・2020年9月、KT-1100Dの修理調整作業を承りました。
・時間とともに感度が低下するそうです。
・さて、直せるか?
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 KENWOOD KT-1100D ¥74,800(1987年頃)
・KENWOOD チューナーカタログ 1986年11月版
■動作確認------------------------------------------------------------
・まず驚いたのが外装の美しさ。
・ボディにべたつき感がありますが外装の状態がとても良い。
・FMアンテナを接続して名古屋地区のFM放送を受信チェック。
・上り方向、下り方向ともAUTO選局で名古屋地区のFM局を受信OK。
・RF=DISTANCE/DIRECT とも受信OK、しかし DIRECTではSTEREO受信不可。
・手持ちのAMループアンテナでAM放送も受信OK。
・私自身が所有するKT-1100Dと比較するとFMの受信感度がかなり低い。
■内部確認-------------------------------------------------------------
・電源投入から3時間ほどでSメーターが2~3セグメント減灯するそうです。
・つまり、時間が経過すると → 温度が上昇すると
・そう考えてドライヤーの熱風を当てて温度を上げる実験をしてみました。
・フロントエンド部にそっとドライヤーを当ててみると、、
・みるみるうちにSメーターが減灯します。
・あれこれ試行するうちに Q2(3SK122)とC5(33pF)が怪しく思えてきました。
■調整記録------------------------------------------------------------
まずは過去の調整記録に倣って各部再調整してみました。
【VT電圧】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L14調整 → 3.0V±0.1V
・90MHz → TC1調整 →25.0V±0.1V
【検波調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L9調整 → 0.0V±10mV
・TP12~TP13 DC電圧計セット
・83MHz(無変調,80dB)受信 → L12調整 → 0.0V±10mV
【RF調整】
・R67左側 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・83MHz(1kHz,100%変調,40dB)→ L1,L4,L7,L18調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・R64右側端子 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・83MHz(1kHz,100%変調,30dB)→ L10調整 → 電圧最大
【AUTO STOP=MUTING調整】
・83MHz(1kHz,100%変調,30dB)→ VR1調整
【TUNING METER調整】
・SELECTOR:MONO
・83MHz(1kHz,100%変調,80dB) → 本体左側小基板VR2調整 → ※
※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【SIGNAL METER調整】
・SELECTOR:MONO
・83MHz(1kHz,100%変調,80dB) → 本体左側小基板VR3調整 → ※
※バーグラフの点灯レベル調整
【MPX VCO調整】
・TP14に周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調,80dB) → VR4調整 → 19.00kHz±50Hz
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(SUB信号,1kHz,80dB)→ L25調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR3:DET調整 → 歪最小
【歪調整2 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR4:MONO2調整 → 二次歪最小
【歪調整3 MONO】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR6:MONO3調整 → 三次歪最小
【歪調整4 STEREO】
・83MHz(L/R信号,1kHz,80dB)→ VR5調整 → 歪最小
【歪調整5 STEREO】
・83MHz(SUB信号,1kHz,80dB)→ VR7調整 → 歪率最小
【歪調整6 NARROW】
・83MHz(MAIN信号,1kHz.80dB)→ VR2調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整 WIDE】
・IF BAND:WIDE
・83MHz(R信号,1kHz,80dB)→ VR2調整 → L信号もれ最小
・83MHz(L信号,1kHz,80dB)→ VR3調整 → R信号もれ最小
【SEPARATION調整 NARROW】
・IF BAND:NARROW
・83MHz(1kHz,80dB)→ VR1調整 → 信号もれ最小
【DEVIATION調整】
・83MHz(mono信号,1kHz,100%変調)→ 本体左側小基板VR4調整 → 100%位置
【AM簡易調整】
・TP6~TP7 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・522kHz → L20調整 → 実測 1.5V 確認のみ
・1629kHz→ TC2調整 → 実測 8.0V 確認のみ
・ 729kHz NHK第一放送受信 → L21調整 → Sメーター最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → TC3調整 → Sメーター最大
・1053kHz CBCラジオ受信 → L22調整 → Sメーター最大
※故障個所は無く、調整作業は正常終了しました。
※特にRF部、IF部の再調整によってFM受信感度が大幅に向上しました。
■修理記録------------------------------------------------------------
・FM受信感度が大幅に向上したのでSメーターの減灯現象は気にならなくなりましたが、、
・最初の確認で気になったQ2(3SK122)とC5(33pF)を新品交換しておきました。
・交換後はさらに受信感度が向上しました。
■Sメーターの点灯範囲------------------------------------------------------------
・最終調整を終えた状態でシSメーターの点灯範囲を調べてみました。
・実は、、
・Sメーターの点灯動作について、今まで誤解していた事に気づきました。
・DISTANCEでは受信感度がアップするから多く点灯する、と思っていましたが、
・実はSメーターの「表示レンジ」が切り換っているんです。
【RF=DIRECT】
7点灯 → 86dB以上
6点灯 → 81~86dB
5点灯 → 78~81dB
4点灯 → 72~78dB
3点灯 → 63~72dB
2点灯 → 59~63dB
1点灯 → 59dB以下
【RF=DISTANCE】
7点灯 → 53dB以上
6点灯 → 48~53dB
5点灯 → 45~48dB
4点灯 → 40~46dB
3点灯 → 36~40dB
2点灯 → 23~36dB
1点灯 → 23dB以下
■試聴----------------------------------------------------------------
・再調整によって良い性能を取り戻したと思います。
・今回もイイ勉強になりました。