・2019年11月、KT-900の故障品を寄贈していただきました。
・そういえばKT-900は整備記録が残ってません。
・今回は記録を残す良い機会をいただきました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 TRIO KT-900 ¥49,800(1980年頃)
・オーディオ懐古録 TRIO AM-FM STEREO TUNER ¥49,800円(1980)
【1976年】パルスカウント検波チューナー登場 ※検波回路はディスクリート構成
・KT-9700 ¥150,000
・KT-8000 ¥ 69,800
【1978年】検波回路のIC化(TR4010/TR4010A)
・KT-9900 ¥200,000
・KT-8300 ¥ 63,000
・KT-8100 ¥ 42,000
【1979年】検波回路のIC化(TR4010A)
・L-01T ¥160,000 ※初のKENWOODブランド機
・L-07TII ¥130,000
・KT-80 ¥ 37,000 ※システムコンポの一部
【1980年】ニューパルスカウントシステム登場、専用IC進化(TR7020+TR4011)
・KT-1000 ¥69,800
・KT-900 ¥49,800
【1981年】ニューパルスカウントシステム、専用IC(TR7020+TR4011)
・KT-9X ¥64,800 ※唯一のシンセサイザー機
【1982年】ニューパルスカウントシステム、専用IC(TR7020+TR4011)
・KT-1100 ¥73,800
・KT-990 ¥53,800
■動作確認------------------------------------------------------------
・ボディ上面は擦り傷多数、フロントガラス内側には大量の埃。
・全体に経年の汚れがこびり付いている感じ。
・幸いなことにフロントパネルをボディに固定するプラスチック部分は無事。
・FMアンテナ端子は同軸裸線を接続するタイプでちょっと残念。
・電源OK、照明ランプ点灯、周波数指針点灯。
・前面ガラスに浮かび上がる照明窓がステキ!
・名古屋地区のFM放送局を受信しようとすると、、
・LED式の Sメーター、Tメーターともに点灯しない。
・SSGから83MHzを送信して76~90MHz区間を捜索しても受信できる位置が見つからない。
・MUTING オフにすると85MHz付近でかすかに基準音が聞こえる。
・REC CAL トーンは発信音が正常に聞こえる。
・適当なループアンテナでAM放送は受信OK、でもSメーター点灯せず。
・これはOSCトリマの故障かな?
■内部確認------------------------------------------------------------
・KT-990との比較写真が ここ 残っています。
・FM4連AM2連バリコン搭載フロントエンド
・IF BAND切換 (Wide/Narrow)
・パルスカウント検波
・IC2:TR7020
・IC4:TR4011
・IC5:HA12016
・VR1:IF GAIN
・VR2:REC CAL
・VR3:SEP. Wide
・VR4:Sep. Narrow
・VR5:VCO
・同時期のKT-1000に比べると簡素な構成で調整箇所も少ない。
■修理記録:OSCトリマ-------------------------------------------------
・フロントエンド内OSCトリマコンデンサー(TC4)を回しても発信周波数が変化しない。
・これはTC4が完全に容量抜けしています。
・過去の修理事例に倣ってユニット外側に新トリマー(青色7pF)を直付け。
・下記受信調整によってばっちり受信できるようになりました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM OSC調整】
・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz 受信 → 新TC4調整 → 電圧最大
【FM RF調整】
・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz 受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
・83MHz 受信 → T1調整 → 電圧最大
【クアドラチュア検波調整】
・83MHz 受信 → 電圧最大状態
・TR7020-3Pin-11Pin → 電圧計セット(Tメーター)
・83MHz 受信 → L4調整 → 電圧ゼロ(Tメーター中点)
【WIDE GAIN調整】
・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz Narrow受信 → Sメーター電圧記録
・83MHz Wide受信 → VR1調整 → 上記電圧と同じ
【高調波歪調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz → T1(フロントエンド内)調整 → 高調波歪最小
【パルスカウント検波調整】
・TR4011-1Pin → 周波数カウンタセット
・83MHz受信 → L5調整 → 1.965MHz
【VCO調整】
・R56左足 → 周波数カウンタ接続
・SSG 83MHz 無変調 → VR5調整 → 76kHz
【セパレーション Narrow調整】※Narrow調整を先に行なうこと
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz Narrow → VR4調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【セパレーション Wide調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra接続
・83MHz Wide → VR3調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【REC CAL調整】
・83MHz受信 → 出力レベル記録
・83MHz受信 → VR2調整 → -6dB設定 ※460Hz
【AM受信調整】
・AMループアンテナ → 接続端子注意 [AM]~[GND]
・600kHz → L11,L12調整 → Sメーター最大点灯
・1400kHz → TC1,TC2調整 → Sメーター最大点灯
■調整記録:最終LPF不調-----------------------------------------------
・上記調整作業は正常に実施できました。
・しかしLchの音がちょっと小さめです。
・最終オーディオ回路を調べてみるとL9,L10(ローパスフィルター)前後で音量が違う。
・L9,L10を基板から外して前後の回路を直結。
・これで左右の音量バランスが整いました。
・ちょうど良いサイズの交換部品が見当たらないので、とりあえずこのままにしておきます。
■試聴----------------------------------------------------------------
・分解して徹底清掃、電球色に浮かび上がる不思議な雰囲気を取り戻しました。
・KT-990/KT900のガラス製フロントパネルはとても素敵な雰囲気を醸し出してくれます。
・薄暗い部屋でボーっと眺めていると幸せな気分に浸れます。