・2016年11月、音が出ないST-5000Fが届きました。
・何といっても往年の名機、これは何とか復活させたい。
・入手から半年以上もかかりましたが夏休みを使ってようやく作業完了しました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 SONY ST-5000F \98,000(1969年)
・オーディオの足跡 SONY ST-5000F \98,000(1971年頃)
・Hifi Engine Sony ST-5000F FM Stereo Tuner (1969-77)
・SONY ST-5000F 回路図(国内機)
・SONY ST-5000F 掲載カタログ 1974年5月版
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源コードの印字は「1974」。モデル最末期の製品か。
・フロントパネル、ボディとも全体に経年の汚れが目立つ個体です。
・周波数窓の内側には大量のホコリが積もっています。
・背面パネルを見るとアンテナ端子にM型端子がある!
・元々使い難い端子だったので末期の製品には仕様変更があったのか??
・F型-M型変換プラグを介してアンテナ接続。電源オン。
・周波数窓のガラス内側が汚れているので照明が点灯したかどうかわからない?
・窓両端の隙間を覗くと電球が点灯していることを確認。
・名古屋地区のFM局周波数に合わせるとTメーターとSメーターが反応します。
・STEREOランプも点灯しますが、固定/可変端子とも音が出ない。無音です。
・MODE切替(STEREO-MONO)、MUTING切替、HiBlend切替を操作しても反応なし。
・これはMUTINGが解除されない状態でしょうか?
■内部確認------------------------------------------------------------
・M型アンテナ端子が気になったので内部を確認しました。
・元々GND端子があった穴を拡幅してM型端子を取り付ける改造が行われたようです。
・製造段階での設計変更があったのかと思いましたが全然違いました。
・アンテナ端子以外に手が加えられた痕跡は無さそう。
・フロントパネルを分解したところ、パネル裏側に「49.9.3」の印字がありました。
・「昭和49年9月3日」と読めば電源コードの「1974」と一致します。
・ST-5000Fとしてはやはり最末期の製品のようです。
・TP MPX OUT からは受信したFM放送が聞こえました。
・やはりMUTING回路の故障が原因。
■修理記録:MUTING回路トランジスタ交換---------------------------------
・MPX基板にあるMUTING用リレーの駆動電圧測定すると電圧が出ていない。
・MUTING基板にある調整用VRを回しても反応なし。
・回路図に記載のある電圧規定値を順番に確認。
・MUTING回路最終段の Q408(2SC945)がおかしい?
・回路図では2SC633ですが基板には2SC945が実装されていました。
・これを2SC1815に交換したところ、MUTINGが解除されて音が出てきました。
・ただし、左右chでレベル差が大きい。Lchの音が小さい。
・Rchには「ボソッ、ボソッ」という不定期ノイズが発生する。
・次なる不具合がありそうです。
■修理記録:MPX回路トランジスタ、電解コンデンサ交換--------------------
・Lchの音が小さい。
・Rchには「ボソッ、ボソッ」という不定期ノイズが発生する。
・検波回路までは問題なさそうなので、MPX回路の不具合が原因です。
・MPX回路のトランジスタ一つ一つ調査。
・Q504(2SC1364)→2SC1815交換
・これで気になったレベル差は解消。
・さらに左右のバランスを保つためQ504~Q511まで8個すべて2SC1815に交換。
・ついでにMPX基板の電解コンデンサをすべて交換。
・Rchのボソボソノイズも解消。
■修理記録:電源回路電解コンデンサ交換--------------------------------
・電源回路の大型電解コンデンサー2個交換。
・C601(2000uF/50v)、C604(2000uF/35v) → 3300uF/50v
■調整記録------------------------------------------------------------
【電源電圧調整】
・TP24V,TP12V DC電圧計セット
・電源基板 VR001調整 → 24V,12Vそれぞれ確認
【OSC調整】※フロントエンド
・76.0MHz受信 → L105調整 → Sメーター最大
・90.0MHz受信 → CT105調整 → Sメーター最大
【RF調整】※フロントエンド
・76.0MHz受信 → L101,L102,L103,L104調整 → Sメーター最大
・90.0MHz受信 → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → Sメーター最大
・この作業を数回繰り返す。
・Tメーターがセンターからズレても気にしない。
【IFT調整】※フロントエンド
・83.0MHz受信 → IFT101調整 → Sメーター最大
【レシオ検波調整】※検波基板
・83.0MHz受信 → 指針をSメーター最大位置へ移動
・IFT301調整 → Tメーター中点へ(離調点が左右対称)
・Tメーターが中点からズレた場合 → IFT301横のR319調整 → 中点に
【Sメーター振れ調整】※IF基板
・83.0MHz 80dB受信 → RT211調整 → Sメーターが90%振れる位置に。
【ミューティング調整】※ミューティング基板
・83.0MHz受信 → RT103調整 → MUTING作動位置へ
【セパレーション調整】※MPX基板
・83.0MHz 80dB受信 → RT537調整 → セパレーション最大位置へ
■試聴----------------------------------------------------------------
・さすが、当時の最高級機!
・アルミパネルの質感やデザイン性は40年以上前の製品とは思えない!
・出てくる音は当時の最高音質、でも今となってはごく普通の音ですね。
・雰囲気を楽しむ機種として保管しておきます。