・2021年5月、KT-1100Dの故障機が届きました。
・ちょっと難ありな状態です。
・さて、直せるでしょうか?
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 KENWOOD KT-1100D ¥74,800(1987年頃)
・Hifi Engine Kenwood KT-1100D AM/FM Stereo Tuner (1986-89)
・KENWOOD チューナーカタログ 1986年11月版
■動作確認------------------------------------------------------------
・外観に目立つキズは無く状態はとても良い。
・FMアンテナ端子がF型に交換済み。
・同軸ケーブルを接続して名古屋地区のFM局を受信テスト。
・オート選局上り方向 +0.1MHz周波数でFM局を受信。
・オート選局下り方向 -0.1MHz周波数でFM局を受信。
・ズレた周波数でSTEREOランプ明滅する。
・出てくる音はかなり歪っぽい。
・MODULATIONインジケーターが常時フル点灯
・IF BAND Wide/Narrow とも症状は同じ。
・RF Direct/Distanceとも症状は同じ。
・他のFM局を受信しても症状は同じ。
・手持ちのループアンテナで名古屋のAM局を受信テスト。
・AM放送はオート選局で正常に受信可能。
■修理記録:電源部電解コンデンサー交換--------------------------------
・内部確認時に目視で分かる劣化した電解コンデンサーを交換
・C120,C137/10uF/35v → 10uF/50v
・どちらも熱で炙られたようでスリーブが後退している。
・これを新品に交換。
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L14調整 → 3.0V±0.1V
・90MHz → TC1調整 →25.0V±0.1V
【検波調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L9調整 → 0.0V±10mV
・TP12~TP13 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L12調整 → 0.0V±10mV(粗調整)
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L11調整 → 0.0V±10mV(微調整)
【RF調整】
・R67左側 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・83MHz(1kHz,100%変調,40dB)→ L1,L4,L7,L18調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・R64右側端子 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・83MHz(1kHz,100%変調,30dB)→ L10調整 → 電圧最大
【AUTO STOP=MUTING調整】
・83MHz(1kHz,100%変調,30dB)→ VR1調整
【TUNING METER調整】
・SELECTOR:MONO
・83MHz(1kHz,100%変調,80dB) → 本体左側小基板VR2調整 → ※
※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【SIGNAL METER調整】
・SELECTOR:MONO
・83MHz(1kHz,100%変調,80dB) → 本体左側小基板VR3調整 → ※
※バーグラフの点灯レベル調整
【MPX VCO調整】
・TP14に周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調,80dB) → VR4調整 → 19.00kHz±50Hz
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(SUB信号,1kHz,80dB)→ L25調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR3:DET調整 → 歪最小
【歪調整2 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR4:MONO2調整 → 二次歪最小
【歪調整3 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR6:MONO3調整 → 三次歪最小
【歪調整4 STEREO】
・83MHz(L/R信号,1kHz,80dB)→ VR5調整 → 歪最小
【歪調整5 STEREO】
・83MHz(SUB信号,1kHz,80dB)→ VR7調整 → 歪率最小
【歪調整6 NARROW】
・83MHz(MAIN信号,1kHz.80dB)→ VR2調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整 WIDE】
・IF BAND:WIDE
・83MHz(R信号,1kHz,80dB)→ VR2調整 → L信号もれ最小
・83MHz(L信号,1kHz,80dB)→ VR3調整 → R信号もれ最小
【SEPARATION調整 NARROW】
・IF BAND:NARROW
・83MHz(1kHz,80dB)→ VR1調整 → 信号もれ最小
【DEVIATION調整】
・83MHz(mono信号,1kHz,100%変調)→ 本体左側小基板VR4調整 → 100%位置
【AM簡易調整】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・522kHz → L20調整 → 実測 1.5V 確認のみ
・1629kHz→ TC2調整 → 実測 8.0V 確認のみ
・ 729kHz NHK第一放送受信 → L21調整 → Sメーター最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → TC3調整 → Sメーター最大
・1053kHz CBCラジオ受信 → L22調整 → Sメーター最大
・FM同調点が大きくズレていました。
・その他調整ポイントも修正しました。
■動作確認2----------------------------------------------------------
・上記調整後に再度動作確認を行いました。
・オート選局正常、STEREOランプ点灯、FM/AMとも良い音が出てきます。
・特に問題なさそう、、と思っていたら、、
・FM放送を受信中に突然「割れたような酷い音」が出てくるようになりました。
・このときMODULATIONインジケーターが常時振り切れた状態。
・STEREOランプは明滅している。
・他のFM局に切り換えてみると、オート選局は正常に動作する。
・周波数ズレなく他の局を受信できる。
・しかし出てくる音は同様に「割れた酷い音」。
・このときAM受信に切り換えるとAMは正常受信です。、
・どうやらFM検波回路に故障があるようです。
■修理記録:検波回路-----------------------------------------------
【検波調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L9調整 → 0.0V±10mV
・TP12~TP13 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L12調整 → 0.0V±10mV
・異常発生時、L9調整は正常値ですが、L12調整で電圧が安定しないことが判明
・検波回路 IC5:LA1231N-6ピン(AF OUT)→〇 正常な受信音
・検波回路 IC:NJM4560D-1ピン (FM OUT) →× 割れたひどい音
・これはPLL検波回路のどこかが故障している?
・そう思いながら検波回路の部品を指先で触っていたら、何と故障個所発見!
・検波回路C27:270pF スチコンのハンダが接触不良でした。
・スチコンに指で触れると音が歪んだり正常になったり、、
・ハンダ面を見ると見事なハンダ割れでした。
・検波基板を取り外してハンダ修正、再調整して修理完了しました。
・こんなところのハンダクラックは初体験でした。
■試聴----------------------------------------------------------------
・修理再調整から1週間、FM/AMとも正常動作しています。
・不具合症状から原因を探していく、この過程が私の楽しい時間です。
・頭の体操というか、ボケ防止に役立っている気がします。
・もちろん素敵なFM放送を聞くこともね。