・2022年5月、薄型チューナーの故障機が届きました。
・表示部に「76.1」と表示するだけで操作不能だそうです。
・さて、直せるのか??
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Technics ST-S7A ¥54,800(1983年発売)
・Hifi engine Technics ST-S707 AM/FM Stereo Tuner (1983-85)
・グッドデザイン賞 1983 商品デザイン部門
■動作確認------------------------------------------------------------
・高さ54mm、奥行き245mm、薄型かつ奥行きも小さなコンパクトサイズです。
・さすがグッドデザイン賞受賞機。
・FMアンテナを同軸ケーブル経由F型端子で接続。
・電源オン、、しかし表示部に「76.1MHz」と薄く表示されるだけ。
・周波数のUP/DOWNボタンを押しても反応しない、周波数が変化しない
・一方AM切換ボタンを押すとAM周波数が明るく点灯。
・UP/DOWNボタンでAM周波数が操作可能、実際にAM放送の受信も可能
・REC CALトーン は信号音が聞こえる
・問題は電源回路か、FM受信回路か、それとも、、??
■内部確認------------------------------------------------------------
・フロントエンド:5連バリキャップ、ディスクリート構成
・IF切換は Normal / Super narrow の2段階
・IC101:uPC1018C / AM FM IF Amplifier
・IC102:uPC1167C / FM Det
・IC301:AN7471S / FM Stereo Multiplex Demodulator(※基板面)
・IC901:uPD1707G / MICROCONTROLLER WITH PLL(※基板面)
・底面には点検口がありません。基板面を見るには分解する必要あり。
・ゴールドキャパシタ(2.3v/3.3F)×2個が足元から粉を噴いている。
・電源回路の電解コンデンサが黒く煤けた感じ。
・海外機ST-S707回路図と比較するとフロントエンドの造りに違いがありました。
・国内機=ディスクリート、海外機=モジュール
・それ以外はほぼ同じと思います。部品番号も同じでした。
■修理記録:電源回路修理、キャパシタ交換------------------------------
・電源回路の規定電圧確認
→+14.7v → +14.5v 〇
→+ 5.7v → + 3.2v ★→ +5v系に異常ありそう
→-31.8v → -30.5v 〇
・+5v系 Q701(2SC1815)の各電圧が微妙に低い?
→Q701(2SC1815)-E +3.2v(規定値5.7v)★
→Q701(2SC1815)-C +8.0v(規定値8.9v)★
→Q701(2SC1815)-B +4.4v(規定値6.4v)★
・Q701(2SC1815)とその上流側の電解コンデンサを一気に交換。
・底面に点検口が無いので部品交換は基板を取り外す必要があります。
・交換しながらの動作チェックできないので交換作業は一気に進めました。
・ついでに粉を噴いたゴールドキャパシタも交換しました。
→Q701 2SC1815GR → 2SC1815GR
→C702 470uF/25v → 470uF/25v
→C703 1000uF/16v → 1000uF/25v
→C711 100uF/10v → 100uF/25v
→C712 470uF/25v → 470uF/25v
→C714 330uF/16v → 330uf/25v
→C507 10uF/16v → 10uf/50v
→C508 0.47uF/50v → 0.47uF/50v
→C907,908 3.3F/2.3v → 1F/5.5v
・基板を組み立て直して電源オン!
・FM周波数がクリアに表示されUP/DOWNボタンで操作できるようになりました。
・FM放送受信OK、STEREOインジケーターも点灯します。
・電源部の電圧再チェック
→Q701(2SC1815)-E 5.6v(規定値5.7v)〇
→Q701(2SC1815)-C 9.0v(規定値8.9v)〇
→Q701(2SC1815)-B 6.5v(規定値6.4v)〇
・取り外した部品を確認したところ故障部品は C703 1000uF/16v でした。
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM TP電圧調整】
・TP1~GND → 電圧計セット
・76.1MHz → L7調整 → 2.9v
・89.9MHz → CT1調整 → 11.3v
【FM同調点調整】
・TP101~TP102 → 電圧計セット
・83.0MHz受信 → T101調整 → 電圧0.0v
【RF調整】
・IC102:uPC1167C-13pin → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83.0MHz受信 → L1,L2,L4,L5調整 → 電圧最大
・83.0MHz受信 → T1調整 → 電圧最大
【Sメーター調整】
・本体スイッチでシグナル強度表示に切換
・VR501調整 → dB表示設定
【検波調整】
・TP101~TP102 → 電圧計セット
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83.0MHz受信 → T101調整 → 電圧0.0v
・83.0MHz受信 → T102調整 → 高調波歪最小
【VCO調整】
・TP301 → 周波数カウンタ接続
・83.0MHz → VR301調整 → 19.00kHz
【Pilotキャンセル調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83.0MHz → L301調整 → 19kHz成分最小 ※左右バランス注意
【STEREO歪調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83.0MHz → T1調整 → 高調波歪最小 ※左右バランス注意
【セパレーション調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83.0MHz → VR302調整 → Lch漏れ信号最小
・83.0MHz → VR303調整 → Rch漏れ信号最小
【AM VT電圧調整】
・TP202(C202前足)→ 電圧計セット
・ 522kHz → L203調整 → 1.0v
・1611kHz → 6.9v 確認のみ
【AM受信調整】
・ 729kHz受信 → L202調整 → 最適位置
・1332kHz受信 → CT201調整 → 最適位置
■試聴----------------------------------------------------------------
・一般的にはWIDE/NARROWの選択ですが本機では NORMAL/SUPER NARROW です。
・オート選局で同調するときIFモードが自動選択されます。
・シグナル強度はdB値で表示、テストトーンは周波数表示。
・フロントパネル、メモリボタンの錆を落とせば完全復活です。