・2018年7月初め、故障機を寄贈していただきました。
・外観はまずまずの美品ですが、背面を見ると音声コード直出しタイプです。
・今までHOジャンクコーナーで何度か見たことがある機種です。
・でもいかにも安物っぽいのでずっとスルーしてきました。
・今回初めて内部を見る機会をいただきました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 YAMAHA T-5D ¥34,800(1981年頃)
・Hifi Engine Yamaha T-560 AM/FM Stereo Tuner (1981-82)
■動作確認------------------------------------------------------------
・ボディは光沢があって外観はとても綺麗な状態。
・フロントパネルも目立つキズはない。
・FMアンテナはPAL端子。PAL-F変換プラグを介して同軸ケーブルを接続。
・電源オン。周波数スケールが緑色に浮かび上がってイイ感じ。
・指針はTメーター一体型で左右の緑色LEDが同調状態を示す。
・LED型のSメーターが大きく点灯するが、Tメーターは同調を示さない。
・FM音声は出てこない。STEREOランプ点灯しない。
・MUTINGオフにすると局間ノイズに埋もれてモノラル受信可能。
・FMは同調点がかなりズレているようです。
・AMは名古屋地区の放送局をすべて受信OK。
■内部確認------------------------------------------------------------
・FM3連、AM2連バリコン搭載フロントエンド → レシオ検波 → NFB-PLL MPX
・IC103:LA3381 PLL MPX
・IC104:IG-03210(LA2400?)
・パイロット信号キャンセル、左右独立セパレーション調整
・安価な入門幾かと思ったら、意外にしっかりした回路構成でした。
・性能的にはT-5とほぼ同等と思います。
・DX/LOCAL切替なし、IF BAND切替なし、チューニングロック機構なし、可変出力なし。
・音声コード直出しで意図的にチープ感を演出する戦略だったか?
■修理記録:電解コンデンサー総交換------------------------------------
・足が腐食している電解コンデンサ―多数あり、というかほぼすべて。
・足の金属部に粉を吹いたような、YAMAHA製機種でよく見る症状です。
・安価な部品を使っているのか??
・気になったので調整前に全数交換しておきました。
■調整記録------------------------------------------------------------
・輸出機T-560(外観はT5Dにそっくり!)のサービスマニュアルを入手。
・本機と比較したところ、ほぼ同等機種と判明。
・以下T-560の調整要領を参考に各部調整してみました。
【FM同調点仮調整】
・基板上TP TM~NVCC間 → 電圧計セット ※Tメーター電圧
・83MHz受信 → Sメーター最大点灯位置を探す
・T103調整 → 電圧ゼロ ※指針両端の緑色LED点灯状態
【FMフロントエンド調整】
・基板上TP TM~NVCC間 → 電圧計セット ※Tメーター電圧
・L5がボンド固定調整不可 → TC3のみ調整
・83MHz受信 → 指針83MHz位置 → TC3調整 → 電圧ゼロ
・83MHz受信 → TCA,TCR調整 → Sメーター最大
※注意:フロントエンド内部にある黒トリマはAM調整用
【FM同調点再調整】
・基板上TP TM~NVCC間 → 電圧計セット ※Tメーター電圧
・83MHz受信 → Sメーター最大点灯位置を確認
・VC102調整 → 高調波歪最小
【VCO調整】
・TP 19M~FB間を1MΩ抵抗を介して接続
・TP 19K → 周波数カウンタ接続
・83MHz ST信号受信 → VR102調整 → 19kHz
【パイロット信号キャンセル調整】
・83MHz ST信号受信 → VR101調整 → 漏れ信号最小
【ステレオ歪調整】
・83MHz ST信号受信 → VC101,T102調整 → 高調波歪最小
【セパレーション調整】
・83MHz ST信号受信 → VR103調整 → 漏れ信号最小
・83MHz ST信号受信 → VR104調整 → 漏れ信号最小
【Sメーター点灯調整】
・83MHz受信 → VR105調整 → Sメーター最大点灯位置調整
【AM調整】
・ 600kHz → T105,T104調整 → Sメーター最大
・1400kHz → TC2,TC1調整 → Sメーター最大
・1000kHz → T106調整
【REC CAL】
・調整不可ですが 331Hz/-3.5dBの信号が出ていました。
■修理記録:ハンダクラック修正---------------------------------------
・ステレオランプの点灯状態が不安定です。
・VCO調整やセパレーション調整は正常に完了しましたが、、
・本体を持ち上げたり、軽くショックを与えるとステレオランプが消灯。
・再度の軽いショックでまた点灯・・
・どこかにハンダクラックがあって接触不良を起こしている感じです。
・底板を外して基板裏面を点検するも目視では不良個所は見当たらず。
・フロントパネル側のステレオインジケーターLED基板に不良個所がありました。
・ここのハンダを修正したところ安定点灯するようになりました。
■試聴----------------------------------------------------------------
・製品ラインナップの中では最安入門機の位置付けと思います。
・特に音声コードが背面から直接出ていると「チープ感」が増幅します。
・でも今回は内部を見て意外にしっかりした構成でちょっと驚きました。
・外見だけで判断してはいけませんね、、反省。