・2018年6月末、テクニクス製ST-8080、通称80Tの修理調整を承りました。
・ガンメタボディにオレンジ照明が映える逸品です。
・以下、作業記録です。
■製品情報-------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 / Technics ST-8080(80T) ¥50,000(1977年頃)
・Hifi Engine / Technics ST-8080 AM/FM Stereo Tuner (1976-79)
■動作確認-------------------------------------------------------------
・シリアリナンバー:FA6L20C147 → 1976年12月20日製造
・ボディには擦り傷、打ち傷が多数あってちょっと残念な状態。
・75Ω同軸ケーブル接続端子がF型でない点が残念。
・さて、FMアンテナを接続して電源オン。
・周波数窓にオレンジ照明が灯ってイイ感じ。電球切れなし。
・名古屋地区のFM放送を受信してみると、+0.2MHzズレた位置で受信。
・Tメーター中点とSメーター最大点が一致しない。
・メーター指針の動き方に滑らかさが無い。
・指針の移動に伴って「バリバリッ」という雑音が混入する。
・STEREOランプが点灯しない。実際のステレオ感も無い。
・背面バーアンテナで名古屋地区のAM放送局受信を試みる。
・ところがAM放送はまったく受信しない。Sメーター動かない。
・AMは故障かと思ったらMUTINGオフにすると909kHz(NHK第二)だけ受信できる。
・AM放送でもMUTING回路が効くみたい、でもSメーターはほとんど動かない。
■内部確認-------------------------------------------------------------
・FM4連、AM2連バリコン搭載フロントエンド → CFフィルタ×4
・AN217:FM 2 Steps IF Amplifire & AM Converter
・AN377:FM IF Amplifier & Detector
・AN363:FM Mutiplex PLL Demodulator
・輸出機のサービスマニュアルにICブロック図が掲載されていました。
・VR101:Muting Level Adj.
・VR102:FM Meter Adj.
・VR301:19kHz OSC Adj. (VCO)
・VR302:19kHz Level Adj. (Pilot Cancel)
・VR401:Recording Check Signal Level Adj. (REC CAL)
・T101:FM Discri IFT
・T201:AM IFT(1st)
・T202:AM IFT(2nd)
・L202:AM OSC Coil
・L301:19kHz Phase Adj. (Pilot Cancel)
・TP1:AM IF input point
・TP2:FM output point
・TP101:FM IF output point
・TP201:AM output point
・TP301:FM composit signal output point
・TP302:19kHz output point
■修理記録:AMの不調原因-------------------------------------------------
・IC201:AN217 / FM 2 Steps IF Amplifire & AM Converter
・AM用IC201:AN217-15ピン(AM OSC) → 周波数カウンタ確認 → 発振周波数正常
・AM用IC201:AN217-15ピン(AM IF) → 周波数カウンタ確認 → 周波数安定しない?
・AN217ブロック図を見るとIC内のミキサー回路の故障、またはT201の故障か?
・交換用のAN217を探しましたが見つかりません。
・そこで回路図を頼りにAN217搭載機種を探してみました。
・Technics ST-7300II、ST-8044、ST-8077、ST-8075、ST-8080など
・たぶん同じT201も載っているはず。
・捜索を始めたところ近所のリサイクルショップでST-7300IIを発見。
・動作未確認の品でしたが、幸いFM/AMとも正常動作確認。
・このST-7300IIのAN217をST-8080へ移植。
・これによってAM放送も正常に受信するようになりました。
■調整記録-------------------------------------------------------------
・海外版サービスマニュアルに基づいて各部調整しました。
【レシオ検波調整】
・アンテナ入力なし
・T101(赤)調整 → Tメーター中点
【FM OSC調整】
・76MHz受信 → L5 調整 → Sメーター最大
・90MHz受信 → CT4調整 → Sメーター最大
【FM RF調整】
・76MHz受信 → L1,L2,L3調整 → Sメーター最大
・90MHz受信 → CT1,CT2,CT3調整 → Sメーター最大
・83MHz受信 → T1調整 → Sメーター最大
【検波歪調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz受信 → T101(緑)調整 → 高調波歪最小
【Sメーター振れ調整】
・83MHz受信 → VR102調整 → Sメーター振れ調整
【ミューティング調整】
・83MHz 20dB → VR101調整 → ミューティング作動
【VCO調整】
・TP302 → 周波数カウンタ接続
・83MHz無変調 → VR301調整 → 19kHz±30Hz
【ステレオ歪調整】
・音声出力 → WaveSpectraで観測
・83MHz受信 → フロントエンドT1調整 → 高調波歪最小
【パイロットキャンセル調整】
・音声出力 → WaveSpectraで観測
・83MHz受信 → VR302,L301調整 → 19kHz信号最小
・左右chバランス注意
【サブキャリアキャンセル調整】
・音声出力 → WaveSpectraで観測
・83MHz受信 → CT401調整 → 38kHz信号最小
【セパレーション調整】
・音声出力 → WaveSpectraで観測
・83MHz受信 → VR402調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【REC CAL調整】
・音声出力 → WaveSpectraで観測
・83MHz受信 → VR401調整 → -6dB(※363Hz)
【AM OSC調整】
・600kHz → L202調整 → Sメーター最大
・1400kHz → CT202調整 → Sメーター最大
【AM RF調整】
・600kHz → L201(バーアンテナ内)調整 → Sメーター最大
・1400kHz → CT201調整 → Sメーター最大
【AM IFT調整】
・1000kHz → T201,T202調整 → Sメーター最大
■試聴-----------------------------------------------------------------
・この時期のテクニクス製品はガンメタ+オレンジ照明がイイですね。
・40年も経過した製品とは思えないです。
・状態の良いジャンク品があれば外装だけ交換すると良いです。