・2017年5月、KT-929の修理調整作業を承りました。
・外観はミニコンサイズですが中身はかなりの実力機です。
・以下、作業記録を残します。
■製品情報------------------------------------------------------------
・KT-929に関する製品情報はネット検索で見つかりません。
・1985年発行のオーディオ雑誌にあった記事を引用します。
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源コードの印字 → 1985
・フロントパネル上面にちょっとキズがあります。
・ボディ天板に上に載せていた機器の足跡が凹みとして残っています。
・FMアンテナを接続して電源オン。
・表示が曇った感じ。内側の汚れが目立つ。文字欠け、文字痩せなし。
・オート選局で名古屋地区のFM局を受信。
・Sメーターのセグメント点灯。STEREOランプ点灯。
・WIDE/NARROW切替なし。常時NARROW。プリセットメモリ6局。
・手持ちの適当なAMループアンテナでAM放送の受信確認。
・AMのIF BANDはNARROW~WIDEスライドボリュームで可変。
・AM放送はオート選局で正常に受信。
■内部確認------------------------------------------------------------
・内部記録写真
・FMフロントエンド 5連バリキャップ
・セラミックフィルタ4段 常時NARROW受信
・DLRC Direct Linear Reception Circuitフロントエンド
・DCC Distortion Correcting Circuit 歪補正回路
・DLLD Direct Linear Loop Detector PLL検波回路
・DPD Direct Pure Decoder MPX調整回路
■調整記録------------------------------------------------------------
【VT電圧】
・TP2 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L7 調整 → 8V ※実測 7.9V
・90MHz → TC5調整 →25V ※実測25.3V
【RF調整】
・R101後足側 DC電圧計セット=Sメーター電圧
・76MHz → L1,L2,L3,L6 調整 → 電圧最大
・90MHz → TC1,TC2,TC3,TC4調整 → 電圧最大
・上記作業を数回繰り返す
・83MHz → L5調整 → 電圧最大
【検波調整】
・TP3~TP4 DC電圧計セット
・83MHz → L9調整 → 0.0V±10mV ※実測+0.45V
・83MHz → L8調整 → Wavespectraで二次歪最小
【SIGNAL METER調整】
・83MHz 80dB → VR1調整 → LEDフル点灯
【MPX VCO調整】
・TP6 周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調) → VR8調整 → 76kHz
【PILOT CANCEL調整】
・83MHz(MAIN信号,1kHz,80dB)→ VR7調整 → 19kHz漏れ最小
・83MHz(MAIN信号,1kHz,80dB)→ L13調整 → 19kHz漏れ最小
※19kHz左右のレベル注意
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(SUB信号,1kHz,80dB)→ L14調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DET】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR2:DET調整 → 二次歪最小
【歪調整2 MONO2】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR3:MONO2調整 → 二次歪最小
【歪調整3 MONO3】
・83MHz(MONO信号,1kHz,80dB)→ VR5:MONO3調整 → 三次歪最小
【歪調整4 STEREO】
・83MHz(L/R信号,1kHz,80dB)→ VR4調整 → 二次歪最小
【歪調整5 STEREO】
・83MHz(SUB信号,1kHz,80dB)→ VR6調整 → 三次歪最小
【SEPARATION調整】
・83MHz(R信号,1kHz,80dB)→ VR 9調整 → 漏れ信号最小
・83MHz(L信号,1kHz,80dB)→ VR10調整 → 漏れ信号最小
【AM調整】
・TP2 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・ 522kHz → L18調整 → 実測 2.5V 確認のみ
・1629kH z→ TC7調整 → 実測20.3V 確認のみ
・LA1245-16pin DC電圧計セット(Sメーター電圧)
・ 729kHz NHK第一放送受信 → L17調整 → 電圧最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → TC6調整 → 電圧最大
・1053kHz CBCラジオ受信 → L19調整 → 電圧最大
■試聴----------------------------------------------------------------
・調整方法はKT-1100DやKT-2020とほぼ同じですね。
・同調点やトラッキング調整のズレがありましたが故障箇所は無かったです。
・セパレーション値が左右とも60dBオーバーで良好です。
・再調整によって良い性能を取り戻したと思います。