検口から覗くとハンダ割れが目視で確認できました
・ハンダの盛り直し作業のため背面パネルを外してみると
・固定/可変端子、マルチパスH/V端子とも見事なハンダ割れ状態でした
・端子を載せた基板はシャーシと背面パネルにネジ止めされています
・製造時、基板にストレスが加わった状態でネジ止めされていたのかも?
・アンテナ端子も含めて大盛ハンダを追加しておきました
・まだ雑音しか聞こえませんが、まずは基本的な動作確認の準備完了
■修理記録:接点洗浄---------------------------------------------------
・真っ黒に変色したICやトランジスタの足を硬めの歯ブラシで磨く
・次にエレクトロニッククリーナー液を歯ブラシに吹き付けて磨く
・特に足の付け根付近を丹念に磨く
・続いてフロントエンド内、バリコン軸の接点を爪楊枝の先端で清掃
・次に最近不具合事例の多い切換スイッチの接点不良対策を実施
・フロントパネルのプッシュスイッチを操作してON/OFFを繰り返す
・スイッチの隙間からエレクトロニッククリーナーを噴射しさらにON/OFFを繰り返す
・以上の作業にも関わらず雑音の状態にまったく変化なし
■修理記録:Sメーターが激しく左右に振れる-----------------------------
・前工程でバリコン軸の接点を清掃したが状況は好転しない
・HA1137W-13pin:Sメーター電圧は正常に反応している
・でもSメーターの指針が激しく左右に振れる
・Sメーター調整用VR4を回しても状況は変化しない
・HA1137W-13pin以降のSメーター回路を追いながらいくつか部品交換
・電解コンデンサー、ダイオードを交換するもなぜか効果なし
・残るはSメーターの振れ具合を調整する可変抵抗VR4(473)のみ
・VR4(473):これを交換したところSメーターの振れ具合が正常になりました
・VR4が内部接触不良だったようです
・見た目や回転フィーリングは異常ないのにね、、
■修理記録:パルスカウント検波回路FL3修理-----------------------------
・フロントエンド~IF回路までは正常、でも出てくる音が酷いノイズだらけ
・これまでパルスカウント検波機で頻繁に遭遇したフィルター故障が怪しそう
・試しにFL3(L79-0080-05)を外して前後の回路を直結してみたところ、、
・期待通り音声端子からFM受信音が聞こえてきました
・FL3をバイパスしたので高調波が多い音ですがそれでもまた一歩前進
・取り外したFL3裏面に埋め込まれた内蔵コンデンサー3個を慎重に除去
・細い配線を切断にはデザイン用の先の細いカッターナーフを使っています
・代わりにハンダ面に温度補償型コンデンサ3個(68pF,68pF,33pF)を追加
・これでようやく固定/可変端子からパルスカウント検波音が聞こえてきました
■修理記録:オペアンプHA1457交換--------------------------------------
・さて次なる不具合は左chの音声だけが激しく歪むこと
・これは復調後のAF回路のオペアンプIC5(HA1457)故障でした
・これを新品(HA1457W)に交換、ついでに右chも同時に交換
・さらに同じICを使っているIC7も予防交換しておきました
・HA1457Wはどこで入手できるか? よく聞かれる質問ですが
・私は数年前、某オクで100個1,000円くらいで大量入手しました
・最近はかなり高額になっているようでビックリです
■修理記録;パルスカウント検波フィルター交換--------------------------
・ここまでの修理で通常使用できるまでに復旧しました
・受信調整後はSTEREOランプ点灯、LOCKランプも正常に動作します
・受信動作はほぼ正常と言える状態に復旧しました
・ただ不定期に「ザザ、、ザザ、、」という短いノイズが混入します
・WaveSpectraで波形を見ているとノイズフロアが不意に上下する症状です
・これも見覚えがある不具合かも、、
・FL6(L79-0094-05)青色
・FL1(L79-0095-05)黄色
・FL6(L79-0096-05)緑色
・FL6(L79-0094-05)白色
・パルスカウント検波回路にある4連のフィルターですが、
・先に修理したFL3と同様に内蔵コンデンサーに不具合が多い傾向です
・兄弟機KT-8100から部品取りしたあった同型フィルターに順次交換
・この状態でしばらく経過観察します
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM OSC調整】
・マルチパスV端子 → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz 受信 → TCo調整 → 電圧最大
【FM RF調整】
・マルチパスV端子 → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz 受信 → TCA1,TCA2,TCR1,TCR2調整 → 電圧最大
【Tメーター調整1】
・SSG 83MHz 1kHz 60dB
・83MHz M0NO → T2調整 → Tメーター中点
【Tメーター調整2】
・SSG 83MHz 1kHz 60dB
・83MHz M0NO サーボロックON → VR10調整 → Tメーター中点
【Sメーター調整】
・SSG 83MHz 1kHz 60dB
・83MHz MONO → VR4調整 → Sメーター「目盛り4.8」
【WIDE GAIN調整】
・SSG 83MHz 1kHz 60dB
・83MHz MONO NARROW受信 → Sメーター目盛り位置を確認
・83MHz MONO WIDE受信 → VR1調整 → SメーターNARROWと同じ位置
【DISTORTION調整】
・固定出力端子 → WaveSpectra接続
・SSG 83MHz 1kHz 60dB
・83MHz MONO → L8(フロントエンド内)調整 → 歪最小
【パルスカウント検波調整】
・R91左足 → 周波数カウンタセット
・SSG 83MHz 無変調 60dB
・83MHz受信 → T6調整 → 1.96MHz
【MUTING調整】
・SSG 83MHz 1kHz 30dB
・83MHz MONO → VR2調整 → MUTING開始位置確認
【VCO調整】
・R97後足 → 周波数カウンタ接続
・SSG 83MHz 無変調 60dB
・83MHz受信 → VR5調整 → 76kHz
【パイロットキャンセル調整】
・固定出力端子 → WaveSpectra接続
・SSG 83MHz 60dB Pilot信号
・83MHz ST受信 → VR6調整 → 19kHz信号最小
【WIDE セパレーション調整】
・固定出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz WIDE Rch → VR7調整 → 反対chへの漏れ信号最小
・83MHz WIDE Lch → VR8調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【NARROW セパレーション調整】
・固定出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz NARROW L/R → VR9調整 → 反対chへの漏れ信号最小
■試聴---------------------------------------------------------------
・完治とは言えませんが、とりあえず使える状態までは復活しました
・この状態で動作確認続行です