・2020年1月、KT-1100の故障品が届きました。
・不規則な雑音が混入するそうです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-1100 ¥73,800(1982年発売)
・オーディオ懐古録 TRIO KT-1100 AM-FM STEREO TUNER ¥73,800
・Hifi Engine Kenwood KT-1100 AM/FM Stereo Tuner (1983)
■動作確認------------------------------------------------------------
・FMアンテナを接続して電源オン。
・二つのメーター照明点灯、赤い指針点灯。
・82.5MHz(NHK-FM名古屋)を82.3MHzの位置で受信。他の放送局も同程度のズレ。
・手を離すとSERVO LOCKランプ点灯、続いてSTEREOランプ点灯。
・RF切換OK、FM BAND切換OK、MUTING動作OK、REC CALトーンOK。
・特に異常なし? と思っていたら、不定期に「バリバリ」という雑音発生。
・受信音声に雑音が被っている感じ。
・左右chとも同じ雑音が聞こえる。
・固定/可変端子とも同じ雑音が聞こえる。
・マルチパスH端子からも同じ雑音が聞こえる。
・RF切換、IF BAND切換を操作しても変化なし。
・REC CALトーンには雑音は発生しない。
・雑音発生時もAM放送は正常受信。
■修理記録:フィルター交換--------------------------------------------
・回路図を見ながら原因箇所を考える。
・ヒントはマルチパスH端子からも同じ雑音が聞こえること。
・ICクリップで音を拾いながら雑音箇所を探す。
・IC4(TR4011)-5pin → 正常な音が聞こえる → つまり検波回路までは正常
・パルスカウント検波回路とMPX回路の間にあるフィルターL10が怪しいか?
・L10(L79-0162-05)は上から見ると「黄・白・赤」コイルが並んだLCフィルターです。
・取り外して裏側を見ると内蔵コンデンサー4本が埋め込まれています。
・試しにL10を外したまま前後の回路を直結してみると、、、
・すると、予想通り雑音が消えたキレイな音が出てきました。
・雑音の原因はL10不良、特に内蔵コンデンサーの劣化と思います。
・さて、L10を迂回した直結状態でバリバリ雑音は消えましたが、
・でも全域でノイズフロアが高く、とても高音質とは言い難い状態です。
・検波信号(コンポジット信号)をそのままMPX回路に入れてはいけないようです。
・ジャンク箱を漁ったところ、、
・部品取り機 TRIO KT-770 の基板に同型のフィルターが載っていました。
・部品番号も同じ(L79-0162-05:SCA FILTER)です。
・これをKT-1100に移植、ノイズフロアが大幅に下がって良い音が出てきました。
■修理記録:バリコン軸清掃--------------------------------------------
・ノイズが無くなったところで再度動作確認。
・MUTINGオフ状態で指針を移動すると、76MHz~80MHz区間で激しいバリバリノイズ発生。
・MUTINGオンの状態では無音なので気が付きません。
・これは経験的にバリコン軸の接触不良の音です。
・バリコン軸の付け根付近を爪楊枝の先端で慎重に清掃
・緑色に変色固化しグリス塊を慎重に除去し、コンタクトグリスを薄く塗布。
・これで激しいバリバリノイズは解消しました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM OSC調整】
・83MHz受信 → フロントエンドTC8調整 → Sメーター最大
※OSCコイルL5の調整が難しいため83MHzのみで調整
【FM RF部調整】
・IF BAND NARROW
・83MHz受信 → フロントエンドTC1,TC2,TC4,TC6調整 → Sメーター最大
・83MHz受信 → フロントエンドT1調整 → Sメーター最大
※L1~L4の調整が難しいため83MHzのみで調整
【IF調整】
・IF BAND NARROW
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz → L2,L3調整 → Sメーター最大
【Tメーター調整】
・IF BAND NARROW
・83MHz受信 → Sメーター最大かつ高調波歪最小位置にて受信
・L4調整 → Tメーター中点
【Wide Gain調整】
・83MHz受信 → VR1調整 → Wide/Narrow Sメーター振れ具合を同じ位置に
【2nd OSC調整】
・IC4(TR4011)-1pin → 周波数カウンタ接続
・83MHz受信 → L6調整 → 1.965MHz
【VCO調整】
・IC7(TR7040)付近の二つのTPを直結
・TP(19kHz) → 周波数カウンタ接続
・83MHz → VR4調整 → 19kHz±10Hz
【Pilot Cancel調整】
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR3,L19調整 → 19kHz漏れ信号最小
【セパレーション調整/wide】
・IF BAND WIDE
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR5調整 → Lch漏れ信号最小
・83MHz ST → VR9調整 → Rch漏れ信号最小
【セパレーション調整/narrow】
・IF BAND NARROW
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83MHz ST → VR6調整 → 漏れ信号最小
【REC CAL調整】
・83MHz受信 → 出力レベル測定
・VR2調整 → 上記レベル-6dBに設定 ※418Hz
【タッチセンサー調整】
・Q13エミッタ(=R197) → 周波数カウンタ接続
・L18調整 → 400kHz
【AM OSC調整】
・ 600kHz受信 → L17調整 → シグナルメーター最大
・1400kHz受信 → TC7調整 → シグナルメーター最大
【AM RF調整】
・ 600kHz受信 → L14,L15調整 → シグナルメーター最大
・1400kHz受信 → TC3,TC5調整 → シグナルメーター最大
【AMメーター調整】
・VR12 Sメーター振れ具合調整
・VR11 Tメーター中点調整
■試聴----------------------------------------------------------------
・1週間に渡って動作確認しましたが問題なさそうです。
・最近はフィルター故障が本当に多いです。