・2021年11月、KT-7700の故障機が届きました。
・時々音が出なくなるそうです。
・以下、ちょっと難航した作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-7700 ¥78,000(1976年頃)
・オーディオ懐古録 TRIO KT-7700 ¥78,000(1976年)
・TRIO KT-7700/KT-7500 カタログ 1976年5月版
・Hifi Engine KENWOOD KT-8300 ※輸出機 型番注意!
■動作確認------------------------------------------------------------
<依頼者様からの不具合情報>
・正常に受信しているとき、急にTメーターが振れなくなり受信不能になる
・この症状が出るとツマミをいじっても電源を入れ直してもダメ。
・発症直前に「ゴソゴソ」と雑音が発生する特徴あり
<当方で確認した不具合症状>
・動作確認を始めてから約2週間後、ご指摘の症状を確認しました。
・正常に受信していたら急に「ガサガサ」と雑音が混入
・マルチパスH端子からも同じ雑音が出ることを確認
・しばらく雑音が続いた後、受信音が途切れた
・このときSメーターは大きく振れたまま
・Tメーターは中点を示したまま離調してもピクリとも動かない
・IF BAND WIDE/NARROWとも音が出ない
・MONO/STEREOとも音が出ない
・マルチパスH端子からも音が出ない
・電源オフ、翌日再度確認したら正常に受信できています。
・これは原因究明が難しそう、、
■修理記録:検波回路の部品交換----------------------------------------
・当初はKT-7700 修理調整記録4 で経験した不具合症状と似ていると思いました。
・そこで前回と同じ処置を施しました。
・IC11(JRC4558TA) → JRC4558DD交換
・L11内蔵コンデンサ除去 → 外付け39pF追加
・この状態で動作確認を2週間継続しました。
・音が出なくなる症状は再発しませんが、、
・しかし特徴的な「ガサガサ」という雑音は不定期に発生します。
・この雑音はマルチパスH端子でも確認できます。
・つまり検波回路以前で発生しているということ。
・WaveSpetraで雑音発生時の様子を見るとノイズフロアが大きく上下しています。
■修理記録:雑音源捜索------------------------------------------------
・検波回路とミューティング回路のトランジスタや電解コンデンサ交換
・部品交換 → 動作確認 → 雑音確認 → 別の部品交換
・故障個所が特定できないのでブロック単位で部品交換&雑音確認の繰り返し。
・補修、交換した部品は以下の通り、、
・Q1,Q2(2SK55) → 洗浄
・Q5,Q6,Q7,Q35,Q36(2SC535) → 洗浄
・Q15,Q16,Q17(2SC1345D) → 2SC1815GR交換
・Q8,Q9(2SA733) → 2SA1015交換
・Q10,Q11,Q12,Q13,Q14(2SC945) 2SC1815GR交換
・C51 220uF/16v → 220uF/25v
・C52 100uF/16v → 100uF/25v
・C46,C54,C55 1uF/50v → 1uF/50v
・C60 3.3uF/50v → 3.3uF/50v
・C61 47uF/16v → 47uF/25v
・C53 10uF/25v → 10uF/50v
・C38 1uF/50v → 1uF/50v
・C39 3.3uF/50v → 3.3uF/50v
・C98 27pF → 27pF
・C40.C48 1uF/50v → 1uF/50v
・C47,C58 3.3uF/50v → 3.3uF/50v
・C59 10uF/25v → 10uF/25v
・C77,C78 100uF/10v → 100uF/25v
・C70 47uF/16v → 47uF/25v
・C115 0.22uF/35v → 0.22uF.50v
・小さな検波回路基板を取り外して洗浄
・最後作業から1週間の動作確認で雑音が再発しません。
・たぶん、直ったと思います、歯切れの悪い言い方ですが、
■原因(推定)-------------------------------------------------------
・メイン基板の検波回路の主要部品はすべて交換しましたが完治しない。
・次に小さな検波回路基板の金属カバーを外した状態で動作確認を行いました。
・受信中に MC1496K に触れると「ガサガサ」と同じ雑音が発生します。
・小さな検波回路基板を取り外し、エレクトロニッククリーナーで洗浄。
・この作業によって「ガサガサ」というノイズが発生しなくなりました。
・MC1496K の足が変色していたので、ここがノイズ源だった可能性高いです。
■調整記録------------------------------------------------------------
【検波調整】
・IF BAND=NARROW
・アンテナ入力なし → VR 4調整 → Tメーター中点
・IF BAND=WIDE
・アンテナ入力なし → VR12調整 → Tメーター中点
【フロントエンドOSC調整】 ※OSCトリマ調整孔が背面にありますが、隙間が狭いのでこれを回すのは難しいです。
※+0.1MHzの周波数ズレはご容赦ください。
※セラミックドライバーをこの隙間に入るサイズに切断して調整できました
※スケール中央(83MHz)付近では指針と目盛りがほぼ一致します。
【フロントエンドRF調整】
・TP1(R77右足)→ DC電圧計セット
・IF BAND=NARROW
・76MHz 60dB 受信 → RFコイル6個調整 → 電圧最大
・90MHz 60dB 受信 → RFトリマ6個調整 → 電圧最大
【検波調整】
・IF BAND=NARROW
・アンテナ入力なし → VR 4調整 → Tメーター中点
・IF BAND=WIDE
・アンテナ入力なし → VR12調整 → Tメーター中点
【IFトリガー調整】
・TP1(R77右足)→ DC電圧計セット
・83MHz 60dB 受信 → L11調整 → 電圧最大
・83MHz 0dB 受信 → L10調整 → 電圧最大(※L10 フロントエンド内)
【IFトリガーレベル調整】
・83MHz 60dB 受信 → VR2調整 → 電圧DC1.8V
・アンテナ入力なし→ VR1調整 → 電圧DC0.6V
【Sメーター振れ調整】
・83MHz 80dB 受信 → VR3調整 → Sメーター目盛り5
【MUTING調整】
・MUTING=1
・83MHz 16dB 受信 → VR9調整 → MUTING作動
【VCO調整】
・周波数カウンタをTP2接続
・アンテナ入力なし → VR 7調整 → 19kHz
【OUTPUTレベル調整】
・FM DET OUT端子にAC電圧計セット
・76MHz 1kHz 100%変調 60dB 受信 → VR10調整 → 電圧AC300mV
【セパレーション調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz ST信号 60dB受信 → VR 5調整 → Lch信号最小
・83MHz ST信号 60dB受信 → VR 6調整 → Rch信号最小
【ステレオ歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz ST信号 60dB受信 → L10調整 → 高調波歪最小
【DEVIATIONメーター調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 60dB 受信 → VR 8調整 → Dメーター目盛り100%
■試聴----------------------------------------------------------------
・お預かりしてからずいぶん時間がかかりましたがとりあえず直ったようです。
・周波数目盛りと指針がほぼ一致するようになりました。
・不具合が再発するようでしたらご連絡ください。