・2017年6月、ナショナル製レシーバーの修理を承りました。
・見るからに昭和レトロな感じが漂っていますね。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・依頼者様によると1970年頃の製品とのこと。
・レコードプレーヤーとスピーカーがセットになった製品だそうです。
・懐かしい4chステレオ対応のロゴが付いています。
・ただネット検索しても製品情報や回路図は見つかりません。
■動作確認------------------------------------------------------------
・ウッドケースはほぼ無傷で状態はとても良い。底面の足が一つ欠品。
・フロントパネルも目立つキズなし。経年の汚れを落とせば綺麗になりそう。
・リア用スピーカーターミナルは通常のネジ止め式、フロント用はなぜかRCA端子。
・TAPE用RECORDING OUT端子をアンプに接続して音出し確認。
・電源オン、周波数窓が緑色に浮かび上がる。Sメーター照明も点灯。
・300Ω端子にFMアンテナを接続、名古屋地区のFM局を受信しました。
・STEREOランプ点灯。ただし放送局が無い位置でも点灯する。
・AM用の外部アンテナ端子に長いビニールコードを接続して受信確認。
・ところがAM放送は全く受信できず。全域に渡って「ザー」というノイズだけ。
・TAPE IN端子にCDプレーヤーを接続して正常に音が出ることを確認。
・PHONO端子に実験用レコードプレーヤーを接続して音出し確認。
・ヘッドホン端子も音が出ることを確認。
・トーンコントロール、バランス、ラウドネスなど効果が確認できる。
・MIC ミキシング用VRがありますが、MIC端子が見当たりません??
・AM回路が故障しているようです。
・確認を終えて電源を切ろうとたところ、何とオフにできない。
・プッシュ式の電源ボタンを押しても電源が切れない??
・オンオフを数回繰り返すとようやく切断。電源スイッチも故障か?
■内部確認-----------------------------------------------------------
・ウッドケース裏面にある固定ネジ4本を外し。フロントパネルを前面に引き出す。
・上面は配線面、裏面に部品が実装されている「逆さま構造」。
・AMバーアンテナ内蔵。FM3連AM2連バリコン。LCフィルタ、スイッチングMPX。
・電源トランスの電圧確認
・白:AC9.2V、青:AC4.5V、緑:AC0V
■修理記録:電源スイッチ----------------------------------------------
・フロントパネルを外して周波数窓裏側を清掃。大量の埃をかき出しました。
・ウッドケースを外した状態で再び電源オン。
・点検中に電源スイッチ周辺から「ジー」という異音が聞こえることに気付く。
・異音発生源を探してみると、、
・何と電源スイッチの接点間で火花が飛んでいる音でした。
・これはヤバイ、、即電源オフ、、ところが火花が収まらず電源が切れない。
・電源コードを抜いてオフ。
・電源スイッチを固定しているネジを緩めてスイッチごと取り外す。
・スイッチ内部をのぞいてみると
・スイッチ機構はスライド式ではなく、電磁リレーのような接点式でした。
・プッシュ操作によって接点がシーソーのように動いてON/OFFを切り換えるタイプ。
・接点周辺は真っ黒です。綿棒で拭き取ると煤のようです。
・蓄積した煤が固化してコブになり、この僅かな隙間を通して放電状態で電気が流れていたようです。
・コンデンサを取り外してスイッチ単体にしてクリーナーで内部洗浄。
・細いドライバー先端に1000番の紙やすりを張り付け、接点を磨く。
・これでピカピカになりました。
・スイッチに付いていたコンデンサ(0.03uF/600V)をスパークキラーに交換。(0.033uF/120Ω/500V)
・電源スイッチの補修を終えて再び電源オン。
・「ジー」という異音は聞こえない。目視でも接点に火花は飛んでいない。
・劇的な変化として周波数窓の電球の照度が大幅に明るくなった!
・白:AC12.9V、青:AC6.4V、緑:AC0V
・それから何と! 再度動作確認を行うとAM放送が受信できました。
・FM/PHONO/TAPEもOKです。
・諸々の不調原因は電源スイッチ(接点)の劣化だったようです。
・真っ黒の煤が固化してコブになり、正規の電圧を出せていなかった。
・AM以外は低電圧状態でかろうじて動作していたみたいです。
・電源が切断できなかった問題も解消しました。
・ついでにガラス面が曇った電源ヒューズ(1A)を交換しておきました。
■調整記録-----------------------------------------------------------
【フロントエンドOSC調整】
・76MHz受信 → L3調整 → Sメーター最大振れ
・90MHz受信 → TC3調整 → Sメーター最大振れ
【フロントエンドRF調整】
・76MHz受信 → L1,L2調整 → Sメーター最大振れ
・90MHz受信 → TC1,TC2調整 → Sメーター最大振れ
・83MHz受信 → IFT → Sメーター最大振れ
【IF歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 70dB 受信
・IF基板T3,T4,T7調整 → 高調波歪最小
【レシオ検波歪調整】
・音声出力端子にWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 70dB 受信 → T9調整 → Sメーター最大振れ
・83MHz 1kHz 70dB 受信 → T10調整 → 高調波歪最小
【19kHz調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → T12,T13調整 → 19kHzレベル最大
・83MHz ST変調 80dB 受信 → T14調整 → 38kHzレベル最大
【セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・83MHz ST変調 80dB 受信 → R601調整 → 漏れ信号最小
・実測で左右とも約25dB/1kHzでした。
【AM OSC調整】
・729kHz(NHKラジオ)受信 → L5調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC2調整 → Sメーター最大
【AM RF調整】
・729kHz(NHKラジオ)受信 → T5調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC1調整 → Sメーター最大
【IF調整】
・1053kHz(CBCラジオ)受信 → T6,T8,T11調整 Sメーター最大
【出力調整】
※現状値に合わせて左右レベルを揃えました。
※正しい方法かどうかは分かりません。
・R603調整 → TR609-E 電圧 -18.9V
・R613調整 → TR605-B 電圧 6.6V
・R604調整 → TR610-E 電圧 -18.9V
・R614調整 → TR606-B 電圧 6.6V
■スピーカーターミナルボックス製作-----------------------------------
・スピーカーがRCA端子では確かに使い難いですね。
・本体を改造してスピーカーターミナルを取り付けようかと思いましたが、、
・設置スペースが狭くて断念しました。
・その代わり「スピーカーターミナルボックス」を作ってみました。
・ケースはTAKACHI SW-75。ドリルで適当に穴を開けただけです。
・手持ちの端材を使ったので材料費はゼロ。でも見た目は良いです。
■試聴---------------------------------------------------------------
・FMは放送局が無いところでもSTEREOランプが点灯します。
・雑音成分の中の19kHzに反応しているみたいですが調整しきれません。
・周波数窓の裏側を磨いたので、緑色の照明が美しいです。
・PHONOやTAPE入力に接続したCDの再生は良好です。
・AMは本体内部のバーアンテナで受信良好です。
・MIC MIXINGポジションがありますが MIC入力端子が見当たりません。
・ひょっとしてFMワイヤレスマイクでミキシングするのでしょうか?