・2017年8月初め、TRIO KT-7300の修理調整作業を承りました。
・KT-7300の実機を見るのは初めてです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・TRIO アンプ・チューナー総合カタログ 1979年2月版
・Hifi Engine Kenwood KT-7500 AM/FM Stereo Tuner (1977-79) ※輸出機
※トリオ製品の輸出機型番がホントに分かりにくい
・国内機 KT-7300 → 輸出機 KT-7500
・国内機 KT-7500 → 輸出機 KT-7300
・国内機 KT-7700 → 輸出機 KT-8300
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源コードの印字は「1977」。
・フロントパネルのデザインはKT-7700に似ている。
・でもチューニングつまみやスイッチレバーのデザインはKT-8000と同じ。
・外観に目立つキズなく保存状態は良さそう。
・FM用F型端子が無いのが残念。300Ω端子にアンテナ接続。
・電源オンで周波数窓の照明点灯。二つのメーター照明点灯、タマ切れなし。
・名古屋地区のFM放送局受信OK。STEREOランプ点灯。多少の周波数ズレあり。
・Tメーター中点とSメーター最大が一致しない。
・固定/可変出力端子ともOK。マルチパスH端子出力OK。
・IF BANDを切り替えて Narrow 受信にすると Sメーターの振れが大幅に弱くなる。
・そのせいか、NarrowではMUTING作動して音が出なくなる。
・背面のAMバーアンテナで名古屋地区のAM放送局受信OK。
・FM回路、特にNarrow側の IFアンプが劣化しているか??
■内部確認------------------------------------------------------------
・FM5連AM2連バリコン搭載フロントエンド
・IFバンド Wide/Narrow切換
・Wide側 CF1個×IFアンプ
・Narrow側 Wide + CF4個、IFアンプ(LA1222)追加
・HA1137W FM IF System
・HA1196 PLL FM Stereo Demodulator
・HA1197 AM Radio Receiver System
・VR1:ミューティング調整(Wide)
・VR2:ミューティング調整
・VR3:Sメーター調整
・VR4:VCO
・VR5:セパレーション(Narrow)
・VR6:セパレーション(Wide)
■調整記録------------------------------------------------------------
【FM同調点調整】
・IF BAND → Narrow
・83MHz 1kHz受信 → L4,T5調整 → Sメーター最大
・IF BAND → Narrow
・アンテナ入力なし → L8(下段)調整 → Tメーター中点
・IF BAND → Wide
・アンテナ入力なし → L3調整 → Tメーター中点
・IF BAND → Narrow
・83MHz 1kHz受信 → L8(上段)調整 → 高調波歪最小
【FM OSC調整】
・IF BAND → Wide
・指針を83MHz目盛り位置にセット
・83MHz受信 → CT5調整 → Sメーター最大
※本来は90MHz→CT5、76MHz→T6
※T6はボンドで固められているので調整不可
【RF調整】
・IF BAND → Wide
・90MHz受信 → CT4,CT3,CT2,CT1調整 → Sメーター最大
・76MHz受信 → T4,T3,T2,T1調整 → Sメーター最大
※受信感度が大幅に向上しました。
【MUTING調整】
・IF BAND → Narrow
・83MHz 20dB → VR2調整 → MUTING作動位置
・IF BAND → Wide
・83MHz 20dB → VR1調整 → MUTING作動位置
【Sメーター調整】
・IF BAND → Wide
・83MHz 40dB → L3調整 → Sメーター振れ最大
・83MHz 80dB → VR3調整 → Sメーター振れ調整
【MPX VCO調整】
・R45後足 → 周波数カウンタ接続
・83MHz無変調 → VR4調整 → 76KHz
【セパレーション調整】
・IF BAND → Narrow
・83MHz 60dB → VR5調整 → 漏れ信号最小
・IF BAND → Wide
・83MHz 60dB → VR6調整 → 漏れ信号最小
【AM部】
・ 600kHz受信 → L11,バーアンテナ調整 → Sメーター最大
・1400kHz受信 → CT6,CT7調整 → Sメーター最大
・1000kHz受信 → CF6調整 → Sメーター最大
・当初はNarrow側の受信感度が大幅に低いのでIFアンプの故障を疑いました。
・でもRF調整によって受信感度が大幅アップし、Wide側との感度差は解消しました。
■試聴----------------------------------------------------------------
・動作確認時に懸念した故障箇所は無かったです。
・HA1137Wによるクアドラチュア検波、HA1196による復調回路。
・Wide、STEREO歪率0.08%、セパレーション左右とも約60dB。
・TRIO製チューナーとしては最小構成ですが、聴感上は全く問題なし。
・再調整の結果クアドラチュア検波の良い性能を取り戻したと思います。
・この美しい照明窓が癒しのひと時ですね。