・2020年3月、PIONEER F-700の故障機が届きました。
・F-700を見るのは久しぶり。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Pioneer F-700 ¥65,000(1979年発売)
・Hifi Engine PIONEER F-700 (1981)
・F-700/F-500カタログ 1980年4月版
・F-700 取扱説明書
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源コードの印字は1979。
・電源オン。周波数窓の照明点灯。左側メーター(Dev/Multipath)電球切れ。
・名古屋地区のFM局は全く受信しない。
・Sメーターは全く振れず、何も受信しない。
・REC CALトーンOK、しかしその他は全く反応なし。
・これは重症か、、、
・ところが信号発生器に繋いで100dBの電波を注入したところ
・何と、正常に動作します!
・STEREOランプ点灯。IF BAND WIDE/NARROW切換OK。REC CALトーンOK。
・電波強度を70dBまで下げるとSメーターの反応がなくなり受信不能。
・受信感度が大きく低下しているみたいです。
■内部確認------------------------------------------------------------
・ボディ後方開口部付近に溜まった大量の埃を清掃。
・フロントパネルを分解して徹底清掃。プッシュボタンのサビ落とし。
・パネル内側に「54.12.6」と印字がありました。「1979年12月6日」か?
■修理記録:ヒューズ抵抗交換-----------------------------------------
・FMアンテナ端子から強力電波(100dB)を注入すると正常動作する。
・ということはRF回路またはIF回路で信号の増幅が出来ていない。
・試しにIF回路初段のR27に10.7MHzを直接注入したところ正常に動作しました。
・つまりフロントエンド内で信号増幅できていないということ。
・電源電圧確認 規定値+13v → 実測+12.7v
・最初はFET(Q1,Q2,Q3,Q4,Q5:SD306PA)の故障を疑いました。
・ところが保管しているF-500から同型FET(SD306PA)を移植しても症状が改善しない。
・続いてトリマコンデンサを交換、、やはり改善しない。これはおかしい??
・まさかと思いつつ抵抗を1本ずつ測定したところ、
・カラーコードが示す値と実測値が異なるものを発見。
・特にR6,R7,R15,R17,R22,R25(いずれも22Ω)がそれぞれ200Ω~1kΩを示す。
・R6 (22Ω) → 307Ω
・R7 (22Ω) → 66Ω
・R15(22Ω) →1.1kΩ
・R17(22Ω) → 680Ω
・R22(22Ω) → 252Ω
・R25(22Ω) → 540Ω
・よく見るとこれら6本の抵抗は他の抵抗と外観が違う。
・もしかしてこれはヒューズ抵抗?
・そういえばヒューズ抵抗の劣化がノイズ源となる事例が過去に何回かありました。
・そこで手持ちのヒューズ抵抗に6本とも交換したところ、、正解でした。
・Sメーターが大きく振れるようになり地元FM局を受信できるようになりました。
・抵抗値が大きくなったため供給電圧が低下しRF増幅回路が機能しなかったようです。
■修理記録:電球交換--------------------------------------------------
・左側メーター(Dev/Multipath)電球切れ。
・ジャンク箱から同等品を探して交換しました。
・電球色の色合いが揃って良い雰囲気になりました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【同調点調整】
・TP3~TP4 → 電圧計セット
・無信号 → T5調整 → ±0v
【FM OSC調整】
・IF BAND=NARROW
・目盛り位置76MHzに指針セット
・76MHz 無変調 70dB 受信 → L6調整 → Sメーター最大
・目盛り位置90MHzに指針セット
・90MHz 無変調 70dB 受信 → TC6調整 → Sメーター最大
【RF調整】
・IF BAND=NARROW
・目盛り位置76MHzに指針セット
・76MHz 無変調 40dB 受信 → L1,L2,L3,L4,L5調整 → Sメーター最大
・目盛り位置90MHzに指針セット
・90MHz 無変調 40dB 受信 → TC1,TC2,TC3,TC4,TC5調整 → Sメーター最大
・83MHz 100%変調 40dB 受信 → L7調整 → Sメーター最大
・83MHz 100%変調 40dB 受信 → VR1調整 → Sメーター最大
・VR2近くの2個のFET(Q4,Q5)S端子 → 電圧計セット
・83MHz 100%変調 40dB 受信 → VR2調整 → 0v
※VR1:相互変調調整
※VR2:キャリアバランス調整
【IF調整】
・IF BAND=NARROW
・目盛り位置83MHz付近でSメーター最大位置に指針セット
・83MHz 100%変調 40dB 受信 → T1,T4調整 → Sメーター最大
・Sメーターの目盛りを記録
・IF BAND=WIDE
・VR3調整 → Sメーターの目盛りをNARROW時と同じ位置に
【FM同調点調整】※クアドラチュア検波
・IF BAND=WIDE
・83MHz 100%変調 70dB 受信 → T4調整 → Tメーター中点 ※確認のみ
【ミューティング調整】
・VR4調整
【Sメーター振れ調整】
・VR5調整
【パルスカウント検波調整】
・TP8~TP7(GND) → 周波数カウンタ接続
・83MHz 100%変調 70dB 受信 → T7調整 → 1.26MHz
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz 100%変調 70dB 受信 → TC7調整 → 歪率最小
【変調度メーター調整】
・IF BAND=WIDE
・83MHz 100%変調 70dB 受信 → VR6調整 → Deviationメーター100%
【REC LEVEL調整】
・83MHz 100%変調 70dB 受信 → 信号レベル記録
・REC LEVEL オン → VR12調整 -6dB設定 ※実測278Hz
【VCO整】
・IF BAND=WIDE
・TP9 → 周波数カウンタ接続
・無信号 → VR7調整 → 76Hz
【STEREO歪率調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・IF BAND=WIDE
・83MHz 100%変調 70dB 1kHz ST受信 → T1調整 → 歪率最小
・83MHz 100%変調 70dB 400Hz ST受信 → L29調整 → 歪率最小
・IF BAND=NARROW
・83MHz 100%変調 70dB 400Hz ST受信 → T4調整 → 歪率最小
【パイロット信号キャンセル調整】
・IF BAND=WIDE
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz ST信号 60dB 受信 → VR8調整 → 19kHz最小
・左右バランスに注意
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・83MHz ST 1KHz 80dB 受信 → VR9調整 → Lch漏れ最小
・83MHz ST 1KHz 80dB 受信 → VR10調整 → Rch漏れ最小
【セパレーション調整】
・IF BAND=NARROW
・83MHz ST 1KHz 80dB 受信 → VR11調整 → L/Rch漏れ最小
■試聴----------------------------------------------------------------
・修理と再調整が完了して正常動作に戻ったと思います。
・ヒューズ抵抗に辿り着くまでちょっと時間がかかりました。
・でも照明に浮かび上がる周波数窓を眺めていると苦労が吹き飛びます。
・いつまでも眺めていられる不思議な魅力です。
■記念撮影------------------------------------------------------------
・先に入手したF-500と並べて記念写真を撮っておきました。
・このデザイン、存在感は今でも通用しますね。