・2017年7月、CRAIG社製レシーバーの修理調整作業を承りました。
・クレイグ?? 耳慣れないメーカー名です。
・どんな機種なの?
■製品情報------------------------------------------------------------
・CRAIG Electronics
・CRAIG History ※社史のページにSERIES5000の写真あり
・調べてみると CRAIG Electronics社は1963年創業のアメリカ企業。
・eBayで検索するとレシーバーやデッキなどオーディオ製品が多数ヒットします。
・ホームページで社史を見ると「SERIES 5000」の写真がありました。
・セットになるレコードプレーヤーやスピーカーもあったようです。
・本体サイズ:実測492(W)×138(H)×330(D)突起物含まず。電源電圧100V
・受信周波数帯 FM 76~90MHz、AM 540~1600kHz
・背面端子:PHONO、AUX、TAPE MON、TAPE REC、FM DETOUT
・スピーカーA/B 2系統。4本接続した場合マトリクス式4chとして使える。
・メーカー名や型番を記載したパネルは文字が消えて全く読めない。
・本機の背面には MADE IN JAPAN の印字、 FM周波数帯や電源電圧は日本仕様です。
・ということは、日本国内で生産された製品。
・依頼者様の情報によると「興北電気」という会社が国内で製造していたそうです。
・ネット検索しても詳細情報が見つかりません。
■動作確認+内部調査--------------------------------------------------
・上部ボディはウッドケース。
・本体を持ち上げて傾けると内部で「カラカラ」と何かが転がる音がする。
・音の正体を調べるため、通電する前にボディと底板を外して内部調査。
・「カラカラ」音の原因は電線を束ねるプラスチック部品の割れた欠片でした。
・基板上面は大量に堆積したホコリによって部品がまったく見えない状態。
・まずはホコリをエアーで吹き飛ばし、部品が見えるようにブラシで清掃。
・小さなフロントエンドFM3連AM2連バリコン →レシオ検波→アナログMPX。
・FM/AM回路に調整用VRが一つもない。
・電源コードの印字1974、電源に接続してPOWERオン。
・青緑色の窓照明点灯。指針照明点灯。二つのメーター照明点灯。
・入力ソースを示す橙色インジケーター点灯。電球切れは無さそう。
・照明が点灯した雰囲気は1970年代前半のPIONEER製レシーバーとよく似ている。
・これはテンションが上がる!
・プッシュ式スピーカーターミナルのバネ機構が固着して動かない。
・これではスピーカーを接続したテストができない。
・とりあえずヘッドホン端子で音を聞きながら動作確認続行。
・300Ω端子にアンテナを接続、名古屋地区のFM放送局受信OK。
・赤色のSTEREOランプ点灯。聴感上のステレオ感もあり。
・本体内部に配置されたバーアンテナで地元AM放送局受信OK。
・TAPE端子にCDプレーヤー接続、音出しOK。音質OK。
・AUX端子にCDプレーヤー接続、音出しOK。音質OK
・PHONO端子にレコードプレーヤー接続、音出しOK。音質はそこそこ。
・音量、バランス、BASS、TREBLE 各調整VRはスムーズに回る。僅かにガリ。
・ヘッドホン端子からの音出し確認OK。
・TAPE REC端子からも音出し確認OK。
・スピーカーからの音出し確認はできないものの各機能は動作している模様。
■修理記録:スぺーカーターミナル--------------------------------------
・プッシュ式スピーカー端子のプッシュ部分がビクとも動かない。
・バネ機構がサビて固着しているのか?
・まずは配線を外してターミナル基板を取り外す。
・基板から端子を取り外し、試しに1個を分解。
・固着原因はやはり錆でした。バラバラに分解してパーツを丹念に磨く。
・合計8個の端子を分解清掃して組み直しました。
・多少の引っ掛かり感はありますが、スピーカー接続ができるようになりました。
■動作確認(再)------------------------------------------------------
・スピーカーから音が出るようになったので、再度動作確認。
・音量、バランス、TREBLE、BASS各調整VRにガリ無し。
・ラウドネス、ハイ/ローフィルターの効果を確認。
・スピーカー4本をA/B両系統に接続すると、切り替えスイッチで疑似4chとして使える
・MAIN、REMOTE、MATRIX、BALANCE、それぞれインジケーター点灯。
・特に不具合なし、、これはもう奇跡的!!
■調整記録------------------------------------------------------------
【レシオ検波調整】
・アンテナ入力なし → T104(上段)調整 → Tメーター中点
【FM OSC調整】
・指針を76MHz目盛り位置にセット
・76MHz受信 → L103調整 → Sメーター最大
・90MHz受信 → TC101調整 → Sメーター最大
【RF調整】
・76MHz受信 → L101,L102調整 → Sメーター最大
・90MHz受信 → TC102,TC103調整 → Sメーター最大
【FM検波調整】
・83MHz 1kHz受信 → T102調整 → 高調波歪最小
・83MHz 1kHz受信 → T103調整 → 高調波歪最小
・83MHz 1kHz受信 → L104(下段)調整 → 高調波歪最小
【MPX調整】19kHz,38kHz調整
・WaveSpectraにて観察
・83MHz 1kHz SUB信号 → T108調整 → Lchレベル最大
・83MHz 1kHz SUB信号 → T109調整 → Lchレベル最大
※セパレーション調整VRなし → 左右chとも約40dB程度
【AM部】
・ 600kHz受信 → T105,T107調整 → Sメーター最大
・1400kHz受信 → TC OSC,TC ANT調整 → Sメーター最大
・1000kHz受信 → T106調整 → Sメーター最大
【アンプ部】
・Q201(E) → VR0201調整 → 0.6v
・Q202(E) → VR0202調整 → 0.6v
※とりあえず左右レベルを揃えただけ
【電波強度とSメーターの振れ具合】
・Sメーターが全く振れないレベルでもSTEREOランプ点灯しFM放送を受信できます。
・一般的な機種では、Sメーターの振れ具合を調整する半固定抵抗VRがあるのですが、、
・本機のFM回路はとてもシンプル構成で調整用VRが一つもありません。
・電波強度に応じた各種動作をまとめておきました。
■試聴----------------------------------------------------------------
・MUTINGレベル調整VR、Sメーター振れ調整VR、セパレーション調整VRなし。
・当時の価格は分かりませんが、たぶん入門機クラスと思われます。
・それでも2メーター装備のフロントマスクが高級感を醸し出しています。
・FMステレオではセパレーションは約35dBほど確保。
・各機能とも正常、特に不都合は感じません。
・これは大切に残しておきたい逸品ですね。